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「モブサイコ100」エンディング映像誕生秘話!佐藤美代の技法「ペイント・オン・グラス」

2016年7月より放送しているTVアニメ『モブサイコ100』。ED映像を手がけたアニメーション作家・佐藤美代にインタビューを行った。

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  • (C)ONE・小学館/「モブサイコ 100」製作委員会
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■1人のペイント・オン・グラスの作家が生まれるまで

――ここからはググッとさかのぼってうかがいたいのですが、佐藤さんがペイント・オン・グラスという技法に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか。

佐藤
名古屋芸術大学に通っていたときに友だちが教えてくれたPVがきっかけです。日本の映像チームのPVで、ペイント・オン・グラスと似た手法で作られていました。私はそれまで紙に描いた作画しかやったことがなかったので、それがどうやって作られているのか全然分からなくて、何度もくり返し見ました。すると「どうやらガラスに絵の具で塗ってる感じだな」と分かってきて。ちょうどその頃、知り合いのミュージシャンからPVを作って欲しいという話があったので、自分の部屋を暗室代わりにして、夜だけ撮影するという方法で作り始めました。

――どういう技法が分からないけど、とりあえず自分でやってみた、というのはすごいですね。

佐藤
そうですね(笑)。アクリル板を買ってみて、今も使ってる台の上に、家にあるビデオを下向きに設置してやってみました。

――その時使った画材は何だったのでしょうか。

佐藤
最初の作品から何作かは、油を多めに混ぜた油絵の具でした。でも油絵の具って3日くらい経つと乾いてしまうので使いにくいんです。そのときにちょうど、キャロライン・リーフというペイント・オン・グラスのアニメーション作家さんを知ったんですけど、彼は水彩絵の具にグリセリンを混ぜたものを使っていたんです。それを真似てみたら全然乾かないので、それからは水彩絵の具にグリセリンという組み合わせで描いています。油絵の具は臭いはちょっと苦手だったので助かりました。

――初めて作品を作り上げたときはどんな感触だったんですか?

佐藤
その時は絵コンテも描かずにやっていたので、技法というか、絵の具が変わっていく感じがおもしろくてただただ遊んでいたという感じです。完成映像を「初めて見た!」と言ってくれる人も多くて、うれしかったですね。

――それから少し時間を置いて、ペイント・オン・グラスを再び始めることになります。

佐藤
はい、大学を卒業して2年後に東京藝術大学大学院のアニメーション専攻に入ったのをきっかけにして。1年間で何か作品を作らなくてはいけなくて、だったら今までやってきたことをもうちょっと突き詰めたいと思ってペイント・オン・グラスで1本作りました。その後、修了制作の『きつね憑き』という作品でも同じ技法で作ったんですけど、結局この技法が自分に1番合ってたんだと思います。

――『きつね憑き』は近いところで言うと東京アニメアワードフェスティバル2016(TAAF2016)のコンペティション部門短編アニメーションで入選しているほか、海外の映画祭などにも出展されています。

佐藤
『きつね憑き』では砂絵も取り入れました。砂は手で描くことや画材が絵の具と似ているのですぐに取り組めたんです。いちばん好きな作家であるキャロライン・リーフは砂絵でも有名で、『カフカの変身』などを砂絵で作っているんです。同じ原作ものの『きつね憑き』を作る時には参考にさせてもらいました。日本ではペイント・オン・グラスも砂絵もやっている人は少ないので珍しがられますけど、海外にはたくさんいるんですよね。インディペンデントアニメーションではカナダのNFB(※カナダ国立映画制作庁)というところが有名で、ペイント・オン・グラスも砂絵も質の高いものが多く、大学院時代はよく見ていました。

――それだけペイント・オン・グラスという技法が佐藤さんを惹きつけているというのは、制作のペースや創造性に応えてくれるからなのでしょうか。

佐藤
いえ、逆ですね。何が生まれるか読めないんです。紙では描いた線画が当然そのまま現れますが、油絵の具だと絵の具そのものの変化や残像――前に描いていたものの消し残しだったり――というものが出てくる。そう制作過程が自分にとってはすごく大事で、すごく好き。砂遊びのような、画材の感覚を楽しみながら作れるというところがやっていておもしろいところですね。
《細川洋平》
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