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「九十九」森田修平監督インタビュー 「じわじわとくる、おかしみのあるアニメ」

森田監督の作家性がいかんなく凝縮された『SHORT PEACE』「九十九」が、第86回米国アカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされた。その特殊な制作体制からショートアニメへの思い、そして監督の新たな歩みまでを伺った。

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abesan■ 怖いのだけれど、
どこかおかしみがある


― では逆にすべてが完成した地点から『SHORT PEACE』全体の中における『九十九』を振り返られるとどのように感じられますか。

― 森田 
今回の監督の中では僕が一番の若手なんですが、それなのに作ったのは収まりのいい落ち着いた作品で、一番若手らしくない仕事をしたなあと(笑)。
10分ちょっとという枠内でシナリオを作るとなると、派手なシーンを盛り込み視聴者の興味をひくタイプか、無駄のない話運びできれいに終わらせるかのどちらかになると思うのですが、自分は後者を選んだんですね。

今回モチーフにした妖怪を例にすると、百鬼夜行とか大合戦といった妖怪が大勢出てくる映画にはせずに、民話伝承などにあるような淡々とした妖怪譚にした。「ちょっと変なことがあったんだよ」というだけの話なんだけど、なんとなく地味な面白さがある……そういう物語が好きなんですよ。

歌川国芳の絵や『稲生物怪録』、あとは柳田國男なんかを読んでいて思うのは、妖怪っていうのは「怖いのだけれど、どこかおかしみがある」ものだということです。
室町時代になって出てきた一番古いほうの九十九神の話とか面白いんですよ。馬に踏まれた家具とかが腹を立てて人を殺してまわるんですけど、そのあと反省して「自分は成仏したい」って言ったり(笑)。おどろおどろしさとおかしみが同居している。

― 『九十九』の主人公もおどけた動作の目立つコメディリリーフとして、おかしみを醸し出すのに一役買っていたと思います。

― 森田 
あの主人公は妖怪が出てきてもぜんぜん怖がらず、道具のほうにばかり目が行きますからね(笑)。ああいう細かい描写から、じわっとした面白味を感じていただけたらうれしいです。
これみよがしな「ほら面白いでしょ」というシーンは入れないようにしていて、そのために脚本の装飾も削ぎ落とし台詞も少なくしていったのですが、その分、絵の側により力を入れられたので、結果として「シンプルなストーリーと丁寧に描かれた絵」という、地味ではあるけれども、自然に理解しやすい作品にできたのではないかと思っています。
特に地味な面白さというのは、観るたびによりじわじわと感じられるものなので、ショートアニメということで観返しやすい作品ですし、繰り返し観てもらえたらよりうれしいですね。

fd

《animeanime》
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