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映画「パワーレンジャー」坂本浩一監督インタビュー 「日本の特撮との違いを楽しんでほしい」

アメリカのスーパーヒーロー映画『パワーレンジャー』が、満を持して日本に上陸。7月15日より全国ロードショーを開始する。
『パワーレンジャー』とは、日本の「スーパー戦隊シリーズ」をアメリカでローカライズして制作されたTVドラマシリーズ。

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■子どもたちの憧れのアイコンを作りたい

――アメリカには既に、MARVELやDCに代表されるスーパーヒーローが多数存在しますが、パワーレンジャー独自の魅力とは何だと思いますか?

坂本
一番に挙げられる点は、5人のチームワークを描いているところですね。パワーレンジャーがアメリカの地に降り立った当時は、ヒーローは単体という例が多かったですから、そこは新鮮なポイントだったと思います。またTV版の第1作はハイスクールが舞台だったので、どこにでもいるような、つまりは自分もなれそうな気がするヒーローというのも親近感を持ってもらえたところでしょう。それからもうひとつ、アクションシーンの演出に格闘技やアクロバットを取り入れたのが、アメリカの子どもたちの憧れを作ったのだと思います。『パワーレンジャー』はもともとマーシャルアーツ(武芸)の魅力を押し出す方針だったので、キャスティングの段階で本当に格闘技や体操ができる俳優を集めました。実際、シリーズ放送後にはアメリカの格闘技人口がすごく増えて、最近アメリカで若手のスタントマンと話した時も「パワーレンジャーを見て格闘技を始めた」と言う子がいましたね。

――『パワーレンジャー』はアメリカ格闘技ブームの火付け役でもあったんですね。

坂本
少なからずアメリカ社会へ影響を与えたと思います。近年の日本は、空手や格闘技を習っている子どもがそんなに多くないようです。でも僕らの世代が恵まれていたのは、子どもの頃にジャッキー・チェンや真田広之さんのような、憧れのアクションスターがたくさんいたんですよ。今の日本では特撮ヒーローはあくまで子ども向けのコンテンツで、憧れる対象とはちょっと違うところにあると思います。もちろん子どもたちは「カッコいい」と感じていますが、それは子どもの時分の通過点に過ぎないと位置付けです。アクションに通じる格闘技や体操は、やっぱり憧れる存在がいて始めるものなので、今の日本にそのような憧れの対象になるアクションスターがいないのは厳しい所ですね。僕らが作っていかなければならないと思います。

――ご自身が監督される作品には、子どもたちの憧れのアイコンを作る思いが込められているのでしょうか?

坂本
もちろんです。僕が今この仕事をしているのも、9歳の頃にジャッキー・チェンの映画を見たのがきっかけですからね。僕の作品を見て、「将来こんなことをやってみたい」と思ってもらいたいものです。この年齢になってくると、次世代へ伝えていくという役目も多少感じるようになってきます。見た人に何かしらの影響を与えられる作品であり、かつこの業界の次に繋がっていくものであれば、と考えながら作品作りに取り組んでいます。

――坂本監督が特撮作品を作る時、演出面ではどういったところで“特撮らしさ”を意識されますか?

坂本
大事なのはメリハリで、僕はいつも作品をリズムで考えています。単調なシーンが続かないように、名乗りや爆破など頭の中でシークエンスのリズムを組み立てて、子どもたちが最後まで楽しく見られるかどうかを計算しています。子どもに限らず、人間は何を見るにせよ単調なものだと飽きてしまうので、視覚からも聴覚からもテンポを作って刺激を与えられるようにと考えていますね。

――視覚や聴覚からテンポを変えるというのは、具体的にはどのような演出ですか?

坂本
コミックブック原作の作品だと、画面の色のコントラストを効かしたりエッジを持ち上げたりというかたちで、視覚から世界を作っていく手法があります。非現実的な世界が舞台になる場合は、見た目で「こういう世界観です」と提示をしたほうが、見る人もすんなり入ってこられると思うんですよ。視聴者は「なんか違うなぁ」と思った時点で気持ちが逸れてしまうので、作品の世界にグッと捕まえるためにも色味から調整するのは僕の好きなやり方ですね。たとえば『仮面ライダーフォーゼ』は登場人物が着る学生服がすごく青いんですが、その他の部分も極端に強調するといった工夫を散りばめて、「この世界観ならアリ」と無意識下で納得してもらえるようにしていました。

――盛りだくさんにお話し頂きありがとうございました! 最後に映画『パワーレンジャー』の魅力を教えてください。

坂本
違う国、違う文化で生きている人たちが、同じ作品を消化する時の楽しみ方の違いが表れています。日本で生まれたスーパー戦隊がどんなふうにアメリカナイズされたか、楽しみにしていてください。「日本の特撮とここが違う」ということではなくて、逆にその違いを楽しんで見てほしいなと思います。
《奥村ひとみ》
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