連載第98回 アニメ・ゲーム・コミックの舞台化・2014年の総まとめ、2015年の動向 3ページ目 | アニメ!アニメ!

連載第98回 アニメ・ゲーム・コミックの舞台化・2014年の総まとめ、2015年の動向

[高浩美]"2.5次元”という言葉が一般化しはじめた=認知度のアップの2014年、そして2015年は大作、名作ラッシュ!

連載 高浩美のアニメ×ステージ/ミュージカル談義
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■ 2014年下期

8月はミュージカル『美少女戦士セーラームーン』、9月にミュージカル『黒執事』があったが、この2作品、舞台版のオリジナルストーリーではなく、原作でも有名なエピソードを舞台化していた。
原作にあるエピソードの場合、ファンはストーリーをよく知っているし、とりわけ、海外にファンが多い作品なら同じ台本で海外にセールスしやすい、といったメリットがある。事実、ミュージカル『美少女戦士セーラームーン』は1月に上海公演が決定している。

また、コミックの舞台化では何度も上演されている『ガラスの仮面』があった。廻り舞台を多用し、スピード感溢れるステージ。演劇界の老舗・松竹が手掛けたが、ビジュアル的にもアーティスティックであった。ライトな舞台では『ハマトラ』である。オーディションを実施し、実際にキャストに選ばれたのは1人。応募総数も約800通と聞く。軽快な仕上がりの作品だった。
また、『AKB49~恋愛禁止条例~』、好きな女の子のためにAKBのオーディションを受験、まさかの合格、という”ありえない”ハプニングの物語だが、主人公の男の子を宮澤佐江が演じた。男性の役を女性が演じ、しかも”女子なりすまし”という虚構に虚構を重ねた仕掛けだ。その他、メンバー役は全てAKBグループからキャスティング。渋谷の劇場が”秋葉原の、あの劇場”になった瞬間であった。しかもAKBグループのヒット曲を使っているので、”リアルと虚構”が幾重にも重なるという構造。今までにない仕掛けで話題を呼んだ。

下期で熱い舞台と言えば『天元突破グレンラガン』と『ダンガンロンパ THE STAGE~希望の学園と絶望の高校生~』ではないだろうか。『天元突破グレンラガン』の演出はIZAM、『ダンガンロンパ THE STAGE~希望の学園と絶望の高校生~』の演出はNON STYLEの石田明である。両氏とも原作ファンで作品愛にみちたものだった。
石田は原作ではわかり得ない「映像に映っていないキャラクターの気持ち」を舞台版ではスクリーン映像を使って俳優の表情を見せ、作品世界を広げた。『半神』は日本を代表する演出家・野田秀樹の最高傑作である。野田らしいこだわりとサプライズがある演出、全員韓国人キャストであったが、皆、俳優として高い技術を持っており、最高の出来映えであった。

下期は手塚作品が2本、『虹のプレリュード』と『ルードウィッヒ・B』。共通しているのは物語に実在した音楽家が登場することと、虚構に歴史的事実を上手く取り込んでいるということだ。
『虹のプレリュード』はショパン、『ルードウィッヒ・B』はベートーベン、モーツァルト、ハイドンも登場する。共に世界中の人が知っている作曲家である。こういった作品は脚本・演出をより完成度の高いものにすれば海外に通用する可能性がある。
また、主演にいわゆるアイドルを起用、原作に興味がわくように工夫された脚本・演出は評価に値する。12月は『私のホストちゃん』第2弾で、観客の投票でホストのランキングが変わるというシステムは健在だ。ただただバカバカしいストーリーで気楽に笑えるエンターテインメント作品だ。
そして舞台『ペルソナ4 ジ・アルティメット イン マヨナカアリーナ』、演出の奥秀太郎は映像作家だが、舞台の演出にも長けており、ゲームの設定やキャラクターの面白さを出しつつ、きちんとした演劇になっていた。同じくゲーム・アニメの『幕末Rock』、こちらは吉谷光太郎の脚本・演出である。”超歌劇(ウルトラミュージカル)”と銘打ち、メリハリとパンチの効いた見せ方で飽きさせないステージを創っていた。

2014年は全体としてクオリティが高く、次に繋がる作品が多かったように思う。またハイテクの正反対の”ローテク”、「これは演劇です」と主張する作品も目立っていた。最新技術を駆使し、「これでもか」と押し切ると、芝居よりもそういった技術(映像等)ばかりが目立ってしまいがちになる。
原作がアニメやゲーム、コミックでも基本は演劇だ。その原点に立ち返った作品は評価に値するであろう。また、あえて作画と似せない、という舞台もあった。
見た目にこだわらず、スピリットを尊重、『ルードウィッヒ・B』は誰一人として作画と似ていなかったが、手塚が描きたかったテーマや世界観を見せることに成功している。『半神』はコミックの枠を超えてもはや”異次元”。しかし原作の持つ深淵なテーマをリスペクトし、世界に通用する作品を構築していたのが印象的であった。
《高浩美》
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