[聞き手:数土直志、取材・構成:細川洋平]
■ 氷川竜介(ひかわ・りゅうすけ)
1958年生まれ。兵庫県出身。アニメ・特撮研究家。明治大学大学院客員教授。主な著書に『フィルムとしてのガンダム』。
■ 藤津亮太(ふじつ・りょうた)
1968年生まれ。静岡県出身。アニメ評論家。主な著書に『「アニメ評論家」宣言』、『チャンネルはいつもアニメ ゼロ年代アニメ時評』などがある。
『ガンダム Gのレコンギスタ』
/ http://www.g-reco.net/
『∀ガンダム』
/http://www.turn-a-gundam.net/
■ 集大成であり、総決算を目指している
―最初にお話のあった『ブレンパワード』は、富野監督の中でターニングポイントな作品だったと思います。『G-レコ』にはそういった要素は感じますか?
―氷川竜介氏(以下氷川)
宮崎駿監督の『風立ちぬ』にも感じたことで失礼かもしれませんが、年齢的に遺言状に近い気迫を感じました。子どもに見せたいとか、50年後100年後を想定しているとか、おそらく集大成であり総決算を目指して、なおその先にあるものを見ようとしているからではないかと。
そもそもテレビシリーズとは消耗戦で、体力的に厳しいはずです。『ブレン』の時に、富野監督はすでに57~8歳。その時点でも周囲から驚かれたのに、さらに15年経っています。特に放送が始まると、複数の工程が併走して、制作現場は、スタンピード状態になりますから。映画なら締め切りは1回しかありませんが、テレビには26回ある。多いだけではなく、カッティング、アフレコ、ダビングとさらに細かく工程が分かれ、違う話数が入れ子になって、全部回さないといけない。
―藤津亮太氏(以下藤津)
それを思うと脚本が全部上がってるので、まだいいですよね。今までは走りながらさらに「お話を考える」も加わっていましたから。着地点が見えているのはぜんぜん違います。
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―集大成ということですが、富野総監督は『G-レコ』を作家的な部分だけではなく、ビジネス的にも大成功させたいと考えているのでしょうか。
―氷川
富野さんはいつでもビジネスのことを考えています。あえてロボットアニメにすること、あえてガンダムにしたこともその現れでしょう。
―藤津
クリエイターの歩幅の問題ですね。当てに行く人は半歩先を狙うけど、富野さんは歩幅が広いので、他の人にとっては半歩に見えない。
ただ、僕がインタビューに行ったときは、すごく『ワンピース』の話をしていて、富野さんは周囲のスタッフと『ワンピース』がなぜおもしろいかというのを相当ディスカッションしてるなと感じました。たぶん、世の中ではなぜコレが当たっているのかを考えています。
―氷川
自身の作品のカウンターにする目的も含めてですね。
―藤津
そうですね。なぞるというわけではなく、分析した結果を作品に活かすわけです。
―氷川
今回、「ロードムービー、旅ものにする」と語っていますね。もともと富野さんの作品は、ホワイトベースのように「グランドホテルがロードムービーする」というシステムが秀逸なんです。ゲストが来るときは大きな船がグランドホテルとして出迎えるし、それが動けばロードムービーになる。ドラマづくりに便利な構造をしています。
―藤津
ロボットモノの文脈で言うと「基地を飛ばす」になります。
―氷川
そうなんです。今回はまだ大きな船は登場していませんが……。
―藤津
これから海賊船が出てくるはずです。設定画がパンフレットの中にありますね。メカニカルデザインの山根(公利)さんがデザインされていますが、“ZZの旧ジオン艦”っぽいシルエットがいろいろ妄想させてくれます。
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