―藤津
それに対して『G-レコ』はシンプルな話になりそうですよね。「強い奴はカッコいい」(笑)といった、“お楽しみ”要素がすごく強く出そうですし。
―氷川
“お楽しみ”とはいえば、何かとにぎやかしに出てくるチアガールには驚きましたね。もう出てこないのかな?
―藤津
マニィは今後も出てくるみたいです。それに幼なじみのノレド(・ナグ)もくっついてくるので。今回のスタート時点での女性のメインキャラはラライヤ入れて4人ですね。昔は「誰が生き残る?」という感じだったわけですけど。
―氷川
モビルスーツのパイロットだと、それが問題になりますね。
―藤津
富野監督なので、いっぱい死んじゃうのかな、と心配するところはないでもないですよね(笑)。でも基本的には、少しプレ・ガンダムくらいおおらかに、「人が死んで確かに悲しいんだけど、そこは無理に表現で掘り下げない」という感じになるのかな、という気はしてるんですよね。
―第3話まで、すでにキャラクターの死がリアルに描かれています。
―藤津
「この先もそれなりに人は死にます、映像上・展開上ではカットしてるけど、ある種の葛藤はこの世界にありますよ」という実例をシリーズの最初で出したのかな、と思いました。
―氷川
カートゥーンみたいに高いところから落ちて平気なアニメも多々あるので、早い時期にああいった描写をいれないと、「人の死なない世界かな」と思いこむ人が出るものなんです。死のある世界だからこそ、しっかり生き延びていこうとする人びとを描く。そういう宣言だと思います。

■ 希有な現代作家・富野由悠季
―最後にあらためて、おふたりが考える富野監督のすごさはどこにあるのか、を教えていただけますか。
―氷川
「人間って何だろう」というのは、何千年経っても答えの出てない根源的な問いかけです。それをアニメの中で考えぬいて模索している、希有な現代作家だと思います。人はわかり合えないかというと、協力もできるし、いっしょに奇跡的な行動も起こせる。いつも絶望と希望のさじ加減が、すごく巧みだと思うんです。
アニメは「記号」の積みかさねなので、一面的に描写をしがちです。明るくふるまうキャラは、内面も明るいことばかり考えているかと言えば、それは疑問ですよね。『G-レコ』は最初から多重多面多様的に作られているので、表裏がクルクル回転している点では期待以上ですね。情報が多すぎて食べきれない部分も含めて、全部乗せ感がある。「人と世界を描く」という点で、すごい作品になると期待しています。
―藤津
「所詮絵は『記号』だけど、じゃあどうやって組み合わせていったら生々しくなるのか、本物が浮かび上がるのか」の描き方の巧さは今まで同様、『G-レコ』にもすごく感じます。
作画のよし悪しを気にせず、例えば裸のシチュエーションを作るとか、ものを食わせるとか、トメでいいからポーズを独特にするとかをテンポよく組み合わせていくとカット毎にキャラクターが生きてきて、全体の作品が脈動する。富野さんの作品を見る度にそういう部分がおもしろいなあと思うんです。その上で、テーマが刺激的であれば尚いいんですけど、テーマは「元気のG」ですから、今回は元気を見せる技をたのしみたいなあという気持ちが強いですね。
―本日はありがとうございました。
『ガンダム Gのレコンギスタ』
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『∀ガンダム』
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