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水島精二監督×脚本・虚淵玄『楽園追放』インタビュー前編 「なぜ楽園なのか?を考えて欲しい」

水島精二監督×脚本・虚淵玄『楽園追放』インタビュー。話題作のスタッフに訊く。■ 新しさを求められていた『楽園追放』、その企画のはじまり ■ 『楽園追放』、そのタイトルの意味は?

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■ 『楽園追放』、そのタイトルの意味は?

―核心の話ですが、今回の話は肉体を捨てた人間と、それに非常に対照的なものがあります。そこに何かしらの今の社会に対するメッセージはあるのですか?

虚淵玄さん(以下虚淵)
多様化とかですね。多様化に対して寛容な人でありたいなって常々思っていますので。それを直に伝えられるのはSFだよな、と思っていました。だから、「何をもって人と呼ぶのか?」みたいなところは、寛容でありたいよねっていうぐらいの気持ちです。

―そこには社会に対する批判みたいなものは入っているのですか?

虚淵
批判するほど大層なものは考えていません。ただ、ネットの普及で人間は、多様化に寛容になるかと思っていたら、逆にみんな狭量になってない?みたいな、嫌な予感は日々感じるところはあったんです。
世界中の人間とオンデマンドでつながれるテクノロジーで、「これで地球が1つになるか」みたいな夢物語があった一方で、逆に狭い自意識が培われるのは、能天気な意識でインターネットを迎えたぼくらの世代からすると、むしろ何か悲しいカウンターだったんです。話が合ったら相手が何でもいいじゃないとか、人間かどうか怪しいぐらいの相手でも、会話が成立するんだったら友達になれるんじゃない?という気持ちは、チラっと乗ったのかな?って気はします。

―映画のタイトルに出てしまうとそのまま受け入れてしまいますが、そもそも『楽園追放』のタイトルも意味深です。これはどのように生まれて、どういった意味を持つのですか?

虚淵
サブタイトルのつもりでした。絶対変わると思っていたら、実際には「じゃあそれで」って言われて。「えー!?」ぐらいの気分です。

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水島精二監督(以下水島)
アンジェラが住んでいたディーヴァ側の社会も、約束された安全が必ず存在する世界なので、ある意味は世界としてのあり方としては間違ってないなと思ったんです。これをどう演出でまとめていくか。
そのときに、じゃあ『楽園追放』のタイトルでは、やっぱり楽園はディーヴァじゃない?と投げかけられる。このままのタイトルにすると、カウンターになるんじゃないかと思って「これ、いいんじゃない」と考えました。だから最後まで、ディーヴァと地上のどちらか楽園なのか?はすごく気になるところです。虚淵さんともその話をしました。脚本の選択を活かしつつ、タイトルにかかる意味を考えたときに、『楽園追放』がものすごくいいなって途中で気づいて、「虚淵さん、タイトルどうする?『楽園追放』でいいと思うんだよね」って。
タイトルは「楽園」って言っているけれど、ディーヴァ側がなぜ楽園なのか?と、つくり手がタイトルに込めた意味も考えてもらえるといいですね。

-SFだとかメカ、美少女とかいった深夜アニメぽい要素を沢山入れつつ、でもそこでそんなに引っ張らなかったのですが、そのバランスはどう考えられたのですか?

水島
ストーリーが決まっていて、ストレートな話になると分かった中で、じゃあどうやってキャッチーさを出すか?という部分で、女の子がかわいい方がいいと最初から言っていました。アンジェラは物語上では二十代後半っていう設定だけど、実際は30才や40才ぐらいの知識を持っているわけです。それが16歳の肉体で現れたことを考えると、たぶん、それは彼女の中で考える16歳の理想的みたいなものです。
そういうのも表す時に、一番エロティックな絵を描いてもらって、それに対して虚淵さんの方からは「もっとハイレグ」みたいな話になりました。
脚本を書いているかたがそう考えるんだったら、「もっと胸とか大きくしよう」「もっと明るくしよう」とこちらから提案していきました。ディンゴも「完全なる二枚目じゃない」って、ああいうデザインの方にどんどん傾いていきました。物語と絵のバランスは最初からああした落としどころを模索して、詰めていった感じですね。

虚淵
そうした意味では揉めない現場でしたよね。

水島
最初からみんなブレずに意見を言っていましたから。

虚淵
初期の本読みで言われましたよね「(虚淵さんが)こんなに面倒くさくない人とは思わなかった」って。そうか、そんな俺は面倒くさそうな人だと思われてたんだな、って(笑)

水島
意外と、虚淵さんは面倒くさいって思われているところあるよね(笑)

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―現場は和気あいあいといった感じだったとのことですが、逆にその前の段階、脚本を書くときの苦労はあったのですか? 

虚淵
尺については最初は70分との話でしたが、2時間ぐらいになってしまい、それなら2本立てにする?って話もしました。けれども、盛り上がりどころが後ろに集中しているので、「2本立てにしてやると前編がちょっと成立しなくなるよ」なんて悩みはありましたね。

水島
最初はぼくの目算でも2時間超えるボリュームがありました。会話がすごく特徴的ですので、そこを切りたくなかったんです。「全部やりたい」と提案をしたんです。2本というのは本当に議題に乗っていました。
ただ「2本にするにはもう何かを足さないといけないんだけど、それによってテーマがブレるなら、これは逆に短くした方がいい」と逆に刈り込む方向になりました。構成の部分の手直しを2人で相談して、詰めていきました。

虚淵
あとは、じゃあ、どうたどり着こう?という相談だけでうまくいきましたよね。

/後編に続く

『楽園追放 - Expelled from Paradise -』
2014年11月15日(土)劇場上映開始
http://rakuen-tsuiho.com/

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