「ドラゴンボール」ピッコロはなぜ魅力的? 大魔王から“理解ある保護者”へとダイナミックな変化 | アニメ!アニメ!

「ドラゴンボール」ピッコロはなぜ魅力的? 大魔王から“理解ある保護者”へとダイナミックな変化

敵キャラにスポットを当てる「敵キャラ列伝 ~彼らの美学はどこにある?」第24弾は、『ドラゴンボール』よりピッコロの魅力に迫ります。

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『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』場面写真(C)バード・スタジオ/集英社 (C)「2022ドラゴンボール超」製作委員会
  • 『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』場面写真(C)バード・スタジオ/集英社 (C)「2022ドラゴンボール超」製作委員会
  • 『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』 ビジュアル(C)バード・スタジオ/集英社(C)「2022 ドラゴンボール超」製作委員会
  • 『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』場面写真(C)バード・スタジオ/集英社 (C)「2022ドラゴンボール超」製作委員会
  • 『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』鳥山明コメント オレンジピッコロ(C)バード・スタジオ/集英社(C)「2022 ドラゴンボール超」製作委員会
  • 『ドラゴンボール』「最終決戦!ピッコロVS悟空厳選」(C)バードスタジオ/集英社・東映アニメーション
    アニメやマンガ作品において、キャラクター人気や話題は、主人公サイドやヒーローに偏りがち。でも、「光」が明るく輝いて見えるのは「影」の存在があってこそ。
    敵キャラにスポットを当てる「敵キャラ列伝 ~彼らの美学はどこにある?」第24弾は、『ドラゴンボール』よりピッコロの魅力に迫ります。

「昨日の敵は今日の友」な展開は熱い。

『ドラゴンボール』が面白い理由の一つは、この展開の連続だからだと筆者は思う。「またそのパターンか」と言われる時もあっただろうが、それでも熱いものは熱い。

主人公、孫悟空の好敵手は数多く登場したが、中でも強い印象を残したのはベジータ、そしてピッコロだろう。ピッコロ大魔王として世界征服の野望を掲げて悟空たちに立ちはだかり、生まれ変わりの息子もまた悟空と激しい戦いを繰り広げた。

ベジータは共闘する間柄になっても常に悟空のライバルであり続けたが、ピッコロはベジータとは異なるポジションを確保した。敵役キャラクターとして、ピッコロは非常にユニークな変遷を辿り、だからこそ、独特の魅力的なキャラクターへと成長したのではないだろうか。

『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』 ビジュアル(C)バード・スタジオ/集英社(C)「2022 ドラゴンボール超」製作委員会

■主人公を初めて殺したピッコロ


ピッコロがまだ「大魔王」だった時は、大変恐ろしいキャラクターだった。

天下一武道会が終わった直後にクリリンが殺される急展開で、異形の魔族の頭領として登場したピッコロは、最強最悪の敵として悟空の前に立ちはだかった。クリリンから亀仙人まで重要なキャラクターが死ぬ展開でのボスキャラクターだったこともあり、強烈なインパクトを残した。その振舞いは、まさに悪の権化と呼ぶにふさわしかった。

しかし、初代ピッコロ大魔王が死の直前に産み落とした二代目は、異なる成長を遂げた。悟空にたった一人で戦いを挑みに天下一武道会に乗り込み正々堂々と戦ってみせた。かつてピッコロと一心同体だった神様は、二代目ピッコロについて、「以前のような粗暴さが失せている」と評したこともある。


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そんなピッコロが悟空と共闘するきっかけになったのが、新たな脅威サイヤ人の襲来だ。最初に襲来したサイヤ人、悟空の兄ラディッツは、世界征服を目論むピッコロにとっても邪魔な存在だったため、「敵の敵は味方」の論理で一時的に共闘することになった。

ラディッツ戦でのピッコロは主人公以上の活躍を見せる。何しろ格上の相手を一撃でしとめる必殺技「魔貫光殺砲」を披露し、ラディッツだけでなく同時に孫悟空まで殺してみせたのだから。この主人公の死という、ショッキングな展開を導いたという点でもピッコロは特筆すべき存在だ。ベジータですら悟空を殺したことはないのだ。

■悟空以上に悟飯を理解しているピッコロ


その後のピッコロはどんどん強い敵が現れる中で、なし崩し的に仲間になっていったようなところがあるが、ただの仲間ではない、非常に重要な立ち位置となっていく。

それは悟空の息子、孫悟飯との関係があるからだ。ラディッツ戦後、ベジータたちの地球襲来に備えるために高い潜在能力を持つ悟飯を鍛えるために、一年間共に過ごした体験がピッコロのその後のキャラクターを決定づけたと言える。


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ナッパの攻撃から悟飯をかばったシーンは、作中屈指の名シーンだろう。「まともに接してくれたのはお前だけだった」と悟飯と涙を流すピッコロは、かつての大魔王とは異なるのだと強い印象を与えた。セル戦では、実の父の悟空に対して、悟飯の気持ちを説いてみせる。父親以上に理解ある保護者として振舞うのだ。

ピッコロはなぜ変わっていったのか。作中で多くは語られないが、匂わせるようなヒントはいくつかある。最初に悟飯を修行のためにさらった時、彼は「恨むならてめえの運命を恨むんだな、俺のように」と言っている。彼は生まれながらにして、初代ピッコロ大魔王の目的、世界征服と悟空への復讐を与えられた存在だ。その運命ゆえに、地球でだれとも心を通わせることがなかったのだろう。

元々、「ピッコロ」とは、ナメック星の言葉で「違う世界」という意味だが、わざわざ「違う世界の大魔王」を名乗っていたことは、地球には自分の居場所はないと感じていたからかもしれない。

そんなピッコロも、最新作『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』では、悟飯のみならず、その娘パンの面倒を見ているなど、孫一家から頼られっぱなしの存在になっている。大魔王の時代からは考えられないほど、面倒見の良いおじさんのような立場になっており、「昨日の敵は今日の友」どころか家族の一員のようである。

ピッコロというキャラクターには、「共闘から仲間へ」という、敵役を用いた物語展開の醍醐味が詰まっている。殴り合った相手ともいつか分かり合えるというのは、素晴らしい希望ではないだろうか。

(C)バード・スタジオ/集英社(C)「2022 ドラゴンボール超」製作委員会
(C)バードスタジオ/集英社・東映アニメーション

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《杉本穂高》
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