「世界が注目するアニメ制作スタジオが切り開く未来」
Vol.5 ポリゴン・ピクチュアズ
世界からの注目が今まで以上に高まっている日本アニメ。実際に制作しているアニメスタジオに、制作へ懸ける思いやアニメ制作の裏話を含めたインタビューを敢行しました。アニメ情報サイト「アニメ!アニメ!」、Facebook2,000万人登録「Tokyo Otaku Mode」、中国語圏大手の「Bahamut」など、世界中のアニメニュースサイトが連携した大型企画になります。
全インタビューはこちらからご覧ください。
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ポリゴン・ピクチュアズ代表作:『GODZILLA 星を喰う者』『BLAME!』『シドニアの騎士』『亜人』『ロスト・イン・オズ』『トロン:ライジング』『スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ』、他多数。
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ポリゴン・ピクチュアズは、「誰もやっていないことを圧倒的なクオリティで世界に向けて発信していく」をミッションとして掲げるスタジオだ。
2014年に発表した『シドニアの騎士』で、日本と世界のアニメーション業界を揺るがした。セルスタイルのアニメーションがCGになって動き、マンガの表現もデジタルになって取り込まれる全く新しいスタイルだったからだ。その後も、『亜人』、『BLAME!』などを制作し、この路線を確立させる。
一方でポリゴン・ピクチュアズは1983年に設立され、現存するCGアニメーションスタジオで、世界で最も長い歴史を誇る。その長い歴史は伝統というよりも、常に挑戦する革新性に支えられてきたと言ってもいいだろう。
いまも挑戦を続けるポリゴン・ピクチュアズで取締役副社長も務める守屋秀樹プロデューサーに話を伺った。
世界で最も歴史あるCGアニメーションスタジオ
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――ポリゴン・ピクチュアズの成り立ちについて教えてください。
守屋秀樹プロデューサー(以下、守屋)
1983年に設立して、今年でちょうど設立35年です。現存するCGアニメスタジオの中では世界で一番歴史が長いです。長さだけで言えば、ピクサーよりも古いんですよね(笑)。
当初はCGツールを作るなどの活動をしていましたが、90年代には当社で企画した『ロッキー×ホッパー』がキャラクタービジネスで大成功しました。
でも自社企画ばかり優先して投資してきた結果、それは長く続かず、経営的な危機に直面。それで2000年頃から自社企画以外の仕事も始めるようになったんです。
その中でディズニーのTVシリーズ『プーさんといっしょ』を制作したことがきっかけになり、それ以降、ハズブロスタジオの『トランスフォーマー』シリーズ、ルーカスフィルムの『スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ』、ディズニーからはプーさんに続いて『トロン:ライジング』の発注があり、経営も安定するようになりました。
ちなみに『トランスフォーマー』シリーズは、これまでに100話以上も制作してきましたね。
――最近では、Amazonが企画した『ロスト・イン・オズ』の制作にも参加しました。スタジオジブリと協力して制作した『山賊の娘ローニャ』も含めて、これまでに当社のTVシリーズ作品はエミー賞の最優秀賞を5回受賞しています。
守屋
ポリゴン・ピクチュアズが日本の他のスタジオと違うのは、90年代にハリウッドの人たちも含めていろんな人がポリゴンに出入りしていたことでしょうか。そのネットワークのなかで海外のシリーズを作るようになれたんだと思います。
――2014年には日本的なルックのCG技術で『シドニアの騎士』を作り、その後に『亜人』、『BLAME!』、『GODZILLA』三部作と続きます。
守屋
日本にはセルルックCGアニメを作る会社が何社かありますが、近年では世界で一番多くの作品数を作ってきたスタジオだと思います。
『シドニアの騎士』と『亜人』は両方合わせて50話ですし、『山賊の娘ローニャ』も26話あって、いまは『蒼天の拳 REGENESIS』をやっています。
海外作品ですが、『トランスフォーマー ロボッツインディスガイズ』や、最近発表した最新作『スター・ウォーズ レジスタンス』も2DルックのCG作品です。
映画は『BLAME!』に加えて、『GODZILLA』三部作も作りました。僕らのセルルックCG技術も、この5年でだいぶ成熟してきたと思います。
――海外向けで手堅いビジネスをしていたのですが、それなのに競争の激しい日本のアニメに参入するんだと驚きました。
守屋
理由の1つは、海外の市況ですね。2010年ごろ、当社は海外のTVシリーズが仕事の大部分を占めていました。『スター・ウォーズ』や『トランスフォーマー』のアニメなんですが、日本の2Dアニメと比べ予算がすごく大きかったんです。
でも、そんなCGを使った高予算の大型企画は世界にもそれほどなく、2012年後半になると、アメリカでは次の波として2Dのコメディーなど低価格のアニメ企画が多くなってきた。
「このままでは僕らの仕事はなくなってしまうかもしれない」という危機感がありました。
もう1つの理由として、ちょうどその頃に『トロン:ライジング』で日本的なアニメーションのルックを技術開発していたことがあります。
そこで「この表現を駆使して日本的なルックの作品を作って、自社が主導する企画、そしてライツビジネスに再チャレンジできないか」と考えていました。
さきほどの海外市況の件もあって、最終的に「日本のアニメに進出してみよう」とこのころ決断したんです。早速、色々な国内のアニメ関係者と話をしはじめました。けれども実際はなかなかスムーズに「制作決定!」とはいかなかったんです。
当然ですよね。当時は他スタジオの制作作品も含め、CGの大人向けアニメはなかったので、「どんな見た目になるの?」「CGで売れるの?」と何度も聞かれ、時間もかかりました。
それでも「分らないけどきっといいものができるから、ポリゴンを信じてほしい」としつこくお願いをし続けていました(笑)。
縁あって最終的にはキングレコードさんがアニメ制作の大部分の出資を引き受けてくださって、出来上がったのが『シドニアの騎士』なんです。
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