「名探偵コナン」の黒ずくめの組織・ジンはなぜ失敗続きでも威厳が失われないのか | アニメ!アニメ!

「名探偵コナン」の黒ずくめの組織・ジンはなぜ失敗続きでも威厳が失われないのか

敵キャラにスポットを当てる「敵キャラ列伝 ~彼らの美学はどこにある?」第34弾は、『名探偵コナン』よりジンの魅力に迫ります。

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『名探偵コナン 黒鉄の魚影(くろがねのサブマリン)』場面写真(C)2023 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
  • 『名探偵コナン 黒鉄の魚影(くろがねのサブマリン)』場面写真(C)2023 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
  • 『名探偵コナン 黒鉄の魚影(くろがねのサブマリン)』場面写真(C)2023 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
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  • 『名探偵コナン 黒鉄の魚影(くろがねのサブマリン)』場面写真(C)2023 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
  • 『名探偵コナン 黒鉄の魚影』(C)2023 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
  • 『漆黒の追跡者(チェイサー)』場面写(C)2009 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
  • 『名探偵コナン』第1078話「黒ずくめの謀略(上陸)」先行カット(C)青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 1996
    アニメやマンガ作品において、キャラクター人気や話題は、主人公サイドやヒーローに偏りがち。でも、「光」が明るく輝いて見えるのは「影」の存在があってこそ。
    敵キャラにスポットを当てる「敵キャラ列伝 ~彼らの美学はどこにある?」第34弾は、『名探偵コナン』よりジンの魅力に迫ります。

※以下の本文にて、本テーマの特性上、作品未視聴の方にとっては“ネタバレ”に触れる記述を含みます。読み進める際はご注意下さいませ。

物語の悪役になる条件として、「恐ろしさ」を感じさせるというのは重要だ。

色々な恐ろしさがあるが、「何を考えているのかわからない奴」というのはそれだけで怖い。物語の中でも、考えていることが読めないキャラクターは、「底知れない」怖さをもたらすことがある。

『名探偵コナン』シリーズの、正体も目的も不明の「黒ずくめの組織」に属するジンはまさに、何を考えているのかわからない男だ。しかし、わからないがゆえに魅力的な悪役としてあり続けてて視聴者の関心を惹きつけ続けている。それはひとえにジンの「わからなさ」を巧みに演出しているからだろう。

『名探偵コナン』第1078話「黒ずくめの謀略(上陸)」(C)青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 1996

■ジンの隠された身体

ジンはその肉体のほとんどをさらすことがない。彼は常にロングコートにハイネック、帽子を被り、長い髪が顔の一部を隠している。夏でも冬でもこの格好である。相棒のウォッカと行動をともにすることが多く、彼からは「ジンの兄貴」と呼ばれていて、先輩格なのだと推察されるが、詳しいことは何もわからない。だが、その風貌からして「得体の知れなさ」が漂い、何を考えているのかを探るのが難しい。

彼が何を目的として組織に所属しているのかは描かれていない。だから、なぜ組織のために行動しているのかわからない。組織に都合の悪い者をすぐに殺そうとする引き金の軽さが特徴のジンだが、そこまで人を殺すことにためらいがないほど、組織を大事に思っているということなのだろうか。その根本の動機が不明なので、得体が知れないのだ。

「疑わしきは罰する」その姿勢は、慎重さの表れとも言えるかもしれないが、大胆な作戦や破壊工作を企てることもあり、用心深いだけでなく豪胆さも併せ持っている。相反する要素を持っているのも、ジンの奥底を見えにくくしている。相棒のウォッカも組織にいる動機は描かれたことはないが、性格がわかりやすいためにジンのような「底知れない」印象はない。ジンのつかみどころのなさは、シリーズ第一話から登場し、最も長く作品に登場しているにもかかわらず、組織の他のメンバーの中でも突出している。

『漆黒の追跡者(チェイサー)』(C)2009 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

■敗れ続けても損なわれない大物感

ジンは用心深いがゆえに、仲間に対しても腹の内を見せていないように思える。裏切者はあっさりと殺す決断をしていることから、仲間意識は希薄で組織への忠誠心がどこから来るのか、不明だ。何か大きな野望を秘めているのかと想像力を掻き立てられ、ひょっとしたらすごい大物なのではないかと思わされてしまう。あの絶妙な外見的特徴とあいまって、何もわからないのに深みを感じさせてしまうのがジンという悪役なのだ。

ジンの敵役としてすごい点は、何度コナンに出し抜かれても威厳のようなものは失われないという点だ。長期シリーズの常だが、主人公が敗北してしまうわけにはいかないので、対峙するキャラクターの目論見は潰える展開にせねばならない。何度も失敗が続くと、そのキャラクターは情けなくなってしまうことがある(例えば、『ルパン三世』の銭形警部のように)。
しかし、ジンは何度失敗しても情けないキャラクターに成り下がることがない。なぜか、失敗にも深謀遠慮があるのではと、観ているこちらが想像力を膨らませてしまう。彼の「何を考えているのかわからない」巧みな外見の雰囲気とそのキャラクター性がその展開を可能にしていると言える。

『名探偵コナン』第1079話「黒ずくめの謀略(正体)」(C)青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 1996

そんなジンは、殺しが絡むと不敵な笑みを浮かべることが多い。ヒットマンとしての本能なのか、殺しを楽しんでいるフシがある。組織の大幹部であることを匂わせているが、にもかかわらず前線に出張ってくることが多いのも現場で殺しを楽しむためだろうか。

最新作『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』では、潜水艦の爆破に同僚のピンガを巻き込んでいるがやはりいつもの不敵な笑みを浮かべていた。ピンガはジンを嫌っているようで、ジンもまた嫌っていたようだから邪魔者を始末できて一石二鳥といったところだったのだろうか。

組織内のライバルを蹴落とすことも辞さないということは、彼は組織の中で何か野望を持っているのだろうか。どこまでも底知れない男だから、巨大なプランがあるのかとつい邪推したくなる。そして、そうやってジンについて色々考えているといつの間にか彼の魅力に引き込まれてしまう。

何を考えているかわからないというのは、ミステリアスという魅力にもなり得る。その佇まいを崩さず、存在感が大きくなり続けているジンは、『名探偵コナン』にとって欠かせないピースだ。


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