新作アニメ配信数No1を獲得、後発の動画配信サービス「DMM TV」がアニメに本気な理由とは | アニメ!アニメ!

新作アニメ配信数No1を獲得、後発の動画配信サービス「DMM TV」がアニメに本気な理由とは

昨年12月からスタートした動画配信サービス「DMM TV」は、アニメの配信に積極的だ。その理由をアニメ調達を取り仕切る山田昇氏に聞いた。

インタビュー
注目記事
DMM TV 山田昇氏
  • DMM TV 山田昇氏
  • DMM TV 山田昇氏
  • DMM TV 山田昇氏
  • DMM TV 山田昇氏

昨年12月からスタートした動画配信サービス「DMM TV」は、アニメの配信に積極的だ。2023年春のクールでは見放題作品数、さらに先行配信作品数No.1(※1)を記録。旧作も含め5400タイトル以上揃えており、サービス開始直後にこれだけの作品数を揃れる力の入れようだ。

このDMM TVのアニメ調達を取り仕切るのは、アニメ業界25年以上のキャリアを持つ山田昇氏だ。2021年にDMM.comに加わる以前は、アニメ専門チャンネル「株式会社エー・ティー・エックス」に所属し、『ぴちぴちピッチ』『しゅごキャラ』『ダイヤのAシリーズ』など、150を超えるアニメ作品に携わってきた。

なぜDMM TVはアニメを重視するのか、その狙いを山田氏に聞いた。

(※1)2023年3月31日から4月にかけて、国内にて提供されている定額制動画配信サービスにおける新期配信開始のアニメ作品が対象。国内定額動画配信サービス内で各社より先行して配信された作品を先行数としてカウント。

調査期間:2023年4月10日~4月30日
調査委託先:(株)コミュニケーション科学研究所
調査手法:デスクリサーチ

[取材・文:杉本穂高 撮影:吉野庫之介]

DMM TVは新作アニメは全て配信する

――DMM TVは2022年12月にサービス開始で、サブスク配信事業者としては後発になると思いますが、アニメに力を入れているのはどういう狙いなのでしょうか。

山田:おっしゃる通りでDMM TVは配信サービスとして最後発です。DMMはゲームや動画、電子書籍など様々なサービスを提供していますが、サブスクリプションサービスを始めるにあたり、各サービスと親和性が高いものは何かと言えば、やはりアニメだろうと考えたんです。

アニメは他の配信プラットフォームでも観られます。でも、ある配信サイトでは提供している作品が、別のサイトにはなかったりしますよね。ならば、全てのタイトルが1つのサービス内にあれば、アニメファンにとって非常に便利だろうと思ったんです。

色々なアニメを観るためにたくさんのサービスに加入せずとも、DMM TVさえあれば全て観られるというサービスを目指しています。ですので、基本的に毎クール新作は他社独占作品を除いて全て配信するようにしていますし、旧作もできるだけ多く揃えています。

――2023年春アニメ見放題作品数・先行配信数NO.1を獲得をしていますが、他社オリジナルの独占配信でない限り、全ての新作テレビアニメを毎クール配信するのが基本方針なんですね。

山田:そうです。

――それはすごいですが、作品の調達は大変ではないのですか。

山田:私はアニメ業界に携わるようになって25年以上になりますが、DMM TV立ち上げの時に各社を改めてご挨拶にまわり、協力を仰ぎました。みなさん協力的で、4月のクールでは独占配信2本、先行配信19本が実現しました。業界の仲間が応援してくれているというか、かなり期待されている証拠なのかなと思っています。

弊社ではいかにアニメファンに寄り添えるかに気を使っています。独占配信や先行配信についても海外のサイトであれば7年間独占とか長期的に独占することも結構ありますけれど、そうなると、他のサイトや地上波で見られることがないため、商品化の企画が動かないとか、そういうことも起こりえます。弊社はたとえ独占配信しても、1年ではなく半年でどうですかとか、3カ月ならどうでしょうかという形で作品にとってベストな方法は何かを窓口の会社とコミュニケーションを取らせてもらっています。

――独占配信はアニメファンにとってやや複雑な気持ちになるものですね。

山田:嫌がられますよね。私もアニメを作っているのでよくわかります。作り手も本当に魂削ってアニメを作っていますから、できるだけ多くの人に観てほしいと思っていますし、そういう気持ちを汲んだ上でDMM TVの事業と折り合いをどこでつければいいか、それは配信時期や金額にもよりますが、しっかりと製作側とコミュニケーションをとりながらアニメファンに寄り添ったDMM TVを目指しています。独占することが重要ではなく、より多くのタイトルがあり新作は全て揃っている、これがアニメファンにとって一番うれしいことだと思うんです。

――アニメの作品数だけならすでに見放題配信の中ではトップクラスですね。

山田:5000を超えて5400くらいのタイトル数になっています。これだけ膨大なデータを各メーカーさんが用意してくれたのもすごいことだと思っていますし、それを自社で全てシステム含めてまとめていくのを内製でやったDMMも凄いなと思います。それこそ、新しい会社を立ち上げたような規模感の事業です。

――新作アニメが全て揃っている上に、DMM TVはその情報も整理されています。うずらインフォの配信スケジュール一覧はとても便利ですね。

山田:ご存じだと思いますが、うずらインフォは個人の方が運営していたサイトです。それを公式でやるとなると全て許諾が必要なので、メチャクチャ大変なんです。全てのタイトルのメタデータをもらって間違いのないようにしないといけませんし、それにゼロから取り組んだのは、DMMのすごいところですね。

――公式に提供してみて、評判の方はいかがですか。

山田:まだ、DMM TVは始まって半年程度ですから、アニメファンの反応もこれからわかってくるかなという段階です。うずらインフォの提供も含めて、アニメファンに向けて、なぜDMM TVでアニメを観るのかという点をもっと打ち出していきたいと思っています。例えば、声優バラエティ番組などももっと充実させたいですね。

DMM TVだけじゃない、多彩な遊びを提供するDMMプレミアム

――声優バラエティやうずらインフォTVなどの番組も充実しているDMM TVですが、これはDMMプレミアムという大枠のサブスクリプションサービスの1つという位置づけですよね。他のDMMサービスとの連携も重要視しているのでしょうか。

山田:そうですね。ワンコンテンツ・マルチユースという考え方で、DMMの多彩なサービス内でどう広げていくかは重要です。ランディングページがあって、アニメをここで観られて、雑誌や単行本がここで買えるよとか、オンラインくじができたりとか、原作者のサイン入り色紙をプレゼントするような企画を立てたり、1つのコンテンツをみなさんでとことん楽しんでもらえるように考えながら運営しています。DMMプレミアムを通じて様々なサービスを回遊することで、好きな作品をとことん掘り下げられると、アニメファンにとっても楽しいんじゃないかと思っているんです。

――例えば、DMMには電子書籍もあるので、アニメの原作をDMMプラットフォーム内ですぐ購入できますね。

山田:そうですね。アニメを観てすぐに原作を買えるので、出版社さんにも喜んでいただけています。うちの電子書籍でも、4月期の『推しの子』は2期発表後かなり売れたようです。電子書籍の他、ゲームやオンラインクレーンゲームなどもありますから、マルチに遊べるようになっています。

――競合動画配信サイトは、映像だけの提供が多いですが、DMMでは色々な遊び方ができるということですね。

山田:それが1つのアドバンテージです。なので、1つひとつの作品について、しっかり各版元さんとコミュニケーションを取って、このクールはぜひこのタイトルをDMMで推してほしいとか、こういう試みはできないかとか、細かい取り組みができるのもDMM TVの強みです。

――DMMプレミアムは月額550円と配信事業者の中でも低価格の部類になりますが、競合他社のように動画配信事業だけでなく、総合的に利益を出せるかどうかが重要なわけですね。

山田:弊社COOでDMM TVの総合プロデューサーを務める村中はそう言っていまして、DMMプレミアムでみなさんにしっかり遊んでいただくための入口としてのDMM TVだという形でやっています。

アニメビジネスにとって海外は重要、でも基本は国内

――最後発のDMM TVに各社がとても協力的なのは、山田さんの経歴と人脈のお陰もあるでしょうが、アニメ業界にどんなことを期待されていると実感しますか。

山田:サービス開始前に各社を回ってご説明したことですが、DMM TVは国産最後の大きな動画配信サービスになるだろう、そしてアニメを中心に展開したいと伝えていました。各社とも、現在はアニメの稼ぎ頭が海外への販売と国内の配信事業者への販売になっていますから、国内に一つ有力なプラットフォームが増えることは、業界全体に歓迎されている実感がありました。

――配信によってアニメビジネスが大きく変化し、成長要因になっていると言われますが、海外プラットフォームへの依存度も高いです。海外事業者は必ずしも日本のアニメ業界の都合で動かない面もあるでしょうし、国内に信頼できるプラットフォームがあるのは重要なことなんでしょうね。

山田:おっしゃる通り、制作費買い切りで全ての権利を海外に委ねるのではなく、国内で人気が出て海外の方にも楽しんでもらうという、従来のアニメビジネスの基本に立ち返るべきだと思っています。

もちろん、世界中の方にもアニメを楽しんでほしい。今年のアヌシー国際アニメーション映画祭にはDMMとP.A. WORKSで共同製作した映画『駒田蒸留所へようこそ』を正式出品していますし、世界中のファンを意識していないわけではありません。でも、国内で僕たちがしっかり楽しめるものを作って、それを海外のアニメファンに届けるという基本理念を忘れたくないなと思うんです。

アニメ作品は、制作費が昔と比べて3倍くらいになっていますのでマネタイズは大変ですが、その手段の初手は国内にあった方がいいと思いますし、もっと制作会社がイニチアシブをとって作品を作れるようになる環境ができてほしい。その手段の1つとしてDMM TVがあり、その中にアニメファンのコミュニティができれば、すごく素敵なことだと思っているんです。

《杉本穂高》
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集