そうしたなかで富野ガンダムの系譜があらためて注目されている。そのひとつが15年前に富野監督が手がけた『∀ガンダム』だ。『G-レコ』のモビルスーツ「G-セルフ」のデザインを手がけた安田朗氏は、『∀ガンダム』のキャラクターデザイン原案にも参加している。
安田朗氏に、『G-レコ』に続けて『∀ガンダム』と作品を通じての富野由悠季監督との仕事についても伺った。
『ガンダム Gのレコンギスタ』
/http://www.g-reco.net
『∀ガンダム』
/ http://www.turn-a-gundam.net/
Blu-ray BoxI 2014年9月24日発売
■ 服を着たキャラクターをちゃんと描きたかった『∀ガンダム』
―安田さんがかかわったガンダム作品では、『∀ガンダム』も2014年にBlu‐ray Boxとして発売されます。富野ガンダムの系譜のなかでにも非常に重要な作品です。
当初『∀ガンダム』が発表された時に、ゲーム界のスーパースターである安田朗さんのキャラクターデザイン原案起用は、かなりファンに驚きを与えました。そもそもなぜ富野さんは安田さんをお誘いしたのですか?
安田朗さん(以下安田)
『機動戦士Vガンダム』が終わってから『ブレンパワード』まで、富野監督の作品づくりでは数年間空白時期があるのですが、その間に富野監督とゲーム業界が盛り上がっていたんです。富野監督がゲーム業界に打って出るぞみたいな気分もありつつ、それを踏まえて世の中を探ろうみたいな感じでした。
その時に僕が所属していたカプコンで、富野監督がカプコンのスタッフと話し合いたいという時があって、僕が立候補してミーティングに参加しました。僕が熱烈な富野信者であることが見抜かれたんだと思います(笑)。その時に「安田くんに何か仕事を頼みたい」と。ただそのときの話はメカニックだったんです。
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安田
メカニックをコンペでやろうという話でした。
―逆に「キャラクターでお願いします」と言われた時はどんな感じですか?
安田
ちょっと助かったな、と(笑)。メカは難しいですからね。しかもガンダムはメカの最高峰ですから。こんなブランドが高まったものに途中から参加するなんてという気持ちが当時はありました。
―そうしたなかで、キャラクターデザインの原案として大胆に自分の個性を出されました。素朴なイメージのキャラクターが出てきてファンを驚かせました。かなりチャレンジングだったと思います。
安田
僕的にはチャレンジングでしたね。それまでは格闘ゲームなどで、筋肉のあるキャラクターばかりを描いていましたから。でも、逆に言えば、筋肉で半裸の男ばかり描いていたので、服を着たキャラクターをちゃんと描きたかったんです。
『∀ガンダム』はファンタジーものじゃないですか。ファンタジーがすごく良いなと思って、さらっとした感じにならないかなと考えました。
―そのキャラクターをデザインされるなかで気をつけたことは、ありますか?
安田
気をつけたことは色々あります。まず富野監督の作品では『機動戦士Ζガンダム』以降、怒鳴り合いが増えていました。それがいいところではありますが、ギスギスしたセリフをもう少し柔らかいキャラでやれば、ギスギスが見えなくなるのではないかと思ったんです。
―同じドラマでもキャラクターを変えると少し印象が変わるみたいな感じでしょうか。
安田
僕はこのキャラクターで人殺しをやってほしかったんです(笑)。そしたら、『∀ガンダム』では全然人は死にませんでした(笑)。
―『∀ガンダム』は、そうした点でも富野監督作品のなかでもターニングポイントになっていますね。
安田
企画の途中まで残酷だったんですけどね。キエルは1話で死ぬはずでしたから。
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