舞台は人類の活動範囲が太陽系を越えた未来。オリハルトと呼ばれる鉱石を利用して機械に精神を転送させたり、超光速航行技術が登場したりと、SFマインドを刺激する設定やストーリーが魅力の本作。
これをさらに楽しく、かつ分かりやすく、そして深掘りして見るためのポイントについて、海外SFの翻訳やアニメのSF考証などを手がける堺三保氏、アニメ評論家の藤津亮太氏、そして国内外のアニメーション業界に精通するジャーナリストの数土直志氏に最終話までいち早くご覧いただき、それぞれ専門家の視点からお話をしていただいた。
[取材・構成=日詰明嘉]
――皆さんは最初に『ID-0』という作品を観る時に、どんなところに注目をされましたか?
数土
僕はアニメビジネスが専門なので、Netflixで配信される作品であるというところに目が行きました。つまり海外、特にアメリカのSFファン市場を意識した作品になるのではないだろうかと。
堺
確かに、設定もお話もデザインも、アメリカのSFファンが好きそうな題材が詰まっていますよね。
藤津
Netflixが求めているジャンルは、サイファイ(SF)とアクションだと僕も聞いたことがあります。その意味でストライクな作品だなと思いました。僕自身が注目したのはやっぱり、谷口悟朗監督作品でしかも初の3DCG作品であるということ。谷口監督は何か新しいチャレンジをする時に、綿密かつ慎重に準備をされるので、この作品でそれをどうやっていったのかがとても気になりました。
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堺
キャラもメカも3DCGだし、レイアウト的にもすごく難しいことをやっていたりもしますよね。このあたり、さすがサンジゲンだなと。
藤津
やっぱり制作するうえでモデリングの物量をどうコントロールするのかが一番のポイントだと思うんです。だからどこに労力を割くのか、クオリティとコストのバランスは明確な企画ですよね。
数土
サンジゲンも単独元請けのTVシリーズ作品はこれで3作目。キャラクターづくりやアニメーションも最初から小慣れているなと。やっぱりどの方向から見てもカワイイというのはCGの良さだと思います。
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――アニメーションキャラクター原案は村田蓮爾さんで、村田さんのデザイン性の高い絵柄を破綻がなく綺麗に表現できるのは3DCGならではですね。
数土
村田さんは海外でもイラスト集が発売されているので、世界にもファンがいると聞いています。
藤津
海外ファンを見込んだうえで村田さんを起用したというのもあったんじゃないかな。あの絵だけで作品を手に取ってみようという人がいるであろうといったことも想像がつきます。それに村田さんはいわゆる“リアルマンガ絵”の代表選手のようなところもあるので、3DCGとも馴染みが良いし、アニメファンからも愛されている。
数土
いわゆる“萌え”な絵柄に振りすぎるとアジアはともかく、欧米にはやっぱり拒否感を覚える人がいる。それを踏まえて上手く落とし込んでいる印象です。