そんな「隠れた名作」を、「TVアニメ編」「劇場アニメ編」に分けて5作品ずつ紹介。
そのうち今回は後編となる「劇場アニメ編」をお届けします。
有名作品だけでは飽き足らない、そんな貪欲なアナタにオススメいたします。何本知っているかチェックしてみてください。
>「TVアニメ編」はコチラ
【ヴイナス戦記】安彦良和の幻の名作が30年ぶりに脚光

『機動戦士ガンダム』の作画監督、『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』の原作・総監督として知られる安彦良和氏が原作・キャラクターデザイン・監督の3役を務めた1989年の劇場アニメ。
氷の惑星と衝突したことで人類が移住できるようになった金星が舞台。人々が土地を奪い合あって争いが絶えない世界で、金星生まれのアウトローな若者たちが戦争に巻き込まれてゆく様を描いています。
今観ても一級品と言える高密度な作画、クールな世界観で公開当時コアなファンを魅了しましたが、興行成績は振るわず、本作を最後に安彦氏は『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』で復帰するまでアニメ業界から退くことになりました。
しかし、熱心なファンの後押しもあり公開から30年を経てブルーレイ化され再び注目を集めることになりました。
参加スタッフも豪華。脚本は『モーレツ宇宙海賊』の笹本祐一、美術監督は小林七郎、音楽は久石譲が務めています。
【老人Z】大友克洋&江口寿史がおくる社会派SFコメディ

大友克洋が原作・脚本・メカニックデザインした、北久保弘之監督の1991年の劇場アニメ。高齢化社会における介護問題をテーマにしたSFコメディで、キャラクター原案をマンガ家の江口寿史が務めたことでも話題になった作品です。
寝たきり老人の介護ロボットが暴走し、街を混乱に陥れるストーリーで、ギャグ調な描写が多めながらも、独居老人の介護問題や、テクノロジーを過度に信頼しすぎることの問題点などを描く社会派な作品でもあります。
沖浦啓之、今敏、井上俊之、森田宏幸、鶴巻和哉、本田雄、神山健治など、錚々たるメンバーがスタッフに参加していることでも重要な作品と言えるでしょう。
【アイアン・ジャイアント】少年の鉄の巨人の熱い友情

『Mr.インクレディブル』で知られるブラッド・バード監督の長編デビュー作で、米国でも日本でも興行的には振るわなかったものの、アニー賞9部門を受賞するなど批評家から絶賛された2000年の作品です。
大きな鉄の巨人「アイアン・ジャイアント」と少年の心温まる友情と、鉄の巨人を恐れる大人たちとの攻防を描いています。
鉄の巨人は遠い星で作られた殺戮兵器なのですが、少年との交流を通じてスーパーヒーローに憧れ、兵器ではなくヒーローとして街を救おうとします。
どんな運命を持って生まれたとしても、なりたい自分になることが大切なんだと訴えかける感動的な作品です。
鉄の巨人は、スティーブン・スピルバーグ監督のSF映画『レディ・プレイヤー1』にも登場し、ファンを喜ばせたのも記憶に新しいです。
【バンパイアハンターD】前編で英語のゴシックファンタジー

菊地秀行の『吸血鬼ハンターD』を原作にしたゴシックファンタジー。原作の挿絵イラストを担当した天野喜孝がキャラクター原案を務め、川尻善昭が監督・脚本・絵コンテの3役を担当しています。
日米合作作品で、台詞は前編映画で作られており、2000年にアメリカで先行公開され、日本以上にアメリカで高い評価を獲得した作品です。
『ファイナルファンタジー』シリーズで知られる天野喜孝の絵柄をそのまま動かしたかのような華麗な作画、緻密で美しい美術など映像的な見どころが盛りだくさん。
吸血鬼と人間の混血である主人公Dの孤独と誇り、相対する吸血鬼マイエルと人間のシャーロットとの悲恋などストーリーも抜群に魅力的で、原作が持つ耽美さを見事に再現しています。
【アシュラ】ジョージ秋山最大の問題作を映像化

『銭ゲバ』や『浮浪雲』で知られ、先日惜しくも亡くなったマンガ界の鬼才、ジョージ秋山最大の問題作と言われた作品を2012年にアニメ化。
人肉を食らう描写などで連載当時、『週刊少年マガジン』が有害図書指定されるなど社会を騒然とさせた作品です。
その過激な描写で映像化不可能と言われていた作品に『TIGER & BUNNY』のさとうけいいち監督が挑み、文化庁メディア芸術祭優秀賞やモントリオールのファンタジア映画祭では観客賞を受賞するなど、国内外で高い評価を得た作品です。
水彩画をCGで動かす斬新な手法に挑戦し、キャラクターはCG、背景は描き起こして新感覚の映像を作り上げています。
言葉をしゃべれない野生児アシュラを演じるのは、野沢雅子。一人の女性との交流を通じて人間らしさを身につけてゆきながらも、人々の醜い裏切りで苦悩するアシュラの姿に胸が引き裂かれるような思いを覚えます。
誰もが生きることに必死な時代を情け容赦なく描ききった意欲作です。