辻真先×水島精二「コンクリート・レボルティオ~超人幻想~」ゲストライター超人対談企画 第2回 2ページ目 | アニメ!アニメ!

辻真先×水島精二「コンクリート・レボルティオ~超人幻想~」ゲストライター超人対談企画 第2回

『コンレボ』制作陣と、ゲストライター陣との連続インタビュー。第2弾となる今回は、5月1日放送の第17話「デビラとデビロ」を担当した辻真先氏と、水島精二監督との対談だ。

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■ 「昭和」をポップなビジュアルで描く意味は?

――「昭和」をテーマとした作品ですが、辻先生はシナリオではあまりそこに触れていない気がします。ただ、新宿の描写が印象的でした。


新宿駅西口の地下一帯は、当初は広場としてみんなで集まってフォークを歌ったり、詩を売ったりしていたんです。けれど、みるみるうちに「通路なんだから立ち止まってはいかん」と騒ぎになったんです。そのころ僕は『少年キング』で、新宿西口で詩を売っている女の子を主役とした物語も書いていたぐらいで。だから、あれはほとんど実体験とも言えますね。

――水島監督は作品全体として「昭和」をどのように描こうと?

水島
僕は昭和41年生まれなので、作中のモデルになっている昭和40年代のときは子供で、当時のことはよく覚えていないわけです。だから当初は、子どもの頃の原体験の総括として、当時のヒーロー番組などを題材にメタフィクションとして描こうと。ところがもっと前の時代からはじまったので「全然知らないよ!」と(笑)。リサーチャーに入ってもらい時代考証もしっかりしないといけない。そのうえであえてウソをついたりしているので、ものすごく労力がかかっています。
最初はひと目見て「昭和だ」と分かるような画づくりも考えていたんです。ただそれだと、若い子に「自分たちの話じゃない」と思われてしまうかもしれない。それで現在のようにモダンアートっぽいビジュアルを採用したんです。

辻 
では、最初はリアルな昭和を描こうとされていたと?

水島 
ええ。結果的に、ポップな方向に転換してよかったと思います。『コンレボ』は『アベンジャーズ』と同じでヒーローをクロスオーバーさせた世界観なんだけれど、日本が舞台なのでリアルにやってしまうと絵的に地味になっていたかもしれない。実際に出来上がったストーリーもものすごく昭和っぽいですし。


あのデザインでちょうどいいぐらいですよ。延々と「木造の瓦葺きで」とやられたんじゃ、わたしも小津安二郎やるつもりないですからね(笑)。ただ、最初はあんなポップな感じというのはまったく考えてなかったので、アニメの絵を見せられて目をパチクリで。これは面白くなるんじゃないかと。

水島
もともと「昭和」がモデルということで、設定などディテールに視聴者の気持ちがいってしまうのを危惧していたんです。ああいうポップな絵柄にしたことで、おおらかなウソがつけるようになったのも良かったです。時代考証をリアルを突き詰めても、それが自慢になるだけで面白くなるわけではないので。もちろんきちんと調べたうえで、ですけど。


辻 
以前、水島監督と會川さんでつくられた『大江戸ロケット』は時代考証が徹底されていて素晴らしかったです。時代小説書いてくる人たちに「『大江戸ロケット』見なさい」とよく薦めているぐらいで。映画の江戸のセットを見たって、元禄だろうと文政だろうと、明治維新も全部同じセットになりがちですから。そこへくると、『大江戸ロケット』は当時の長屋がきちんと描かれていました。

水島
あれは會川さんの「時代劇」のなせるわざで。會川さんが当時の長屋や井戸なんかを口頭で説明したのを僕らが聞いて、記念館に調査しに行ったりと徹底して調べたんです。実は『コンレボ』と『大江戸ロケット』はすごく密接していて。今回、美術監修として参加してもらっている松本浩樹さんも『大江戸ロケット』からのつながりなんです。

辻 
そうだったんですか。

水島 
『大江戸ロケット』のとき美術をアウトライン化してイラストチックにしたんです。それで手応えを感じたので、『コンレボ』でも同じ方法論でやってみようと。近年はフォトリアルに寄せた美術が多くなっていますけれども、アニメなんだからもっと自由でいいと思っているんです。
ただ、最初のころはアニメーターから「距離感が掴みづらくてレイアウト切りにくい」という声も多くて(笑)。演出を工夫したり、数をこなしているうちにそれはなくなってきましたけど。
《沖本茂義》
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