フジテレビとbilibiliによる放送枠「B8station」で放送中のアニメ『RINGING FATE』。心に強い執着を持つ人が迷い込む、生と死の間の世界「崆(くう)」の世界では、運命のリングで勝ち続けると生き返るチャンスが与えられる。しかし、負ければ記憶を失うという過酷な世界だ。そんな世界に迷い込んだ無邪気な少女・要(花澤香菜)は、偶然出会った最凶のヘルメット・サブロー(梅原裕一郎)とともに戦いに挑む。
本作を監督したのは、『時光代理人 -LINK CLICK-』『天官賜福』やコミックス・ウェーブ・フィルムと制作した『詩季織々』などを監督してきたリ・ハオリン氏。これまで手描きアニメを主体にしてきたハオリン監督が、今回は3DCG作品に挑んでいる。CG作品に挑戦した動機や本作の物語の発想について話を聞いた。

[取材・文=杉本穂高]
■CG作品にチャレンジ―― その理由は?

――ハオリン監督はこれまで手描きアニメの監督をされていましたが、なぜ今回の作品では3DCGに挑まれたのですか。
ハオリン:大きく3つの理由があります。1つ目は、中国の3DCG技術が目覚ましい発展を遂げていることです。特にゲーム業界でのCG技術の進歩が凄くて、それらを活かしてアニメを作ってみたかったのです。2つ目は、今回の作品はロボット同士のバトルが多くなるからです。金属の質感などのクオリティを全編に渡って維持するのであればCGのほうがいいと考えました。そして、3つ目ですが、ヒロインの要をはじめとするキャラクターたちのかわいらしさを表現するためです。全体的に丸みを帯びたフォルムのキャラクターが多いので、CGのほうが表現しやすいと考えました。
――なるほど、ロボットについては日本アニメもCGで表現することが多い領域です。演出的な面でCGはどのように活用しようと考えましたか。
ハオリン:やはりカメラワークの設計はCGでこだわった部分です。バトルシーンが多いので、これらのシーンをカッコよく演出するという点でCGに優位性があったと思います。通常の手描きアニメですと、作り手の空間を認識する高い能力が求められるので、非常に難しいので、今回はCGを選んでよかったと思います。そして、金属同士のぶつかり合いの迫力を出すには、やはり金属の質感がリアルでなければいけませんから、この点でもCGを用いたかいがありました。丸みを帯びた柔らかいキャラクターと硬い金属のロボット、このギャップを出すために、CGは効果的でしたね。

――中国のCG技術の発展がすごいという話でしたが、今大ヒットしている『ナタ2』もCGアニメーションですし、中国アニメーションではCGのほうが主流ですね。今後、ハオリン監督は手描きとCG、どちらに重点を置いて創作活動をするか決めているのでしょうか?
ハオリン:手描きは人の手で生み出すものですから、人情味を感じさせ、感情を表現しやすいという点に優位性があります。繰り返しになりますがCGは、質感を表現し、映像全体のクオリティを維持しやすいです。どちらにも別々の魅力があるものなので、作品ごとにどちらの技術でいくのか、見極めることが大切だと思っています。AIなどの新しい技術も出てきていますし、語りたい内容によって、使い分けていくのがいいと思っています。
――CGアニメーションの本作ですが、キャラクターたちの前世の回想シーンでは実写映像を用いていますね。この意図はどういったものでしょうか。
ハオリン:実写を取り入れたのは、物語の舞台となる世界と生前の世界をはっきりと区別するためです。企画当初は、生前のシーンもCGで作ろうと考えていましたが、生前は現実の世界なのだから、リアルを求めるなら実写が一番いいと発想を変えました。ただ、実写映像をそのままアニメーション作品に入れると、奇妙な感じになってしまうと思ったので、違和感が大きくなりすぎないように画面を加工して表現することにしました。
■かわいいキャラクターとハードなストーリーのギャップ

――独創的な作品世界を作り上げていますが、物語のコンセプトはどのように思いついたのですか。
ハオリン:発想の初期段階で、かわいいキャラクターとハードなロボットを出してどういう物語が生み出せるかを考えていました。この世界のキャラクターたちがどういう理由でロボットに乗り込んで戦うのかという点を考えて、やっぱり人間にとっての最大の危機は、生きるか死ぬかだろうと思いました。
ただ、今回キャラクターたちが戦う理由は相手を死なせるためじゃなくて、自分を生き返らせるための戦いに設定しました。そこから、見た目のかわいいキャラクターたちが、残酷な環境の中で戦う自分の記憶をかけて戦うというコンセプトを考えました。
――おっしゃる通り、この作品の最大の特徴は、かわいいキャラクターが残酷な物語を展開していくギャップにあると思います。物語と絵柄のバランス感覚については、かなり気を使っているのではないでしょうか。
ハオリン:そうですね。かわいい外見のキャラクターにしようと考えたのは、人間には誰しも表と裏があるもので、例えば見た目が悪そうな男性でも、魂は違う形をしているかもしれないというのが面白いと思ったんです。
この作品は魂の世界の話なので、生前の外見とは異なり、男性であってもかわいい動物姿になっていたりするというアイディアがそこから出てきました。死後の世界というのは魂の形が表面化するわけです。人間には外見と内面のギャップがあるもので、かわいいキャラクターが記憶と存在をかけて戦うというストーリーとそのことがテーマとしてつながると思いました。

――本作は、生き返るために戦うけれども、負けると「乾(かん)」を失い記憶が減っていくので、何のために生き返りたいのかを思い出せなくなっていく、それでも登場人物たちが何かに突き動かされて戦うのが感動的です。
ハオリン:記憶を探すことが自分にとって一番大事な部分ですが、その記憶をなくしてもなお生きようとするのは、生物としての本能みたいなものが関わっていると思います。だから、登場人物たちは皆、本能によって運命のリングに上がり、自分がなぜ生きようとするのか、その理由を探すんです。
――本作の登場人物は皆、何らかの生前の後悔を抱えています。監督の作品は、過去作『時光代理人 -LINK CLICK-』などで過去に未練を抱えた人間たちを描いていました。そういう作品がお好きなのでしょうか。
ハオリン:そうした物語が好きというのはあると思いますが、『時光代理人』や『RINGING FATE』のような人間の深い部分を描く作品を作ることもあれば、もっと日常的な楽しいものを描く作品も作ってきました。
基本的には、視聴者に楽しんでもらえる作品を作りたいと思っていますが、自分自身の感情や本当に表現したいものを表現する場合もありますね。今回の作品は、私自身の表現したいものを、心を込めて表現しているものと言えると思います。それで見てくれた方の心も動かせるものになっていればうれしいですね。
――最終話の放送も近づいてきましたが、日本のファンに向けてメッセージをお願いします。
ハオリン:本作は、新しい技術でこの新しい物語を日本の方に届けることができてうれしいです。今後もどんどん新しいチャレンジをしていくつもりですので、『RINGING FATE』も、これから作る作品も応援していただけると幸いです。

B8station TVアニメ『RINGING FATE』
<放送日時>
2025年1月8日スタート 毎週水曜 25時25分~25時55分 ※関東ローカル
◇見放題配信
[2025 年1月9日(木) 12 時 00 分~順次配信開始]
ABEMA プ レ ミアム /DMM TV/d アニメストア /d アニメストア for Prime Video/d アニメストア ニコニコ支店/FOD/Hulu/Lemino/U-NEXT/アニメ放題/バンダイチャンネル
[2025 年1月 10 日(金) 0時 00 分]
J:COM STREAM/milplus/TELASA/TELASA(Ponta パス)
<キャスト>
要:花澤香菜
サブロー:梅原裕一郎
エデン:大塚剛央
ティム:狩野 翔
大熊:最上嗣生
<スタッフ>
原作・監督:Haolin(リ・ハオリン)
キャラクターデザイン:HAKURO
音楽:林ゆうき、古橋勇紀、高木亮志
アニメーション制作: MOJO、元気蛙
アニメーション製作: bilibili
日本語吹き替え版演出:前田 茜
翻訳:鳥居怜子
録音・調整:鈴木修二、杉江帆南
音響制作:東北新社
日本語吹き替え版製作:フジテレビジョン、bilibili
<主題歌>
OP:ICEx 『理想郷』
ED:CENT(セントチヒロ・チッチ) 『百日草』
(C)bilibili/BeDream