映画「聲の形」牛尾憲輔インタビュー 山田尚子監督とのセッションが形づくる音楽 | アニメ!アニメ!

映画「聲の形」牛尾憲輔インタビュー 山田尚子監督とのセッションが形づくる音楽

インタビュー

映画「聲の形」牛尾憲輔インタビュー 山田尚子監督とのセッションが形づくる音楽
  • 映画「聲の形」牛尾憲輔インタビュー 山田尚子監督とのセッションが形づくる音楽
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2016年9月17日より全国で劇場公開される京都アニメーション制作/山田尚子監督の最新作、映画『聲の形』。その音楽は、ソロプロジェクトagraphや、LAMAのメンバーとして知られる牛尾憲輔が担当している。劇伴は2014年のTVアニメ『ピンポン THE ANIMATION』につづく2作目となる牛尾は、監督の山田尚子とともにどのように音の世界を作り上げたのか。
公開に先立ち、牛尾憲輔に楽曲制作におけるコンセプトを語ってもらった。
[取材・構成:高瀬司]

『聲の形』
2016年9月17日(土)全国公開
http://koenokatachi-movie.com/

※本インタビューには作品のネタバレに繋がる内容が含まれています。予めご了承下さい。







■「こんな現場ほかにないよと言われました(笑)」

――まずはじめに、牛尾さんが映画『聲の形』に参加した経緯を教えてください。

牛尾憲輔(以下、牛尾)
僕は普段はミュージシャンとして活動しているので、劇伴のお仕事はほとんどしていなかったんですが、山田尚子監督が僕の音楽を聴いてくださっていたらしいんですね。それで映画『聲の形』に合いそうということで事務所を通して声をかけていただきました。僕はもともとアニメが好きで、特に山田監督と一緒に仕事をしてみたいと以前から公言もしていたのでうれしかったですね。

――山田監督とお会いしていかがでした?

牛尾
もの作りの人間としてものすごく通じ合うところがあって、うれしい以上に驚きました。最初の打ち合わせで会ったときも、好きなものや影響を受けたものについて、音楽や映画だけでなく、絵画や彫刻、舞踊、写真、建築まで含めて、具体的な固有名詞で通じ合えて。

――そうした共通性は作品制作にも活かされているのでしょうか。

牛尾
そうですね。最初に話し合った、自分たちがいいと思い、この作品にとってふさわしいと思うものが、映画『聲の形』の根幹をなすコンセプトとなっていきました。普通、音響監督や選曲の方から音楽メニューという、こういうシーンがあるのでこういう曲を作ってくださいという指示書をいただくんですね。ところが今回はそれが2、3曲だけだった。それはなぜかというと、コンセプトワークを最初に2人で徹底的に行ったからです。

――その最初というのは、全体の工程としてはどの段階だったのでしょうか。

牛尾
絵コンテもまだそんなに仕上がってない、つまり作品の方向性がまだしっかりとは定まっていない段階ですね。そのころから僕がオーディオスケッチと呼んでいる、楽曲にとっての絵コンテに相当するようなラフをいくつも作って、山田監督と往復書簡のようにやり取りをしながら作業を進めていきました。絵コンテがあがった段階でもう40曲はできていたと思います。

――ということは、映像に対しても音楽が影響を与えたところがある?

牛尾
影響というだけでなく、映像と音が有機的に絡みあった作品になっていると思います。というのも、オーディオスケッチができあがったあとは、2人で週に一度レコーディングスタジオに入って、その時点でできている映像へ、実際にスケッチの曲を当ててみたり、合わせたものを観てアレンジを変えてみたり、もっと別の曲が必要だと思えばその場で作ったりといった作業をひたすら続けていったんです。そのために、僕と山田監督とスタジオのエンジニアだけの空間を作っていただいて、一対一でセッションをしているかのように進めていきました。

――それはものすごく特殊な現場ですね。

牛尾
そうですよね、作品のプロデューサーにも、こんな現場ほかにないよと言われました(笑)。それをこんな劇場公開規模の作品でやらせていただけたのはとても光栄なことだと思います。

――他方で、音響監督の鶴岡陽太さんとはどのようなやり取りをされたのでしょうか。

牛尾
音楽に関しては、最初にこちらから、全体的なプランニングやコンセプトを持っていき、鶴岡さんからゴーサインをいただけたら、山田監督とスタジオで制作し、できあがったものを再度持っていきチェックしていただく、という流れでした。つまりミクロな作業は僕と山田監督でやって、トータルバランスを見ていただいたかたちです。

abesan――最終的に何曲作られたのでしょう。

牛尾
(9月14日発売の)サントラには61曲入っているのですが、音響スタッフとのやり取りのために準備した楽曲まで含めると82曲作っています。ただ最終的に映画で流れるのは約50曲ですね。ピアノの曲が多くなりましたが、それは意識的な選択ではなく、結果としてそれらが残りました。

――選曲はどなたの主導で?

牛尾
もちろん最終的なジャッジは山田監督ですが、基本的にはどちらかということではなく、僕と山田監督2人で話し合うなかで自然と決まっていきました。

――牛尾さんは、ソロプロジェクト名「agraph」にもgraphという視覚的要素を織りこんであるように、以前のインタビューでは美しい風景などをコンセプトに音作りをしているとおっしゃられていましたが、今回もそうしたことはあったのでしょうか。

牛尾
ありましたね。基本的には、山田監督と磨きあげたコンセプトをベースに作っていますが、ラストシーンの音楽はある風景にインスパイアされて生まれたものです。それというのも、そこの曲ができずにすごく困っていたときに、仕事で京都に行く機会があったんですね。そのときに山田監督から、京都アニメーションのすぐ近くにある河原を教えてもらって。そこは、山田監督も映画『聲の形』のラストシーンがどうしても描けなかったときに何かを得た場所だったらしく、それを聞いて仕事のあとに行ってみたんです。そうしたら、気づいたときにはその河原の端っこで滂沱の涙で立ち尽くしていて(笑)。なのでラストシーンについて、山田監督と同じ場所で同じ風景を見ながら気づきを得られたというのは、とても幸運なことでしたね。

――同じビジュアルイメージとして、原作マンガからの影響はいかがですか。

牛尾
原作はご依頼をいただいた2015年に読んだのですが、すごくパワフルな作品なので、それをもとに音楽を当てることは必ずしもよい結果につながらないと思いました。なので原作はそのときに一度読んだだけ、むしろ山田監督とのコンセプトにもとづく、映画『聲の形』の音楽を作る必要があるだろうと、意識的に思い出さないようにしていました。いまだに読み返していないので、今回の映画が原作にどれくらい近く、どれくらい異なっているかは自分でもわかっていません。

《高瀬司》
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