4作品のうちの一つ『Midnight Crazy Trail』は、アニメテイストを得意とする3DCGスタジオ・ピコナの若手スタッフが、『タッチ』『うる星やつら』『みんなのうた』などを手掛けたベテランアニメーション作家・遊佐かずしげ氏の監督の元で作り上げたオリジナル作品だ。3DCGでアニメを作ること、それを教えること、学ぶことの難しさと、海外展開を目指す本作の見どころについて、遊佐監督とピコナの社長である吉田健プロデューサーのお二人にうかがった。
【取材・構成/いしじまえいわ】
【ストーリー】
真夜中の“ゴミ捨て屋” 稼業に励むシャウト&クランチのコンビ。そんなある日、魔女として立派な花嫁になるために、人間界で1年間修業すべくロンドンの街に降り立った16 歳の少女マキナがふたりを探しあて、“魔法の書”を捨てさせようと懇願。実は彼女、魔女をやめて普通の女の子になりたがっているのだが、そのためには魔法の媒介となる魔法の書が邪魔なのだ。しかし実際のところ、この本、簡単に捨てられるシロモノではなく……。
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■10年来の企画があにめたまごで実現!
――あにめたまごにて『Midnight Crazy Trail』を制作するに至った経緯について教えてください。
吉田健プロデューサー(以下、吉田P)
私事になりますが、14年ほど前に新卒で入社したゲーム会社を退職しました。それまでカードゲームのデザインや開発をしていたのですが、どうしてもアニメや映像がやりたくて、アニメーションの企画を2つほど考えていていました。その2作品のうちの1つが、今回制作した『Midnight Crazy Trail』です。
なお、もう片方の企画は『Pico~音を奏でる者』という形で起業前に3DCGアニメーションで映像化し、ピコナの社名の元にもなりました。
――10年来の夢が形になったのが本作なんですね。若手育成という側面ではどういった思いで取り組まれたのでしょうか。
吉田P
あにめたまごについては、その前身のアニメミライという呼称の頃から、レイアウトやカメラのレンズについての座学や実習など映像を学ぶ上で有益な講座を受けられるプログラムだということで意識していました。
2017年4月にピコナに新入社員が3人入社して、彼女らに3DCGを用いたアニメーションの社内研修をすることになっていたのですが、5月にあにめたまごの参加スタジオを募集していることを知りました。2Dのアニメのノウハウは3DCGの映像制作にも必要だとずっと思っていたので、先述のような講座を受けながら実際のアニメ制作をすることでアニメや映像について学べるのなら、自社だけで研修するよりもいい効果が得られるだろうと思いエントリーしました。
ただ、ピコナはいわゆるアニメスタジオというよりは3DCGスタジオですので、採択されたと電話をいただいた時は正直驚きました。
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――アニメの技術を3DCGにも活かせる、というのは、具体的にはどういったことですか?
吉田P
端的に言うと「画作り」です。2Dでも3Dでも最終的に「画を作っている」というのは同じなのですが、3DCGの場合オブジェクトを配置してカメラアングルに手を加えていけば一見それっぽい映像になってしまうため、その意識を持ちにくい。
たとえば3DCGで広角レンズの効果を入れると画面全体が横に広がり歪んでしまいます。一方アニメの作画の場合、背景は広角にしつつ、キャラは歪まないように描くケースが多いです。これはカメラとしての正確さよりも演出効果を狙ったいわゆる「嘘パース」なのですが、3DCGに馴れているとこのような「効果的な画作りをする」という発想があまり出てこなくなってしまうのです。そういう発想を実践の中で学んでもらいたいな、という思いがありました。
――遊佐監督はどういった流れで参加されたのでしょうか?
遊佐かずしげ監督(以下、遊佐監督)
吉田さんに初めて会ったのは、2008年に東京ムービーの『スケアクロウマン』という作品に3Dモーションディレクターとして参加していた時でした。そのときのご縁があって今回お声掛けいただきました。
吉田P
当初は人材育成指導員という形でしたが、監督兼人材育成指導員としてお願いさせていただきました。
遊佐監督
元々2Dと3Dアニメーションを手がけていましたし、10年近く専門学校や大学でアニメーションの講師もしていますので、指導員ならと思っていたのですが、結果監督も兼任という形となりました。
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