「BIOHAZARD THE STAGE」迫りくるゾンビ、ゲーム感いっぱいのヒューマンドラマ | アニメ!アニメ!

「BIOHAZARD THE STAGE」迫りくるゾンビ、ゲーム感いっぱいのヒューマンドラマ

高浩美の アニメ×ステージ&ミュージカル談義 ■ キャラクター再現度の高いビジュアルが話題を呼んだ、世界初の舞台化

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高浩美の アニメ×ステージ&ミュージカル談義
連載第148回

■ キャラクター再現度の高いビジュアルが話題を呼んだ、世界初の舞台化

舞台化発表、そしてキャスト発表と大きな話題を呼んだ『BIOHAZARD THE STAGE』。原作は1996年にカプコンより発売されたホラーアクションアドベンチャーゲームで全世界売り上げは6500万本を超える。2002年にハリウッドで映画化され現在6作品目が撮影中、『バイオハザードVI:ザ・ファイナル・チャプター(仮題)』、公開は2017年1月の予定だ。さらに新たな長編CG映画が製作されることが決定、日本の映像界を代表するスタッフが結集、リブート版として描くそうだ。
こういったメディアミックスされたものも人気を博している『BIOHAZARD』、その初の舞台化をヨリコ・ジュンが手掛ける。

配役は謎の青年・タイラー・ハワードに矢崎広、ゲームでおなじみのキャラクターのピアーズ・ニヴァンス栗山航、クリス・レッドフィールドに中村誠治郎、事件に巻き込まれるIQ230の驚異のヒロイン、メアリー・グレイに倉持明日香、ゲーム『BIOHAZARD 0』に登場するレベッカ・チェンバースに飛鳥凛、ソフィー・ホームにRaychell、オリヴィア・プライスに紗綾、マシュー・ラッセルに大倉士門と植野堀誠(Wキャスト)、バリントン・マイヤーに丘山晴巳、ルーカス・バトラーに木村敦、リアン・ハワードに岸祐二、ポッシュ・ブラウンに梅垣義明、フィロソフィー・ユニバーシティの学長のエズラ・セネットに千葉真一、先頃、キャラクタービジュアルも発表されたが、そのクオリティの高さも話題になった。まさに”気合い”が入った作品であろう。
物語はゲーム同様のストーリー背景。オーストラリア西部の大学で突然バイオテロ事件が発生する。バイオテロ部隊BSAAのピアーズとクリス、その大学で教鞭をとる元S.T.A.R.S隊員レベッカと協力して事件の鎮圧を図る。そこに現れたのが謎の青年タイラー・ハワード。元警察官だという彼の口から事件の裏にある驚愕の真実が……というのがだいたいのストーリーだ。

■ ただの”見た目が凄い舞台”ではない。

開演前は劇場客席にヘリの音が響く。舞台にはスクリーン、そこに映る映像は『BIOHAZARD』をイメージしたものだが、これが不気味な雰囲気を醸し出す。なるべく早めに着席した方が、世界観に浸る準備が出来る、という趣向だ。
幕があく。この物語の主人公であるタイラー・ハワード、「俺は死んでなんかいない」とつぶやく。そしてメアリー・グレイも登場、うつむき加減で、明るい衣装とは裏腹にどこか翳りがある。「生きている気がしない」という。タイラー・ハワードとメアリー・グレイ。寂寥感、孤独感、どこかで響き合う瞬間だ。そして「今日は始まりの日」といい、「自分の使命に気づいた」というメアリー。意味ありげな滑り出しである。

大学は平穏そのものであった。授業に出る学生たちは楽しそうだ。学業もさることながら、恋愛も重要だ。小柄でキュートなオリビアはメアリーにルーカスを自分の彼氏だと無邪気に言う。それをちょっとさびしげな笑みを浮かべて見るメアリー。ここまではどこにでもある光景だ。
そんな学校でいきなりのバイオテロだ。ゾンビの雄叫びが劇場いっぱいに響く。客席も含めて、まさにゾンビにのっとられた格好である。
そこへピアーズ・ニヴァンスとクリス・レッドフィールド、バイオテロ部隊BSAAのメンバーだが、もちろんめっぽう強いコンビだ。ここで教鞭を取るレベッカ・チェンバーズ、元S.T.A.R.S隊員、協力して事件の鎮圧に奔走する。そんな時に現れたのがタイラー・ハワード。物語の鍵となる製薬会社・アンブレラ。ゲームファンなら、すっかりおなじみの”いわくつき”の会社だ。社名の由来は「傘で人類を庇護する」とか。表向きは製薬会社であるが、裏の顔は……”真っ黒”だ。

大学の学長・エズラ・セネットはひとかどの人物で責任感も強い。秘書のマシュー・ラッセルは頭の回転は早い。学長に「学ぶ必要のない人間がいたらどうする?」と問う。この大学にはリヤン・ハワード、タイラー・ハワードの実の父親が分子生物学の教授として勤務していた。そこにフィロソフィー市警の刑事、バリントン・マイヤーが現れる。彼もまた、何か情報を握っているようである……。

たたみかけるような展開、事件を通してそれぞれの人間関係を提示する。設定はかなり特殊であるが、描かれているのは人と人とのつながりだったり、親子関係であったり、と実は普遍的なもの。主人公のタイラー・ハワードは特殊任務を背負っている、故に孤独である。が、使命感と正義を持って戦わねばならない。そんなタイラー・ハワードを矢崎広が的確に演じる。
ゲームキャラクターであるピアーズ・ニヴァンスとクリス・レッドフィールド、栗山 航と中村誠治郎、アクションもキマっており、文句なしにかっこいい。栗山は初舞台だそうだが、そんなことは微塵も感じさせない程で、舞台歴豊富な中村との息もぴったり。次があるなら、また、このコンビを観たいと思わせてくれる。
岸佑二演じるリヤン・ハワード、実直な研究者ぶりで流石の演技派。千葉真一はもはや貫禄、役柄にぴったり。その他、倉持明日香もなかなかの芝居巧者、キャスト全員、アンサンブルも含めて”いい仕事”ぶりだ。また、いたるところからゾンビが!という状況、客席にいるからと言って油断は禁物である。

しっかりとした芝居作り、映像演出も彼ならではのテイストで物語を盛り上げる。ゲームの映像は一切ない。銃の構え、身体を張ったアクション、ひとつひとつにこだわりを感じる。視覚的にも作品の世界観をキッチリと舞台上に、というスタッフの気概を感じる。
人間の弱さや切なさ、愛情、正義、いろいろなテーマを含む。ただの”見た目が凄い舞台”ではない。観客の心に響く台詞、心の機微、観終わった後に何かが残る。次回作があるなら、更なる進化を目指して欲しい。
《高浩美》
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