連載第98回 アニメ・ゲーム・コミックの舞台化・2014年の総まとめ、2015年の動向 5ページ目 | アニメ!アニメ!

連載第98回 アニメ・ゲーム・コミックの舞台化・2014年の総まとめ、2015年の動向

[高浩美]"2.5次元”という言葉が一般化しはじめた=認知度のアップの2014年、そして2015年は大作、名作ラッシュ!

連載 高浩美のアニメ×ステージ/ミュージカル談義
注目記事
■ 2015年は大作、話題作の多い年、2.5次元ミュージカル、いよいよ世界マーケットに進出するか?

2015年の大作と言えば、ホリプロ制作の『デスノート THE MUSICAL』、劇団四季の『アラジン』そして松竹の『ONE PIECE』のスーパー歌舞伎化であろう。
『デスノート』はコミックからアニメ、実写、そして満を持してのミュージカル化である。コミック・アニメ発の映像化というのは近年ではコンテンツをヒットさせる最大のセオリーだ。『るろうに剣心』はその最たるパターンである。この『デスノート』もそのセオリー通りに実写化は大ヒット。そして、その先のライブエンターテインメント化、そして上演権ビジネスである。このパターンは『デスノート』が初めてではないだろうか。
作曲は世界的作曲家・ワイルドホーンを起用する。2014年に『カルメン』等を上演したが、ライトモチーフの使い方等は流石、一流。スタッフはBWと日本の混合チーム、夜神月役に浦井健治、柿澤勇人のダブルキャスト。L役は小池徹平。それ以外も豪華なキャスティングだ。
これが成功すれば、コミック~アニメ~実写~舞台~上演権ビジネス、といったコンテンツビジネスのひとつのモデルとして後に続く作品にとって大いに励みとなるだろう。世界中で『デスノート THE MUSICAL』の上演、もはや夢物語ではないのである。

『アラジン』はあの大ヒットアニメミュージカルが基で、2014年にBWで幕を開け、世界最速で日本上陸となる。日本、いやアジアのディズニーファン待望の舞台である。翻訳は『アナと雪の女王』の歌詞翻訳家 高橋知伽江が手掛ける。
現在、電通四季劇場[海]公演中のショー『FESTIVAL!』では公演に先駆けて『アラジン』の曲『フレンド・ライク・ミー』と『ホール・ニュー・ワールド』が聴ける。また劇団四季はドワンゴと事業提携したばかり。来年の『アラジン』、劇団四季の次なる一手に注目したい。

そして『ONE PIECE』の歌舞伎化である。これは歌舞伎の歴史においても画期的な出来事である。先代の市川猿之助が始めたのが『スーパー歌舞伎』。今はその精神を受け継いだ当代市川猿之助が『スーパー歌舞伎II』と銘打ち、彼ならではの感性でクリエイト、現代的で斬新なステージング、もう”なんでもあり”、エンターテインメントの真髄が詰まっている。しかもコミック・アニメ原作の歌舞伎、である。
歌舞伎初の試み、全く新しい”歌舞伎”、世界の『ONE PIECE』ファン注目の舞台であろう。これが興行的に成功を収めれば、伝統芸能×コミック・アニメ・ゲーム、というまさに”クールジャパン”的なライブエンターテインメント、世界中から観客を動員、こちらも夢物語ではない。

日本以外での公演、といえば2015年はまずミュージカル『美少女戦士セーラームーン』だ。日本人キャストで上海公演を行う。
そしてミュージカル『テニスの王子様』。フレッシュな3rdシーズンのキャストで公演。それからこれも世界的に人気を博している『NARUTO-ナルト-』もある。共通していることはタイトルが世界的に浸透していることだ。『美少女戦士セーラームーン』は現在、ニコニコで世界最速で視聴出来る。『テニスの王子様』は2008年に中国で実写ドラマ化されている。『NARUTO-ナルト-』は現在映画が公開中、連載は2014年に終了、全700話の長編。累計発行部数は1億3000万部(2014年9月現在)の超人気作。この興行の動向に注目したい。

シリーズ化されている作品は相変わらず根強い人気がある。ミュージカル『忍たま乱太郎』、ミュージカル『薄桜鬼』、舞台『弱虫ペダル』等はチケット入手が困難だ。もちろん”王者”は、ミュージカル『テニスの王子様』、2015年で12年目に突入、2月から3rdシーズンが始まる。
好評により再演の『心霊探偵八雲 』今回も先に単行本『心霊探偵八雲 祈りの柩』があり、その舞台化となる。1月の『鬼切丸』も再演、こういった再演ものは興行成績次第ではシリーズ化の可能性もある。

また話題作の舞台化も数多く発表されている。1月の『プルートゥ PLUTO』、ミュージカル『SAMURAI 7』、『ヴァンパイア 騎士 (ナイト)』、2月の『ハートの国のアリス』、『曇天に笑う』等があげられる。
『プルートゥ PLUTO』は主演は森山未來、演出はシディ・ラルビ・シェルカウイ。どんな”化学反応”が起こるのか、発表から話題騒然の作品である。
ミュージカル『SAMURAI 7』は先頃、公開舞台稽古があったが、上島雪夫と佐橋俊彦の強力コンビが手掛け、主演が別所哲也とくれば、もう”正統派”な予感がする。『ヴァンパイア 騎士 (ナイト)』はキャスト全員が女性、思い切ったキャスティングだが、これでどんな世界を舞台で繰り広げられるのか、注目度は高い。

『ハートの国のアリス』、原作はゲーム。ここ2年ぐらいの間に定着したマルチストーリー、異なるエンディング。アニメ・ゲーム・コミックの舞台化では優れた手腕を発揮する吉谷光太郎である。この作品もどんな演出になるのか期待したい。
『曇天に笑う』は先頃、アニメが終了したばかり。チケットは完売という人気ぶり。”あのシーンはどう表現するのだろうか”といった興味が尽きない話題作だ。3月の詠舞台『蟲師』、単なる朗読劇ではなく、考えられるありとあらゆる手段を使ってライブ化する、というものだ。かなりの意欲作品になるであろう。
『神様はじめました THE MUSICAL』はアニメ『神様はじめました』が2015年1月から第2期が放映開始。コミックは累計400万部を誇る大人気コミック、原作は鈴木ジュリエッタ、初の舞台化、しかもミュージカルである。年明けからビジュアルが順次、発表になるそうである。
2014年、ファンから惜しまれてシリーズを終了した舞台『銀河英雄伝説』が特別公演という形で6月に公演が決定。ヤン役の河村隆一が呼びかけ、実現する。出演俳優にとっても思い入れのある作品、宇宙を舞台空間で表現、映像の使い方も効果的。こちらも楽しみな作品である。

2014年末にこれだけの話題作・大作が発表になっている。年明けから、順次、新しい作品が続々と発表されるであろう。恐らく、制作本数も昨年を上回るであろう。
しかし、だからと言って手放しで喜んでもいられない。演出家などのクリエイターや俳優の育成、老朽化した劇場の閉鎖等、長い目で見れば問題点も多い。2015年は大きく飛躍出来る年でもあるが、正念場の年になるかもしれない。

なお、2015年1月公演の作品、6タイトルからアニメ!アニメ!にメッセージをいただいた。
(コメントは次ページ)
《高浩美》
【注目の記事】[PR]

関連ニュース

特集