■ 40人の中から射止めた伏見いなり役一方、大空さんからは、自身が「伏見いなり」役を射止めた経緯が語られた。同役はオーディションがおこなわれたのだが、大空さんの出番は40人中、39番目。オーディション時は、「何か面白いことを言ってくれ」といわれ四苦八苦しながら原宿でのエピソードを披露し、その場をしのいだという。このようにオーディションは、たわいもない会話なども普通におこなわれるとのこと。これはオーディションで緊張している声優の心を和らげるための配慮であるという。選ぶ側にとっても、オーディションは激務と五味プロデューサーは明かした。通常オーディションは1時間で6人、それを5-6時間、日数で3日間ぶっつづけで行われるという。このようにやっていると、前半にやったオーディションは思い出せないほど疲れてしまう。だからといって後半が有利というわけではない。後半は後半で、スタッフの疲労がピークに達してしまうからだ。ただ、最終的には直感で決定される場合も多いと五味プロデューサー。『いなり、こんこん、恋いろは。』の場合、配役はスタッフ間の合意でおこなわれたが、いなりの場合は、大空さんのオーディションが終わった瞬間、「いいね!いなりはもうこれで決まり!」と言ったスタッフがいた程だったとのこと。大空さんも台本を読んだときから、いなりが他人のように思えなかったと当時の役に対する思いを述懐する。「一見するとドジっ子にしか見えなくても、いなりは、すごく物事を考えてから行動する子。そして自分のためにではなく常に誰かのために行動をしている。もうまるで自分の妹、または家族のような視点でいなりを見ていました。」と目を輝かせた。一方、京都にいたこともいなりの役作りで役にたったとのこと、4年間京都に通いつづけ、いきつけの喫茶店「わからん」では牛筋うどんを毎日食べたという。また、パワースポット巡りもしていたことから、いなりの気持ちも共感できるようになったと在学時代の経験を語った。なお、アニメ業界全般についても、様々な事が語られた。まず、五味プロデューサーはアニメ業界に28歳で制作進行として入り、そこから角川グループへ。以降、様々な部署を巡りながら、現職に行き着いたという。なので、作っている現場を知らずにプロデュースすべきではないというのが自身のポリシーであるという。ただし、制作現場スタッフだけを守ってしまい、作品の宣伝や販促をおろそかにしてしまっても成功は出来ないことから、バランスは重要であるとのこと。特にクリエイター同士の化学変化を見るのがプロデュースの仕事だと持論を展開した。「いなり、こんこん、恋いろは。」については、絵コンテや、演出経験は豊富にあるが、監督としてはそれほどキャリアのない高橋氏を起用した理由に、若いながらも感度の高い脚本の関根アユミさんを当てたかったからだと説明。「監督暦が長すぎる人を当ててしまうと、関根さんが思い切った仕事が出来ない」と五味プロデューサーは分析する。ベテランが若い感性を支えるというチーム構成が「いなり、こんこん、恋いろは。」の制作現場というわけだ。
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