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「九十九」森田修平監督インタビュー 「じわじわとくる、おかしみのあるアニメ」

森田監督の作家性がいかんなく凝縮された『SHORT PEACE』「九十九」が、第86回米国アカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされた。その特殊な制作体制からショートアニメへの思い、そして監督の新たな歩みまでを伺った。

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■ 『SHORT PEACE』と3DCGの技

― 技術的なお話も伺わせてください。『九十九』は3DCGを基調とした作品ですが、クレジットには作画監督として堀内博之さんのお名前がありました。どういったお仕事を担当されていたのでしょうか。

― 森田 
堀内さんにお願いしたのは、物置で匂いが黄色い煙のように広がるエフェクトや、ふすまに描かれている女性の絵の振り返りといった部分ですね。

― では作画はあくまで補助的なもの?

― 森田 
そうですね。適材適所にというくらいで、シナリオの時点から3DCGがメインという前提でストーリーを組み立てていました。同じ形状の部屋が連続する『九十九』の舞台設定も、一部屋作ってしまえばあとは襖の柄などを変えるだけで他の部屋も作れてしまうという3DCGに適したものだろうと。

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― なるほど。ところで森田監督は、『SHORT PEACE』の中ではこの『九十九』のほかに、大友克洋さんのマンガ原作をカトキハジメさんが監督した『武器よさらば』へも演出として参加されています。
こちらも3DCGを基調とした作品ではありますが、作画アニメ的な魅力も大々的に導入した、『九十九』とはまた一味違ったコンセプトで彩られた作品と思います。こだわられた点というと、どういった部分になるのでしょうか。

― 森田 
基本的には、カトキさんが初監督作とし3DCGに取り組まれるということで、スタッフの取りまとめや、監督のビジュアルイメージを3DCGで実現するためのお手伝いをメインにやっていました。

なので僕のこだわりというよりはカトキ監督のこだわりでもあるのですが、一つには『武器よさらば』では3DCGならではの演出やカメラワークを多用しています。
例えば600ミリの超望遠レンズを通したカットなんて作画ではなかなか描けない。ところが3DCGなら、ソフトをいじってレンズの設定を600ミリにするだけで簡単に作れてしまうわけですよ。
もちろん映像として見るに耐えるものにするにはそこから細かい調整を加える必要がありますが、やはり元になる3DCGによるガイドがあったからこそ作れた絵ではある。

― また森田監督の関わられた2作が3DCGの魅力を前面に出したものであった他方で、大友監督の『火要慎』は手描きの魅力にこだわった作品となっていました。そうした『SHORT PEACE』全体における作風のバランスなども意識されて臨まれていたのでしょうか。

― 森田 
大友さんの『火要鎮』は、意識するというよりは開き直らせてくれる作品でしたね(笑)。『SHORT PEACE』の全体像について、事前のバランス調整などは特に行っておらず各々が好きに取り組んだだけなのですが、『火要鎮』の絵コンテは早い段階で偶然目にする機会があって……。
コンテを見ただけでクオリティに圧倒されて、一緒に上映される作品だからと変に張り合うことはせずに、自分は自分のやれる3DCGの道を突き進もうと心に決めました(笑)。

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