オリジナルアニメーション『さよならララ』…「絵作りが美しい」「雰囲気が良い」と好評を得た理由が監督・小出卓史のインタビューから見えてきた! | アニメ!アニメ!

オリジナルアニメーション『さよならララ』…「絵作りが美しい」「雰囲気が良い」と好評を得た理由が監督・小出卓史のインタビューから見えてきた!

キネマシトラスの15周年記念作品『さよならララ』。オリジナルアニメとなる本作は、『人魚姫』をベースに舞台を18世紀から21世紀の琵琶湖へ! 刻を越えたララの旅路は何を見つけるのか? 監督・小出卓史に本作にまつわるお話をうかがった。

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  • 監督・小出卓史
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毎週日曜日の24時30分からTOKYO MXにて放送されている『さよならララ』は、アニメスタジオ・キネマシトラスの15周年記念作品。1837年にデンマークの童話作家ハンス・クリスチャン・アンデルセンが描いた『人魚姫』をベースに、泡となって消えたはずの人魚姫「ララ」が、現代の琵琶湖に現れたことで再び“本当の愛”を探すことになります。

当初は現代文化に戸惑っていたララですが、なぜか魚の姿になった魔女「グレイス」、ボクシングに打ち込む学生「大津茉里」、そして地元の人々と触れ合ううちに、この世界でもどうにか生きて行けるようになっていきます。しかし“本当の愛”を探さなければならず、その想いに焦りの色が滲むようになっていくのでした。はたして彼女を待ち受ける未来とは……?

オリジナル作品ながら、その丁寧な作りで好評の本作。そこで本稿では監督の小出卓史氏にインタビューを実施し、作品に込めた想いをうかがってきました。

【プロフィール】
滋賀県大津市出身。キネマシトラス所属。『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』(2018年放送)で副監督を担当。『さよならララ』で初監督を務める。

◆本作はララをしっかりフォーカスする作品です

――キネマシトラスの15周年記念作品として制作された本作は、原作もキネマシトラスさんです。最初に何かベースになる企画があったのですか?

小出卓史(以下、小出):いえ、まったくのゼロベースでスタートしました。2021年の夏ごろ、担当していた作品が終わりに向かう中、当時の弊社社長である小笠原(宗紀)さんより、「そろそろ監督をやってもいい頃だよね」とお声がけいただいたのがきっかけです。そのときに「アニメにしたい原作はあるの?オリジナルにする?」と聞かれ、「それならオリジナルでやらせてください」と本企画がスタートしました。

その後、コアとなる数人のスタッフとともに2週間に1回ほどのペースで会議をして、いろいろと提案したアイデアのひとつが、のちに『さよならララ』になっていくものでした。自分は元々キネマシトラスの社員ですし、原作の制作に関わったメンバーも複数いましたから、その意味で「原作:キネマシトラス」です。

その後、2023年10月にようやくシリーズ構成が始められるというタイミングになり、シリーズ構成の川原杏奈さんが合流しました。

夏アニメ『さよならララ』第1話「人魚姫ララ」先行カット

――アンデルセンの『人魚姫』がベースとなっていますが、どのような部分に注目して『人魚姫』から『さよならララ』になったのですか?

小出:何より大切にしたのは原作の部分でした。『人魚姫』が描かれた19世紀の文化はもちろんのこと、当時の社会的状況、思想、価値観、なぜこのような物語が生まれたのか?という疑問、それらが本作のテーマとうまくつながるように構成しました。その上でララにしっかりフォーカスし、ララが一体何を考え、どんな気持ちになって、どんな行動をとるのかを掘り下げたいと思いました。

――ララを中心とした丁寧な人物描写はそこから来ているのですね。

小出:ただそのあたりは結論ありきで描くのではなく、エピソードが終わり、次のエピソードに取りかかるときに、常に「次にララはどうするか?」と疑問をララにぶつけて作ってきた感覚です。個人的には透き通ったきれいなガラスみたいなキャラクターではなく、どこかが欠けているような多面的なキャラクターを描きたいと思っているので、結果としてそういったキャラクターになってくれたらうれしいなと思いながら毎回のエピソードを作り上げていきました。

――魔女のグレイスも、魚になったり、ララに寄りそったりして、かなりおもしろいキャラクターですね。

小出:魚にしたのは、滋賀県という原作絵本にはない舞台に立たせたときに、この作品ならではの関係性を各キャラクター間で構築させたかったという意図がありました。人魚姫と、魔女と、茉里たちの関係性がどのように変化したのか。それを世界観として表現したいと思ったら魚になったんです。

夏アニメ『さよならララ』第1話「人魚姫ララ」先行カット

――そもそも琵琶湖という場所に意外性を感じました。

小出:滋賀県を舞台にしたのは、素朴な街でありながら田舎すぎないところが理由です。あの絶妙なバランス感覚は、アニメ作品では珍しいロケーションですし、あったとしてもそれほど多くはありません。それに自分の出身地でもありますから、よく見知った土地を描くことで真実味のある物語にしたかったという想いもあります。

――平和堂が実在の店舗なのですが、コラボ的な意味合いで登場したのですか?

小出:コラボというよりは、いい作品を作るにおいて大事な要素だと思ったので、無茶を承知でご許可をいただきました。作品によっては、地方創生の一環で最初から登場が決まっている場合もあります。しかし本作においては完全にこちらの都合でお力を貸していただきました。何しろ平和堂さんのような大きな企業さんは、地元に住んでいる者にとってはあって当然のものです。それを一文字変えて登場させることもあるかと思いますが、自分としては登場させるならちゃんとご許可をいただき、あるべき姿で描きたかったこともあり、企画の早い段階でオファーしました。

◆パイロット版が50万再生― 視聴者、アニメーターからも注目

――本作は2024年にパイロット版を公開しました。どのような経緯で制作することになったのですか?

小出:キネマシトラスとして初のオリジナル作品になりますから、出資先を探したり、スタッフを集めたりすることを考えると、企画書だけで作品を通すのはすごく難しいんです。ビッグネームのスタッフが関わっているわけでも、ブランドとして抜群の知名度があるわけではありませんからね。そこで企画を進めやすくするため、ストーリーの構成会議に入るあたりで早めに作業に入りました。

『さよならララ』パイロットフィルム

――手応えはいかがでしたか?

小出:こうした映像は見てもらえないことも多い中で、50万回以上の再生数はいい手応えだったのかなと、振り返ってみると思います。結果として、本作に参加したいと手を挙げてくれたアニメーターさんもいたので、その意味では作る価値はすごくありました。

――拝見すると、本放送のものとは大きく変わっていないように感じられました。企画段階で練り上げたものがブレずに映像化されたのは、やはり土台となる部分がしっかりとしていたのかなという印象です。

小出:それでも細部はかなり変わっているかと思います。ただしその程度で済んだのは、作りたいもののピントが合っていた証拠だと思いますし、コンセプトがブレなかったから絵としてもあまりブレなかったのかなと思います。

夏アニメ『さよならララ』第2話「滋賀を走る」先行カット

――シリーズ構成の川原杏奈さんは途中からの合流とのことでしたが、それはどのような経緯があったのですか?

小出:川原さんにお願いする段階ではすでに企画が固まりつつあり、その中でこちらのやりたいことがあり、しかも全12話の中に盛り込んでいただく必要がありました。そうなると、脚本家さん主導のプロジェクトのようにはいかず、脚本家さんにとってはかなりの制限が発生してしまいます。その中でご意見もいただきたいという、非常に難しい条件があったためなかなか決まらなかったのですが、川原さんとお知り合いだった演出さんのご紹介で、引き受けていただけることになりました。

――そのように制作された本作は、第1話の放送時から「絵作りが美しい」「雰囲気がいい」と評判でした。

小出: 思った以上に多くの方に見ていただけている、という印象です。元々本作は人魚姫の物語をしっかり描くことを目的にしていましたから、絵作りを優先していたわけではないんですよ。それに「いつもの人魚姫ね」という受け止め方が多いのかなと考えていたら、思いもよらずお褒めいただけて意外に感じました。それでも人魚姫の物語がしっかり見せられるよう、世界観をひとつずつしっかり作り、イメージボードを作成して地道に準備してきたことが実を結んだのかなという感覚ですね。絵作りも、音楽も、すべてララというキャラクターをしっかり描くためのプロセスです。

――視聴者の反響をどのように受け止めていますか?

小出:ただただ、ありがたいと思います。『さよならララ』は明確なジャンル分けが難しく、「どういうアニメなんだろう?」となりやすい作品です。そういったジャンルレスなところで物語を展開し、見ていただけるというのは、個人的にはすごくクリエイター冥利に尽きると思います。それがアニメファンだけではなく、普段はアニメを見ていない人が興味を示してくれるようなら、もっとうれしいですね。

夏アニメ『さよならララ』第2話「滋賀を走る」先行カット

――今回、いきものがかりさんがオープニングテーマを担当されています。まさか人魚だから「いきもの」とか……。

小出:その考えはありませんでした(笑)。いきものがかりさんにお願いしたのは、企画チームで話し合い、本作の意図に沿うアーティストさんは誰がいいかと検討した結果、もっともイメージに沿っていたのがいきものがかりさんでした。

――どういった部分で「イメージに沿っている」と?

小出:これは個人的な意見ですが、本作は若干ジャンルレスの作品ということで、より広い視聴者層のことを考慮したいと考えていました。そうなると、いろいろな世代に訴求できるいきものがかりさんがピッタリではないかと思ったんです。

――なるほど。シリーズとしては初の監督作品となった本作ですが、実際に担当されてみていかがでしたか?

小出:実は、厳密に言えば他作品のBlu-rayに付属する、5分ほどの特典映像が初監督作品なんですよ(笑)。ただそれは単発なので、シリーズとしては初監督作品になります。

また別の作品では副監督を担当させていただきましたから、ある程度は「これくらい大変なのかな」「自分がやるときはここを効率化しよう」と考えていました。ところが実際は大変でしたね(笑)。

うまくいった部分があれば、そうでもない部分もたくさん出てきました。それに全体管理だけではなく、クリエイターとしてコンテを切ったりすることもありますから、現場にいたいけど現場から距離を置きたいみたいな、気持ちが分裂しそうになることばかりでした(笑)。

夏アニメ『さよならララ』第2話「滋賀を走る」先行カット

――複雑な心境ですね(笑)。どのような学びがありましたか?

小出:たくさんありました。ただ総括するには早いので、まずは最終回まできっちりとやり遂げたいと思います。これからもどうぞ、ララを見守っていてください。

TVアニメ『さよならララ』メインビジュアル

▼放送情報
■地上波
TOKYO MX 毎週日曜24:30~
BS朝日 毎週日曜25:30~
読売テレビ 毎週月曜25:59~
AT-X 毎週月曜21:30~ ※リピート放送は毎週水曜9:30~、毎週金曜15:30~

■配信(見放題)
dアニメストア、ABEMA、U-NEXT、アニメ放題、ニコニコ動画、Prime Video、DMM TV、Lemino、FOD、バンダイチャンネル、Hulu、TELASA(見放題プラン)、J:COM STREAM、milplus 見放題パックプライム、アニメフェスタ、TVer、ytv MyDo!

■配信(都度課金)
HAPPY!動画、ビデオマーケット、カンテレドーガ、music.jp

【STAFF】
原作:キネマシトラス
監督:小出卓史
シリーズ構成:川原杏奈
キャラクターデザイン:谷 紫織
美術監督:藤野真里(スタジオ Pablo)
色彩設計:相澤里佳
撮影監督:出水田和人
編集:黒澤雅之
グラフィックデザイン:濱 祐斗・山口真生
深海イメージ:MON
ウォーターアーティスト:吉邉尚希
音響監督:山田 陽
音楽:yuma yamaguchi
音楽制作:KADOKAWA
シニアプロデューサー:小笠原宗紀
チームプロデューサー:石川祥気
クリエイティブプロデューサー:森山菜月
原作・アニメーション制作:キネマシトラス
製作:「さよならララ」製作委員会

【MUSIC】
オープニングテーマ:「さよならララ」いきものがかり
歌:吉岡聖恵 作詞・作曲:水野良樹 編曲:亀田誠治
エンディングテーマ:「Hearts Glow」Hana Hope
作詞:Hana Hope, 小西裕子 作曲:Hana Hope, KEI_HAYASHI 編曲:David Baron

【CAST】
ララ:菱川花菜
大津茉里:川石奈奈
グレイス:深見梨加
ルカ:村瀬 歩
大津祥弥:大野智敬
大津 誠:真殿光昭
大津江万:住友七絵
ローワン:てらそままさき
リサ:津田美波
コータ:山本和臣

(C)キネマシトラス/「さよならララ」製作委員会

《気賀沢 昌志》
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