「声優志望者は専門学校にも養成所にも行くな!」音響監督・長崎行男と福原慶匡Pが明かす、声優業界のいま【インタビュー】 | アニメ!アニメ!

「声優志望者は専門学校にも養成所にも行くな!」音響監督・長崎行男と福原慶匡Pが明かす、声優業界のいま【インタビュー】

アニメ産業の広がりとともに、歌、ダンス、タレント活動など多くの場面で活躍するようになった「声優」。音響監督・長崎行男氏とアニメプロデューサー・福原慶匡氏に若手声優志望者と声優学校業界にまつわる赤裸々なお話を聞いた。

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アニメ産業の広がりとともに、歌、ダンス、タレント活動など多くの場面で活躍するようになった 「声優」

多くの若者がその仕事に憧れる中、音響監督・長崎行男氏は「声優志望者は専門学校にも養成所にも行くな!」という。

長崎所長は『ラブライブ!サンシャイン!!』や『キラッとプリ☆チャン』、『KING OF PRISM -Shiny Seven Stars-』など、歌やダンスを主軸に扱う作品を手がける音響監督の第一人者だ。
加えて声優・俳優養成機関「ヤオヨロズボイスラボ」の所長として人材育成にも尽力している。

そのヤオヨロズボイスラボの経営母体であるS-TAR7(エスターセブン)の代表取締役社長を務めるのが、『ケムリクサ』『けものフレンズ』などのヒット作を生み出し続けるアニメプロデューサー・福原慶匡氏だ。

今回はこのおふたりに、教える立場でありながらなぜ「声優志望は学校に行くな!」と言うのか、その過激な発言の真意を聞いた。若手声優志望者と声優学校業界にまつわる赤裸々で実直なお話をお楽しみいただきたい。
[取材・構成=いしじまえいわ]

■最も大切なのは「セルフプロデュース能力」


――今回は「声優志望は学校に行くな!」発言の真意についてお伺いしたいと思います。初めに、若手声優の現状について教えてください。今、現場では一体どんな事が起きているのでしょう?

長崎所長:主役クラスのキャラクターを演じる声優はオーディションで選ばれることが多いのですが、役をお願いしたいと思える実力のある声優は一握りです。その結果、オーディションをしても結局同じ声優さんが勝ち残り、似たような配役でいくつも作品を作る、という状況になっています。

――お願いするなら実力のある方にお願いしたいのは分かります。若手声優がオーディションに参加するチャンスはないのですか?

長崎所長:監督や音響監督が希望する指名候補の他に、各プロダクション側が推薦する声優も1、2名テープ・オーディションに参加できます。新人の方はそこで選ばれれば、スタジオ・オーディションに進める可能性があります。
こうして、数多くのプロダクションから複数の候補者を出していただきますので、1つの役に対して100人から150人分のオーディション・テープが集まり、その中から実際にスタジオに呼ぶ人を絞り込みます。

ですが、スタジオにこちらが指名した候補者以外の新人声優が呼ばれることはごく僅かです。全くいないことはないのですが、数は非常に少ない。
最終的には結局こちらが指名した人ばかりが残り、同じような顔ぶれで作品を作ることになってしまう……これが現状です。


長崎行男氏
――多くの場合、新人声優さんはオーディション会場にさえ行けないのですね。そんなに実力差があるのですか?

長崎所長:オーディション・テープや写真は送る前に何度もとり直しができますよね。事務所の方々も当然、新人を選んでほしくて渾身の一本、奇跡の一枚を送ってきます。
ですが、その方がスタジオでテープと同じ演技ができるかというとそうでないことの方が多いわけです。

また、作品への理解度もかなり違うように感じます。「これはどういった作品で何がテーマなのか」「このキャラクターはどんな思いでこの台詞を発しているのか」といったことに対する考察が足りていないんです。

――そういった理解の程度の差が、オーディションでは如実に現れるものなのですか。

長崎所長:現れますね。オリジナル作品だと確かにヒントが少ないですが、原作ものであれば原作を読んでくればある程度は分かるはずですよね。それを読んでいないのか理解できていないのか……

――「本当に作品を読んできたの?」というレベルの演技に出くわすこともあるんですか?

長崎所長:ありますよ。

福原作品理解や、自分をオーディションの場でどう理解してもらうかも含めて、コミュニケーション能力の差なんじゃないでしょうか?


左から福原慶匡氏、長崎行男氏

長崎所長:そうですね……自分をどう演出するかという意味では、セルフプロデュース能力と言ったほうがいいかもしれません。これが声優に一番大切なことだと僕は思います。

――いきなり核心に触れましたね。

長崎所長:みんな福原さんになればいいんですよ。少なくとも、福原さんの本は読むべきだと思います。

【関連記事】ヤオヨロズ・福原P著書「アニメプロデューサーになろう!」第3章まで無料公開中

――プロデューサーである福原さんは「声優にはセルフプロデュース能力が必要」というこの意見、どう思われますか?

福原:思い当たるところがありますね。
声優さんの収録風景をガラス越しに見ていて、(ガラスの)こっち側の人はみんなその人の演技の何がマズいのか分かっているのに、本人はそれに気づけていなくて同じ間違いを何度もしてしまう、ということがあります。
客観視できていないということなんですが、それはセルフプロデュースできていないのと同義だと思います。

■声優は「適正のある人にしかなれない専門職」


福原:演技を失敗するにしても、大きく2パターンに分けられます。野球に例えるなら、サインを見ていないというパターンと、サインは分かってるしキャッチャーミットも見えているけど、技術的にサイン通りに投げられない、届かないというパターンです。
後者の場合も稀にありますが、新人声優の多くは前者ですね。


福原慶匡氏――後者であれば然るべき練習によって改善できるかもしれませんが……ということですね。

長崎所長:サッカー選手の方が向いているのに野球選手を目指しちゃってる、というケースもありますね。

――その場合ですと、いくらサインを理解していても適性や能力の問題で、サイン通りの球をいつまで経っても投げられない、ということですね。では適性がない人はどうすれば……

長崎所長:声優を目指さず他の道を探すことです。もっと有り体に言うと、自分の声に自信がある人しか声優を目指しちゃダメなんです。

自分の顔やスタイルに自信があるからモデルになりたい、ということと同じですよね。声に特徴があるとか、自信があるとか、どれだけ喋っても喉が枯れないとか、滑舌や発声がいいとか、単に声が大きいでもいいんですが、とにかく自分の声という分野で自信がある人が目指すべき職業です。
「自分はルックスに自信がないので、役者はダメだけど声優なら、と思って」という人もたまにいますが、その分声に自信があるならいいんです。ないならダメです。

福原: さらに今は歌って踊れてバンドもできて……と求められるものはどんどん増えていますから、大変ですね。

長崎所長:声優とは然るべき適性のある人にしかできない専門的な仕事なんだ、という認識がない方が多いように感じます。声の演技なんて誰にでもできると考えているんでしょう。

――若手の演技から実際そういうことを感じられるんですか?

長崎所長:感じますよ! 現場では声が小さいだけでNGなのに、それでも声優になりたいって言うんですから。「もっと大きな声を出せ!」と言っても出ない。本来その時点でアウトです。

福原: 声優以外の仕事に置き換えれば、僕が今からメンズノンノのモデルを目指すって言っているようなもんですよね。
それなら「それは流石に……」「ガッツだけじゃ無理だぜ……」ってなりそうなもんですが、それが声優だとそのまま目指してしまう。どういうことなんですかね? 仕事として低く見られているんでしょうか?

長崎所長:甘く見られてるんですよ。


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《いしじまえいわ》
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