「コンクリート・レボルティオ~超人幻想~」 新旧超人対談企画第5回 シナリオライター編 辻 真先×會川昇 3ページ目 | アニメ!アニメ!

「コンクリート・レボルティオ~超人幻想~」 新旧超人対談企画第5回 シナリオライター編 辻 真先×會川昇

『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~』第9話の脚本を務めた辻真先氏と本作の脚本・原作の會川昇氏の対談を届ける。新旧超人対談企画第5回。

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■ 「永遠」という言葉の重み、SFが魅せる衝撃の感覚

――それでこの第9話は、どんな発想から物語をつくっていかれたのでしょうか。

辻 
何をもって超人とするか、実はまだよく分かってなかったもので。手がかりになったのは「永遠」という言葉です。戦争中、僕たちは「東洋永遠の平和のために」なんて上からさんざん言われ、大勢が死にました。ところが戦争が終わってみると、まるで「永遠」ではなかった。どんな宗教でも「永遠」という言葉をよく使うものですが、それって何だろうと。「地球45億年を1年のカレンダーにたとえると、キリストが生まれるのは12月31日の除夜の鐘のあたり」などとも言われていますし、その程度の人間が「永遠」を語るのは、おかしい。逆にもし「永遠」という時間を生きる存在があるならば、絶対に超人なわけですよ(笑)。ただ、「永遠に生き続ける」という命題は、會川さんの方から出たものでしたね。

會川 
そうです。この作品には昭和の時代、テレビやマンガの中にいたヒーローたちを参考にするコンセプトがあります。せっかく先生に書いていただけるなら、実際に手がけられた作品から何かできませんかと。すると「言っていただければ何でも」というありがたいお返事をいただいたので、「大変恐縮ですが、ものすごく長く続いているアニメ、あの人たちが、もし本当に歳をとらないという設定だと、どうですかね?」と振ったら、「それって面白いですね」と……。

abesan――それで、あの一家が選ばれたと(笑)。

會川 
歳をとらない一家はいっぱいいますから、あえてどれとは言いませんが(笑)。
ただ、僕や他のライターさんならともかく、辻先生に書いていただくことに、大きな意味があると思ったんです。もうひとつお願いしたのは、「SFにしてほしい」と。辻さんはSF好きとしても知られています。でも脚本家としては『ガンダム』以降のSFアニメに、あまり参加されていない。ぜひこの機会に今の深夜枠、目の超えたお客さんに対し、先生のSFマインドを思う存分発揮していただけないかと。サブタイトルにも反映された小松(左京)さんを筆頭に、辻先生が60年代当時交流のあったSF作家たち、あの日本SF黎明期の空気をしっかりとふまえた脚本になりました。社会と向き合い時代の空気を描くために、SFが機能していた時期。その空気を入れていただけたので、パロディではなくきちんと成立しているなと。そこは期待以上です。

辻 
もちろんパロディにしたら、一生懸命やってきた自分を鼻で笑うことになりますから、そうはしたくない。でも、「人類が滅びても続く生命」ということならば、これはものすごい超人になるなと。とは言え、僕の方ではそれほどSFは意識していなかったです。

會川 
そうはおっしゃいますが、脚本いただいたとき、自分ではこうは書けないなと。中学の理科教師が生命の誕生を説明する。当時主流だったコアセルベート説ですね。不死の超人である子どもは苦笑して否定する。それは「その前から生きているぞ」という自負なわけですが、まさに相対的な視点をもつSFのセンス・オブ・ワンダーでガッとつかんでくるんです。ラストでも当時あったいろんなSF小説や漫画で、生命の本質を問う場面のイメージさえ視野に入れられた気がします。

辻 
科学で進歩したメカが出てくるからSF、ということではないんですよね。10年か20年経つと、みんな古くなってしまう。テレビも最初は箱でしたが板になりましたし、みなさんが使っている携帯的な通信機器も、あと10年経てばみんな古く見えますよ。そういう点では40年経っても大丈夫、時代の変化にあえて合わせないように気をつけながら、永遠に見られるようにつくったアニメもあるということなんです。


■ 違う要素をぶつけ合って起きる化学反応

――最後にあらためて辻さんに、参加されたご感想をうかがえますか?

辻 
とにかく面白かったです。ボンズで打ち合わせたとき、美術設定や色彩設定など少しずつできてくる絵を見せていただいて、すごく感心したんです。文字だけのころは「神化」というのがピンとこなくて。都電なども出てくるから、自分の古い記憶でモノクロかセピアみたいな色合いだったんです。それが鮮烈なカラーで動いたものですから、ビックリしました(笑)。
刺激強すぎないかと少し心配しましたが、オンエアされたらちょうど良い具合に収まる。「なるほど、こっちに揺れて逆に揺れて、ここに収まるのか」と。原作のないつくり方は久しぶりなものですから、いち視聴者としての感覚もあって非常に面白かったです。

會川 
ありがとうございます。水島監督とのリレーションシップが大きいですね。僕の脚本に対してほとんど何も言わない。代わりに「普通、こう映像化するよね」という予想を超えることをぶつけてくる。それによって化学反応を起こす。今回も、カラフルなビジュアルや音楽で脚本をどう解体し、どんな刺激をぶつけていくか、そんな感じで戦ってくれています。

辻 
それが演出、監督なんでしょうね。我々の世代にはできないことです。本当に大勢が寄ってたかっていろんな積み木を楽しんでいる。しばらくひとりでやる小説ばかりでしたから、その様子がとにかく面白かったです。

abesanTVアニメ「コンクリート・レボルティオ~超人幻想~」公式サイト
http://concreterevolutio.com/
《animeanime》
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