コロナ禍で活動場所が限られた“声優・アーティスト”の新たなマネタイズモデルとは? OPENREC.tv「アニパチ」キーマンインタビュー | アニメ!アニメ!

コロナ禍で活動場所が限られた“声優・アーティスト”の新たなマネタイズモデルとは? OPENREC.tv「アニパチ」キーマンインタビュー

アニメ業界を「DX」しようとチャレンジをしているDigital Doubleの田中 宏幸取締役にインタビューを実施。同社が進める声優・アーティストが担当するインターネット帯番組「アニパチ」を取り上げながら、アニメ業界の新たなビジネスモデルについて、話を聞いた。

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新型コロナウィルスの影響により、日本国内ではさまざまなことが変化を余儀なくされた。アニメ業界も同様にアニメーション制作現場はもちろん、ライブやグッズ販売などのいわゆる「興行」を実施するのが難しい状況となり、各社が次のマネタイズを模索している。

今回、アニメ業界を「DX(デジタルトランスフォーメーション)」しようとチャレンジをしている株式会社Digital Double(デジタルダブル)の田中 宏幸取締役にインタビューを実施。同社が進める声優・アーティストが担当するインターネット帯番組「アニパチ」を取り上げながら、アニメ業界の新たなビジネスモデルについて、話を聞いた。
[取材・構成=森 元行]


―――田中さんの自己紹介をお願いします

サイバーエージェントのアニメプロデューサーを担当しており、現在放送中の『IDOLY PRIDE』というアイドルアニメや10月からはじまる『プラオレ!~PRIDE OF ORANGE』というアニメの制作に携わっています。またグループ会社のDigital Doubleの取締役をしていて、歌手や声優のマネージメント業務全般を行っています。

―――2020年1月よりOPENREC.tvの平日20時の枠を「アニパチ」として始動していますね。「アニパチ」とは?


OPENREC.tvを運営しているCyberZとDigital Doubleの共同で企画制作するアニメ・ゲーム・音楽に関わる番組を、サブスクリプションで配信する番組の集まり(枠)になっています。アニソン歌手の鈴木このみさんから番組ははじまり、声優の相良茉優さん、歌手のMay'nさん、声優の相羽あいなさんが現在それぞれの曜日を担当しています。


―――サブスクリプションにした理由は?

今までは、大きなライブやイベントがあってそれに紐付いてチケットを購入するためのファンクラブがあって、ファンの方がイベント会場にきてグッズを購入する、というようなオフラインコミュニティがありました。しかし、コロナ禍でそういったオフラインのライブやイベントの開催が難しくなっており、一連のコミュニティが見直しの岐路に立っています。サブスクリプションを導入することで、そういった一連の流れやコミュニティをデジタルに置き換えられないかと考え、チャレンジをしています。

―――番組を担当しているアーティストの方々は、所属がバラバラですね

鈴木このみさんと相良茉優さんはDigitalDouble所属、相羽あいなさんは響所属、May'nさんはホリプロインターナショナル所属、とアーティストさんの所属はバラバラなのですが、会社として日頃からコミュニケーションを取って頂いており「これから新しい戦略やチャレンジを一緒にやろう!」というスタンスを共通認識として持てている会社様とご一緒しています。また、私たちも未知なる仮説を立てて新しい仕組みでのチャレンジになっていますので、アーティストの方の発信力やデジタルに対する発想、柔軟性が必要になってきます。こういった部分にも共感してくれるようなアーティストの方々とご一緒している状況です。


上記を踏まえた上で、アーティストの個性に合わせた形で番組作りを行っています。相良茉優さんはいわゆる「オタク代表」というような親近感のある声優さんで、アニメもゲームも好きということで、番組では『Minecraft』というゲームの中でファンの方が常時入れるようなサーバーを立ててファンと交流していたりします。配信がない休日なども、相良さんご自身がサーバーに入ってファンと一緒に交流したり、ファンの方々も相良さんがいない間にお城を作ったり、ステージを作ったり、富士山を作ったりして。ファンの方が作った富士山でみんなで初日の出を見る、などオンライン特有のコミュニケーションを広げるのが天才的に上手な方です。


鈴木このみさんは、やはり歌の魅力というものがすごくあるので多重録音やボーカルの重ね取りなどを、スタジオさながらに配信内で即興で行って、録音した成果物を実際のコンサートで使っていたりします。鈴木さんは昨年12月に喉のポリープの手術を受けており、しばらく休養期間でしたが、ファンの方々が集っているOPENREC.tvで復帰、ということでドラマの場になっていたります。


May'nさんは、歌はもちろんですが、とても多才な方で、ご自身がキックボクシングなど身体を動かすことをストイックにやられていて、そういったことを活かしてエクササイズをファンの方と一緒に行って、エクササイズの後にはみんなでプロテインで乾杯、みんなでマッチョになろうといった趣味を活かした配信内容になっています。


相羽あいなさんは、とにかく度胸が座っていて事務所の方も「特にNGも無いです!」と仰るので、番組の中で本人の知らないドッキリをスタッフが毎回仕込んでいたりして、毎回ヒヤヒヤしながら配信をしていたりします。

番組それぞれに対して台本がしっかりとあるわけではなく、雑談にも近いような形でファンの方との距離感を大切にしながら、それぞれの番組を配信しています。オンラインサロンの雰囲気にも、少し似ているかも知れませんね。

―――取り組みに対する反響は、いかがでしょうか?

サブスクリプションという仕組みはすごく注目されているので、まず、アニメ業界内の問い合わせがすごく多いですね。「どうやってはじめればいいのでしょうか?」ということから、そもそもサブスクリプションの仕組みについて正確に理解していない方も結構いらっしゃいます。サブスクリプションは、従来の在庫や原価先行の販売モデルと違って、番組に対する期待値として先にお客様から代金を頂く形になります。月額会員の方は、継続率が高いので年間の投資予算が先に組みやすく、その予算で新たなクリエーションを各番組で生み出していくことが可能になります。今までのビジネスモデルとは全く意味合いが違うので、ローリスクで始められて、ストレッチ性の高いビジネスモデルになりえます。こういったビジネスモデルを展開しているプロダクションやアニメ関連会社はまだあまりないのかな…と考えており、このビジネスモデルを拡張させて、業界に携わる人たちが幸せになれないかな、と。

声優さんもアフレコだと定められたギャランティの幅でしかお金は貰えない。イベントやライブなどで稼いでいた部分もあったと思うのですが、コロナ禍においてそういった手法はなかなか難しいです。特に深刻なのはアニソン歌手の方で、本来であれば海外のイベントであったり自社のライブイベントであったりと、そういった興行全ての部分が難しくなっています。興行が実施できないと、ファンクラブの入会動機も減っていきますし、既存のファンも退会傾向になります。アーティストや声優が安心して活動できる為の収益面という点からみても、サブスクリプションは本人に頑張れば頑張るだけ還元できるフェアなモデルなので、取り入れる余地はあると考えています。

―――これからの広がりや展望は?

今回のコロナ禍で業界全体として大きなシフトチェンジが必要であると感じていますし、規制のビジネスモデルに囚われずに一気に新しい方向に踏み込んだ人たちが成功するのかな、と考えています。将来的には平日20時の枠にこだわらずに面で番組を増やしていって、新人声優さんの育成やマネタイズの場になってもいいし、現在は女性アーティストだけですが、男性アーティストにも配信してもらう…というのがまずひとつです。また「アニパチ」から楽曲や映像が生まれたり、ブランドやグッズが誕生したり、PPV
(ネットチケット)型のイベントを実施したり、とサブスクリプションからの派生でたくさんのキャッシュポイントを作っていきたいですね。みんなが幸せになれるプラットフォームを作れたらいいな、と思います。

―――デジタルを活用することで、アーティストとの距離が、より近づく気がします

大きく考え方を変えなければいけないのが、今までは「メイクをして、ステージを作って、衣装を着て、入念なリハーサルをして完成形を表に出す」というエンターテイメントでした。しかし、今はその形だとなかなか共感が得られにくいと感じています。制作過程のプロセスであったり、応援しやすい距離感というものが求められています。表の出来上がった形をポンッと出すだけではなくて、裏側も含めてアーティストに共感してもらうということが大事だと考えています。

一方で距離が近づくということは、アーティストの本質をより見られることになります。例えば、歌手であればライブ会場の盛り上がりや機材を揃えるなどしてある程度聞かせ方の工夫ができるのですが、オンラインだと如実に実力がでます。オフラインだとごまかせた部分も丸裸になるので、本質を持っている人とそうでない人との差が出てくると考えています。

―――距離が近くなるほど、ファンとのトラブルなどのリスクも上がってしまうのでは?

現時点では、そのようなことは起きていないですね。そもそも、そのアーティストが好きな人しかサブスクリプションという形で定額支払わないと思いますし、Discordなどのチャットツールを連携してもらってむしろ、ファンの方に配信に参加してもらってアーティストの良いところや曲の良さをプレゼンしてもらう…といった企画も行ったりしています。匿名性を薄くしながらコミュニケーションを取っていることもあり、サブスクリプションの中は平和なのかなと思います。逆に言うと、こちら側が手を抜いたり、考えが浅いものを提供すると一瞬で愛想を尽かされてしまいますね。そういった意味でも、お互い真摯にコミュニケーションを取っていく必要があります。

―――視点を広げて、アニメ業界全体で見た時のDXはどのような形があるのでしょうか

サイバーエージェントのアニメ事業部としても向き合っていく課題です。今までは、卸であったり流通であったり、小売店が挟まりながらアニメを販売していく形でしたが、やはりオンラインでの販売がメインになってくると想定できます。アニメ業界でもD2C(消費者直接取引)が進んでいって、ウェブ解析や自社でECを持ってサービスを向上させる、というワンストップの販売体制や宣伝体制をきっちり作って販売していくということが非常に大切になってくるのでしょうね。もしかすると販売グロスは落ちるかもしれませんが、中間流通料やリベートなどが減少して利益率が上がるという側面はあると思いますので、そういった部分を許容しながら収支に合わせられるようなリクープラインというものを作っていくことが大切だと思います。

今現在、コロナ禍で起きている行動変動やその中で生まれてきた新しい技術を捉えて、コロナ禍が収まったとしても起きうる未来やビジョンをある程度想像しながら新しい形にフィットしながら前に進むというのが理論の上では最善の手だと考えられます。我々のような小さな組織であれば動きも早くすることができるので、アニメ業界のビジネスをかき回すゲームチェンジャーになりうる可能性もあると思いますしチャンスと捉えて未来志向で頑張りたいと思います。

―――Digital Double所属のアーティストや声優は今後も増やしていく?

サイバーエージェントグループとしても続々と新しいアニメを制作して声優さんの役の数を増やしていく動きをしていますので、少数精鋭になっていくと思いますが密なコミュニケーションが取れる自社のアーティストや声優は増やしていきたいですね。アーティストや声優の方々が影響力を持てばそれが必ず商売に繋がっていくので、歌を歌って踊りを踊って芝居ができるということだけでなくてもよくて、本格志向の一芸に秀でている仲間を増やしていきたいです。

―――読者に向けてメッセージを

業界の方におかれましては「アニパチ」枠は拡大志向でいますので、この記事を読んで興味を持って頂いた方はぜひ直接Digital Doubleに問い合わせをして頂きたいです。新しいビジネスモデルを構築して、一緒にコロナ禍を乗り越えていきましょう。


また視聴者の方に対しては、サブスクリプションを通じて得た収益はきちんとみなさんが応援するアーティストさんに分配されて、ギャラ・生活費はもちろん、新しい自己啓発に対する費用、さらなる表現の場を広げるということであったり、大胆な企画投資ができるというところに繋がると捉えてもらって、周りの人も含めてどんどん参加してもらえると嬉しいです。2月から月額の入会費用1ヶ月間無料になるキャンペーンを実施しています。これを機に、ぜひアーティストさんの素の顔を、配信を通じて楽しんでもられえばと思います。
《森 元行》
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