前作から実に8年ぶりの新シリーズとなる「宵伽」では、大森貴弘監督をはじめファンにはお馴染みのスタッフ陣が再結集。あいの前に現れた謎の少女・ミチルの秘められた過去を軸に新たな物語を描き出した。
新規エピソード全6話に加え、回顧録セレクション6選の放送終了を迎えたいま、メインスタッフより原案・わたなべひろし氏と阿部愛シリーズプロデューサーにインタビューを敢行。オンエア終了後の今だからこそ語れる制作秘話を語っていただいた。
[取材・構成=山田幸彦]
■気づけば歴史ある作品に
――第3期『地獄少女 三鼎』から8年の時を経ての第4期『地獄少女 宵伽』ということで、まずは立ち上がりの経緯から教えてください。
阿部愛(以下、阿部)
「三鼎」から「宵伽」まで8年間あきましたが、第3期終了後も遊技機用の映像制作などでプロジェクト自体の作業は続いていたんです。第1期から第3期まで全78話もの怨みの物語を作った時点で、「TVシリーズはもういいかな?」という雰囲気もあったのですが、放送終了後にテレビとは違う形で作品を作り続けるなか、「また新作が観たいね」という話が自然と持ち上がり、今回第4期となる「宵伽」をつくるに至りました。
「宵伽」は、新作6話に加え、前シリーズからの回顧録6話で構成していますが、回顧録のほうは、本作ではじめて『地獄少女』を観た人が、シリーズ全体が持つ“幅感”を楽しんでもらえるようラインナップしました。

――回顧録では、旧作映像を放映するだけでなく、切り絵を使った劇メーションが取り入れられていました。
阿部
もともと劇メーションは「三鼎」の映像特典を作る際に使用していたのですが、そのときは予算もそれほどなくて、実は会議室で撮っていたんです。幸い、そのチープさから出る味が逆に『地獄少女』的で面白かった、というご意見が多くて。その流れで、回顧録で旧作を流すだけでは座りが悪いからということで、今回劇メーションを挿入することにしました。絵コンテはわたなべさんが描いてくれました。

わたなべひろし(以下、わたなべ)
僕はもともと、楳図かずおさん原作のアニメ『妖怪伝 猫目小僧』(1976年)が大好きで、前からあれを作りたいという思いがあって。平面の素材で構成されているけど、うまくセットを組んでいて立体感と奥行き感がとても魅力的な作品なんです。今回それを意識して劇メーションという形でつくろうと。ただ制作現場に負荷がかかってしまわないよう、絵コンテではかなり工夫をしています。
――わたなべさんは第1期から原案として、作品の主軸を担われていますが、第4期が決まった際はいかがでしたか?
わたなべ
企画が決まった時は素直に「新作が出来るなんて嬉しいな」と思いました。完成した映像を観ると、懐かしさプラス、どの時代でも通ずる普遍性を感じて。自分で言うのもなんですが、改めてすごい作品だという驚きがありました(笑)。
阿部
そうですね。いま流行りのアニメ作品と比べると、良い意味で浮いていて、それは第1期放送当時もいまも変わらずですね(笑)。エンタメではあるけれど、お話の内容もドラマ感強めで暗いですし、視聴者の皆さんのなかには「よくこんなものを見せるなぁ」という気持ちを抱かれた方も多いと思うんです。そんなところにも変わらぬ『地獄少女』らしさがありました。
なので時の流れはあまり感じなかったのですが、ミチル役の和多田美咲さんから「小学生のころに観てました!」と言われたときはちょっとしみじみしましたね(笑)。

わたなべ
そうですね。この前打ち上げがありまして、そこで声優の方々が「このような歴史ある作品に出演できて光栄です」とおっしゃるんです。もう参っちゃって(笑)。でも、振り返れば僕も人生の三分の一は『地獄少女』に関わっているわけで、いつの間にか「歴史ある」なんて言われるシリーズになっていたんだなあ、と感慨深くなりました。