「ID-0」谷口悟朗監督×黒田洋介対談―「スクライド」から16年…黄金タッグがつくる、本当の意味での“SFアニメ” 2ページ目 | アニメ!アニメ!

「ID-0」谷口悟朗監督×黒田洋介対談―「スクライド」から16年…黄金タッグがつくる、本当の意味での“SFアニメ”

先頃、ついに大団円を迎えた『ID-0』。3DCG作品による骨太なSF作品は多くのファンを唸らせるものであったと評判が高く、2017年のアニメシーンを象徴する1本であったことは間違いない。

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■世界を視野に入れたキャラクター造形

――黒田さんに依頼されるまでに企画の骨子はどの程度できあがっていたのでしょうか?

谷口
黒田さんには製作委員会からのオーダーを一回まとめてもらったんですよ。たとえば「ロボットを出してほしい」といったことですね。そのラインで軌道に乗って作っていけるのかを検討しました。

黒田
最初のオーダーといえば、ロボットもの、ターゲット層は年齢高め、大人の鑑賞に堪えうる作品。それぐらいの条件が提示されたなかで、それを踏まえて何を作るのかを話し合っていきました。

――3DCGによる作品であることは当初から決まっていたのでしょうか?

谷口
最初は手法は決まっていませんでした。黒田さんに参加してもらったのは制作体制が3DCGになるということからでしたね。何かトラブルが起きたときに安心して相談できる脚本家がいると助かる、という意味もありましたから。それに世界コスプレサミットが付いているということは、日本だけでなく世界に向けた作品になるだろうという前提もありました。日本のマーケットを無視するわけではもちろんありませんが、そこを核にしたうえでいかに世界へ広げていけるのかがポイントになるだろうと考えていました。ロボットに関する精神を飛ばしたり憑依するといったことがらは私から黒田さんに伝えて、キャラクターについて書いてもらって、そのやり取りには必ず白土(晴一/本作ではリサーチャーとしてクレジット)さんが付いてくれました。

黒田
バンダイビジュアルの湯川(淳)チーフプロデューサーのジャッジも入りました。「もう少し若くしろ」とかね(笑)。

谷口
最初はもっとオッサンだらけで「女なんていらんのですよ」という意気込みだったんですが、「お前らいい加減にしろ」と(笑)。

黒田
そう言われると僕は極端な性格なので幼女を出してしまったりして……(笑)。「それは若すぎる」とまた怒られる。申し訳ない!


――チームものというジャンルはいつ決まったのでしょうか?

谷口
チームものにしようということは最初から考えていました。日本のお客さんに見てもらうためには、ピン(単独)のヒーローだと難しい部分もあるだろうと思ったんです。そこでイドというヒーロー像はありつつも、エスカベイト社の社員が活躍するチームものにしたんです。具体的には『特攻野郎Aチーム』だと話していましたね。

黒田
あと、『サンダーバード』もそうですね。そして3DCG作品ではモデリング数などの物理的なラインを考慮する必要があります。そうなるとストゥルティー号にカメラを置いて、そこでのドラマを主軸に展開させていくように作った方がいいというか、作らなくてはいけない。その間ぐらいの感覚でやるとなれば、ある程度のストーリーラインは決まっていきます。それにキャラクターの関係性もせっかく作ったのだから常に出しておきたい。よりよい形を考えていったら、自然と今の方向性にまとまっていきましたね。

――「アニメ! アニメ!」で過日行なわれた評論家らによる鼎談では「アウトロー・チームもの」の一種だという指摘がありました。【SFアニメで育った3人が語る「ID-0」の魅力 古典なモチーフのなかに新しさが光る現代的なスペースオペラ https://animeanime.jp/article/2017/05/31/34072.html

黒田
そう。いわば『ワイルド・スピード』ですよ。限りなく黒に近いグレーの人たちが活躍しますからね。

谷口
そういう作品は皆さんも好きですし、私も好きなんです。それに実写のドラマにはその手の作品が少なくなっていますよね。せっかく世界配信を視野に入れているのだから、あまり大人しい作りにはしたくなかったんです。

黒田
キャラクターの個性をハッキリさせたのは、世界配信という前提があったからです。どの国の人が見ても分かりやすくする必要がありました。イドは無口で、リックはお調子者と、ある程度の記号として置いていきました。

――アイデンティティを題材にしたヘビーな設定ですが、キャラクターが悩み続けるといったジメジメした展開にはならなかったですね。

谷口
そっち系で作るつもりはなかったですね。

黒田
ほかの作品に参加したときに「海外に売るのだったら能動的であれ」と言われたことがあります。受動的なキャラクターではダメなんですよ。敵に襲われて「戦うしかないのか……」と躊躇うのではなく、「いくぜ!」というアグレッシブさを出さなければいけない。

谷口
それは分かりますね。「ガンダム」シリーズの中で海外で理解されているのは『機動武闘伝Gガンダム』や『新機動戦記ガンダムW』とかで、どちらも戦いでは悩まないんですよ。私達も二人とも「そりゃ殴りにいくよね」というタイプですから(笑)。なので、登場人物が能動的であることに迷いはなかったです。

――ストーリーも冷たい熱さが感じられるエピソードが続いていきますが、第10話では熱さが爆発したように感じました。

谷口
(アダムス役の)子安(武人)さんが大暴走する回ですね(笑)。あそこまで子安さんのために溜めていましたからね。実は子安さんだけには全部の設定をあらかじめ説明していたので、何もかも分かっている状態で収録していました。周りの役者に相談することもできず、子安さん自身も悶々としていたんでしょうね(笑)。それが10話でようやく解放されるんです。

黒田
解放されすぎて声が裏返ってましたね(笑)。


――キャストによって設定を教えたり、教えなかったりするのはなぜでしょうか?

谷口
設定を知っていること前提の芝居をされてしまう危険があるからです。キャラクターが知らないことは役者さんも知らなくていい。もちろん時間をかければ、(設定を)知っていても知らない体で芝居はできますが、それでは時間を食ってしまう。テレビは時間との勝負です。冷たく聞こえてしまうかもしれませんが、我々としては声の素材が欲しいという側面もあるんです。そのベストな素材をどうすれば引き出せるかといったときに、要らない情報は邪魔になってしまう場合がある。だから言わないことが多いんですよ。子安さんに設定を教えたのはアダムスがすべてを知っている役柄だからです。

黒田
設定を教えていないと第2話の冒頭なんて何が何だか分からないですよ。「憎むべき記憶の残滓」って何だよと(笑)。

谷口
「俺はカッコつけて一体何を喋っているんだ」と役者さんが悩んでしまう(笑)。それは求めてませんので。
《日詰明嘉》
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