本作では、セルタッチのフルCGアニメ、本格的3D立体視の導入など様々な挑戦が行われている。多数のスタッフがこれを支えてきた。
本作のクオリティの高い映像実現に大きな役割を果たしたのがアニメスタジオのサンジゲンである。アニメーション・ディレクターを務めたサンジゲンの鈴木大介氏に、その映像についてお話を伺った。
[インタビュー取材・構成:数土直志]
『009 RE:CYBORG』
/http://009.ph9.jp/
■ 神山健治監督と009、これは断れない
―― アニメ!アニメ!(以下AA)
「サイボーグ009」は、長い時代にわたり多くの人の心を捉えてきた作品です。鈴木さんにとっての009から伺わせてください。
―― 鈴木大介氏(以下 鈴木)
僕が生まれて初めて買ったマンガは、「サイボーグ009」でした。誕生編を買って擦り切れるまで読みましたね。
最初に模写したキャラクターも、009なんです。目の描き方はずっと誕生編のジョーをベースにしています。あの3Dにしにくい髪型も、そもそも僕は何回も描いています(笑)。
―― AA
そこに「009 RE:CYBORG」の話があったわけですね。
―― 鈴木
そうですね。なおかつ僕は最近、アニメの監督といえば神山健治監督と思っていたので、とにかく監督が作るアニメは「攻殻機動隊 S.A.C」、「東のエデン」、「精霊の守り人」と全て面白い。
その時に「サイボーグ009」を持って監督がいらしたわけですから、もう手が足りなかろうが、これは断れない、やり遂げるしかないと、ほとんど運命的な出会いだと思いました。「これで遺作でもいい」とまで思いました。
―― AA
そのなかで鈴木さんの役割はアニメーション・ディレクターと重要なポジションです。今回、映画におけるアニメーション・ディレクターの実際のお仕事について教えていただけますか?
―― 鈴木
最初のモデリング、キャラクターの方向性、立体視の部分はかなり僕が決め込んでやっています。それと絵コンテが出来あがってから、実際にアニメーションにしていくにあたり、どういう手法をとるか、方向性を決める部分です。実際のアニメーションの作業は、リードアニメーターをはじめとするアニメーターのかたがたにやっていただきました。
それと監督からの「ここをどうしたらいいいんだろうか」に対して、「こうしたやりかたがいいんじゃないですか」と、道筋や全体の方向性を考えます。
■ セルタッチのCGにはチャンスがある
―― AA
「009 RE:CYBORG」の話が立ち上がった時から、すでに3Dという話はあったと思います。それがサンジゲンさんにお願いしますとなったのはどういったきっかけでしょうか?
―― 鈴木
神山(健治)監督や石井(朋彦)プロデューサーから、「セルルックでCGを出来る場所はないかと探していた」と後から聞きました。サンジゲンは当時からセルルックを中心とした展開をしていたので、それが監督の目に留まりました。
当時僕らは、「ラブライブ!」の最初のダンスシーンなどをやっていました。その前からテレビシリーズのなかで、「これは3Dで出来そうだったら、出来ますよ!」と少し無理を言ってやらせてもらっていました。
例えば、「おおかみかくし」で、車いすをCGでやってくださいと言われた時があって、「車いすがCGでキャラが2Dは難しいですよ、キャラもCGで出来ますよ」といった感じです。少しずつキャラクターをCGでやれるチャンスを探っていたんです。
―― AA
セルタッチのCGは、あまり表現が確立されてない分野なのですが、敢えてそこに挑戦していく、サンジゲンさんの原動力は何なのですか?
―― 鈴木
そうすることでチャンスが生まれるからだと思います。うちの社長(松浦裕暁氏)も狙いとして持っている部分ですよね。他にやる人がいないから会社の道筋にもなるし、目標にも出来るし、ビジネスチャンスも広がります。
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