■色やにおいを感じさせる作品世界を信じて――文化庁メディア芸術祭は例年、「アニメーション部門」以外にも、「アート部門」「マンガ部門」、そしてゲームやWeb、アプリケーションなどデジタルメディアまで含む「エンターテインメント部門」と、多彩なメディアを対象としています。アニメーション以外で気になる部門はありますか?山田アート部門が気になりますね。毎年真っ先にチェックしています。――山田監督の近年の作品は、伝統的なアニメーションの魅力だけでなく、メディア越境的な映像感覚、たとえば実写的なレンズ感、さらに言えば擬似的なレンズ風のデジタルイメージが、特徴的な作風の一つとして挙げられると思います。そうしたこだわりはどういったところから生まれたものなのでしょうか?山田もともとカメラや実写の映像作品が好きだということがあるのかもしれません。でも、かといってアニメーション作品のなかに実写を取り込んだりするようなことではなくて……というのも、実在するものとしないものとのあいだには、とても繊細な線引きが必要だと思っていて、カメラのシミュレーションも、ちゃんとアニメーションの世界を成立させたうえでやりたいんですね。だから「アニメの世界のなかで実写になりきる」感覚というか。そのバランスが少しでもどちらかにはみ出てしまうと、途端に箱庭的な世界になってしまうし、逆にうまくいくと、作品世界が色やにおいを持って無限に広がっていくように感じられる……のではないかなと信じてやっています。――2017年9月16日(土)から28日(木)まで開催されている、文化庁メディア芸術祭受賞作品展では、アニメーションファンだけでなく、多様な関心を持つ方々が本作に触れることになると思います。さきほどうかがった“音”への特別なこだわりも関連すると思いますが、『映画『聲の形』』を「アニメーション作品」ではなくあえて「メディア芸術」というより広い枠組みでとらえたとき、どのように観てもらいたいですか?山田まずこの作品は「一人の少年が生きるための練習をしていく」物語を描いた映像作品ですけど、別の軸として、さきほどの「音の映画」以外にさらにもう一つ、「人の潜在的な記憶や感覚を追体験する作品」という側面も考えながら組み立てていて。なのでお話の内容や意味を楽しむだけでなく、観てくださる方それぞれが、フィルムから立ち上がってくる何か、つかみきれないような何かを、個人的な映像体験として受け取っていただけたらとてもうれしいですね。――ありがとうございました。最後に読者の方へのメッセージをお願いします。山田『映画『聲の形』』は、重苦しいテーマの作品のように思われる方もいるかもしれませんけど、たぶん怖くないので、安心して、ぜひこの機会に一度観てみていただけたらうれしいです。
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