声優への道は大変だったと、大空さんはこれまでを振り返る。大空さんの所属する青二プロダクションには300人以上もの声優が在籍し、同期だけでも30人いる。このような状況では、「アニメのオーディションに出るには社内オーディションに合格してからでないと出られない」と社内ですら、厳しい競争環境である現実を赤裸々に語った。声優として一番最初にしなければならなかったことは、週五日間、事務所に顔をだして、声と名前を覚えてもらうことからのスタートだ。自分のボイスサンプルをつくり、マネージャーに自分自身を売り込むことからはじめなければならなかったと言う。「声優をやってきて最もつらかったことは?」との質問には「お仕事が無い頃」と躊躇なく応えた。なかなか仕事がこず、バイトばっかりしていた時代は本当に大変だったとのこと。ごはんが食べられない時期もけっこうあり、パンの耳に焼き肉のたれをつけて食べていたときもあるそう。奇しくもそんな状況がTV番組「ボンビーガール」で紹介されたとき、缶詰をファンが送ってきてくれてすごく嬉しかったと当時の心境を語った。「日持ちするものはすごく助かりましたね!」と大空さんは茶目っ気たっぷりに語った。逆に「最も嬉しかったときは?」との質問には、「やっぱりお仕事をしているときが一番楽しいです」とこれも即答。いなりも含め、「この子の幸せって何かな?」と考えるところからはじめ、役作りをしたり、演技をしている瞬間、そしてなによりオンエアされたときが一番嬉しいと自身の心境を明かした。「いなり、こんこん、恋いろは。」でクレジットが流れてきた際、大空さんの父親が「直美、一番うえじゃないかっ!この人とこの人の上に、直美の名前があるのはなんか変な感じがするね!」と言って来たとカミングアウトしたところで会場は爆笑。「でも、(クレジットは)そういうことじゃないし…」と困惑したことも明かし、会場の笑いを更に誘っていた。また、「立命館大学映像学部で学んだことは」との質問に対しては、「この学部はけっこう希望することをなんでも挑戦させてくれる学部」という印象を紹介しつつ、大空さんの場合は卒業論文として「それいけアンパンマンを海外展開した場合、受けるかどうか?」について「プロデューサー視点から」研究したことを明かした。留学生に対してインタビューやアンケート調査をした結果、「自分の身を削って、特に自分の顔を誰かに食べさせる」というコンセプトが、欧米のひとには分かり難い傾向にあることを確認したという。また、「そもそもアンパンがない!」という根本的な部分も海外進出の弊害になるとのこと。この他に音響制作について学んだこともいまでも活かされていると大空さん。アニメーションにつける効果音を自分で実際につくるという授業を受けたとのこと。大空さんは「娘から分かれて離れていくというさびしそうな足音」を実際に成人男性の靴をつかって、ジャリジャリと音をつくったものの、どうやったら寂しそうな音を出せるのかで試行錯誤したという。また、CG制作を通して、アニメ制作スタッフの気持ちを理解しようとしたとも。
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