「あにめたまごから世界を目指す!」海外展開を前提とした3DCGアニメ「Midnight Crazy Trail」のデザインとキャスティング 2ページ目 | アニメ!アニメ!

「あにめたまごから世界を目指す!」海外展開を前提とした3DCGアニメ「Midnight Crazy Trail」のデザインとキャスティング

若手アニメーター等人材育成事業「あにめたまご2018」より、『Midnight Crazy Trail』を手がけた遊佐かずしげ監督と、吉田健プロデューサーにインタビューを敢行。

インタビュー
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左から吉田健プロデューサー、遊佐かずしげ監督
  • 左から吉田健プロデューサー、遊佐かずしげ監督
  • 『Midnight Crazy Trail』(C)PICONA/文化庁 あにめたまご2018
  • 『Midnight Crazy Trail』(C)PICONA/文化庁 あにめたまご2018
  • 『Midnight Crazy Trail』(C)PICONA/文化庁 あにめたまご2018
  • 『Midnight Crazy Trail』(C)PICONA/文化庁 あにめたまご2018
  • 『Midnight Crazy Trail』(C)PICONA/文化庁 あにめたまご2018
  • 「あにめたまごから世界を目指す!」海外展開を前提とした3DCGアニメ「Midnight Crazy Trail」のデザインとキャスティング
■3DCGアニメーターに手描きアニメの技を学んでもらう工夫
――若手育成をするにあたって、難しかったのはどういった点ですか?

遊佐監督
今回は特に人材育成が主目的ですので、6人の若手アニメーターのために、キャラクターデザインや絵コンテをそれに適したものにすることでした。本作は絵コンテをナベシン(アニメ監督・演出家のワタナベシンイチ氏)が描いていますが、アニメーションの基本をしっかり学べる様にコンテを修正しました。

吉田P
キャラクターデザインや3DCGモデルで、主人公のマキナはとくに初期設定から修正を重ねて、最終の形になりましたね。

マキナ

遊佐監督
3Dアニメーションではモデリングが重要です。「腕を自然に上げることができるか」「表情の変化はどこまで可能か」「フリルやスカートが身体にのめり込まないか」つまりキャラクターが自由なポーズで演技することが大切です。しかし、元のキャラクターが複雑なデザインだったため、その分、アニメーションの工数はかかりました。シンプルなデザインに比べると、若手アニメーターの作業量も増えてしまったので、モデリングの重要性は今後の課題です。
当初100%3Dで表現する予定でしたが、絵コンテの内容と彼らのスキル、スケジュールを踏まえ、小動物や悪魔、自然現象の一部は2D作画に切り替えています。3Dと2Dの合成です。結果としてより一層6人の新人アニメーターには刺激として効果があった気がします。監督自ら原画を描き、タイムシートも含めた模範を示す形となったからです。私自身3Dアニメーターでもありますので、3Dしか経験の無いアニメーターに常々警鐘を鳴らしていた立場でしたので、その点を十分配慮した形です。
たとえば飛行機のプロペラを回す場合、3DCGだと3枚の羽根のモデルを作ってそれらを回転させて……と全て作り込んでしまう場合がありますが、2D手法に習えば回っている円盤状の羽根をブラすことで回っているように見せます。視聴者の目の錯覚を利用します。そのためレイアウト段階で相当な細かな指示が必要でした。これは一例ですが、そういった手描きアニメの先人が培ってきたテクニックの数々を、若手の3DCGアニメーターたちが実際に見て学ぶ良い機会になったと思います。手描きアニメ特有の柔らかさや表現の可能性を意識してもらえたのではと思います。

『Midnight Crazy Trail』(C)PICONA/文化庁 あにめたまご2018
■世界展開を意識したキャスティングとデザイン

――作品そのものについて教えてください。『Midnight Crazy Trail』はどういった視聴者を想定しているのでしょう。

吉田P
想定しているメイン視聴者は中高生です。主人公のマキナは魔女なのですが、魔法を捨てて普通の女の子になりたい、と思っている少女です。そんなマキナが魔法を捨てる場所を探して仲間とともに世界中を旅するというストーリーなのですが、根本にあるのは「魔法という自分の個性とどう向き合うか? どう受け入れるか?」というテーマです。
シリーズとして考えた場合、本作は第1話としても考えられる構成なのでストーリー的にはごく序盤にあたるのですが、このテーマを若い方に感じてもらえたらなと思います。

――マキナを演じられた上坂すみれさんとはどういったご縁があったのでしょう?

吉田P
大学院での先生だった故・櫻井孝昌プロデューサーが共通の知り合いで、そのご縁でした。上坂さんはロシア語が堪能という能力もありますし海外での活動も数多くされたりしている方なので、魔法という個性を持って世界を旅するマキナのコンセプトにリンクするものがあるなと思い、オファーさせていただきました。また主演だけでなく主題歌も歌っていただけました。本作は今後海外での展開も視野に入れていますので、『Midnight Crazy Trail』を通じて共通の師である櫻井さんのしていたアニメ文化外交につながれば、という思いがあります。

『Midnight Crazy Trail』(C)PICONA/文化庁 あにめたまご2018
――海外展開を意識されているのはどういった点ですか?

吉田P
上坂さんのキャスティングもそうなのですが、主にはデザイン面で意識しています。キャラクターはディズニーアニメ『ファイアボール』シリーズでデザインをされたイラストレーターの御船麻砥(みふね・あさと)さんに、美術設定は海外でも人気のゲーム『GRAVITY DAZE』シリーズを担当されたコンセプトアーティストの緒賀岳志(おが・たけし)さんにそれぞれお願いしました。メインビジュアルはお二人の合作なのですが、本編含めて国内外にアピールできるものになったのではと思います。

――お二人には海外展開を意識している旨をお伝えした上でオファーされたのでしょうか。

吉田P
はい、企画意図や企画書もご覧いただいた上で海外展開も考慮してデザインしていただきました。そのおかげもあってか『Midnight Crazy Trail』というタイトル名でツイッター検索をすると、もう英語の方やスペイン語の方などが感想をツイートされているんですよ。あにめたまご2018のPVをご覧になったのだと思うのですが、ありがたいことです。自分も英語の方には「Thank you very much!」とお返事したりしています(笑)。


――それでは最後に若手アニメーターの育成を終えた感想と、作品を楽しみにされているアニメファンのみなさまへ向けてのコメントをお願いいたします。

遊佐監督
今回若手アニメーターとして参加した6人はもちろん、ピコナのベテランスタッフにもモデリングやリギング(骨格制御)など幅広く指導をさせていただきました。
また、仮アフレコは東京アナウンス学院のみなさんに、オープニングのダンスシーンの振付は福岡スクールオブミュージック専門学校の学生さんに協力していただき、彼らにもアニメ制作について学ぶ機会に持っていただきました。
ピコナも3DCGスタジオによる元請けオリジナル作品制作ということで学ぶところが多かったとプロデューサーも仰っておりますし、私自身も含めて、多くのクリエイターがこのプロジェクトを通じて成長できたのでは無いでしょうか?
若いアニメーター、クリエイターさんたちとピコナの今後の飛躍を応援しています。

吉田P
今回参加された若手のみなさんは、2Dも3Dも動かす楽しさは一緒だという事を感じてくれたと思います。ぜひこれからも3DCGで魅力的なアニメ作品を作り、アニメ産業の発展に寄与してくれたらと思います。
『Midnight Crazy Trail』は今後も様々なメディアでご覧いただけるほか4月以降もいろいろと展開を予定していますので、アニメファンのみなさまはぜひご期待ください。
また、本作だけでなく『あにめたまご2018』の4作品を見てくださった方は、ぜひツイッターなどで作品名を添えて感想や応援のコメントを書いていただけたらと思います。各社のプロデューサーさんがエゴサーチをして(笑)、その気持ちをちゃんと若手アニメーターのみなさんに伝えてくれるはずです。
アニメファンのみなさんの応援が現場のクリエイターに届くことこそが、アニメ業界の明るい未来の第一歩だと思います。

――本日はありがとうございました。
《いしじまえいわ》
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