セルアニメとフラッシュアニメのスタッフが一丸となり事業拡大を目指したレスプリの「キラキラきらり☆」【あにめのたね2022】 | アニメ!アニメ!

セルアニメとフラッシュアニメのスタッフが一丸となり事業拡大を目指したレスプリの「キラキラきらり☆」【あにめのたね2022】

今年度の受託先として選ばれた一社、株式会社レスプリは2016年に設立された会社で、これまで『タヌキとキツネ』、『カピバラさん』などのショートアニメを中心に手掛けてきた。どのような課題意識で本事業に取り組んだのか話を聞いた。

インタビュー
PR
注目記事
セルアニメとフラッシュアニメのスタッフが一丸となり事業拡大を目指したレスプリの「キラキラきらり☆」【あにめのたね2022】
  • セルアニメとフラッシュアニメのスタッフが一丸となり事業拡大を目指したレスプリの「キラキラきらり☆」【あにめのたね2022】
  • セルアニメとフラッシュアニメのスタッフが一丸となり事業拡大を目指したレスプリの「キラキラきらり☆」【あにめのたね2022】
  • セルアニメとフラッシュアニメのスタッフが一丸となり事業拡大を目指したレスプリの「キラキラきらり☆」【あにめのたね2022】
  • セルアニメとフラッシュアニメのスタッフが一丸となり事業拡大を目指したレスプリの「キラキラきらり☆」【あにめのたね2022】
  • セルアニメとフラッシュアニメのスタッフが一丸となり事業拡大を目指したレスプリの「キラキラきらり☆」【あにめのたね2022】
  • セルアニメとフラッシュアニメのスタッフが一丸となり事業拡大を目指したレスプリの「キラキラきらり☆」【あにめのたね2022】
  • セルアニメとフラッシュアニメのスタッフが一丸となり事業拡大を目指したレスプリの「キラキラきらり☆」【あにめのたね2022】
  • セルアニメとフラッシュアニメのスタッフが一丸となり事業拡大を目指したレスプリの「キラキラきらり☆」【あにめのたね2022】

日本のアニメーション産業を担う人材の育成発展を目的としたプロジェクト「文化庁 令和3年度アニメーション人材育成調査研究事業」、通称「あにめのたね2022」。

本プロジェクトは、2014年度より実施されてきた若手アニメーターの育成事業を、昨年度より拡大し、アニメーション制作の全ての工程に関わる人材の育成をめざして実施されている。

そのプロジェクトの1つ、「作品制作を通じた技術継承プログラム」ではて、制作受託先として選ばれた4社が短編アニメーションの制作を通じた実践的人材育成を実施している。

「あにめのたね2022」特集ページはこちら


今年度の受託先として選ばれた一社、株式会社レスプリは2016年に設立された会社で、これまで『タヌキとキツネ』、『カピバラさん』、『アイドルマスターシンデレラガールズ劇場』などのショートアニメを中心に手掛けてきた。どのような課題意識で本事業に取り組んだのか話を聞いた。

取材に参加してくれたのは、本事業で制作した『キラキラきらり☆』のプロデューサーで代表取締役の清水香梨子氏と監督で取締役の月見里智弘氏の2名。

フラッシュアニメとセルアニメ、両方のスタッフで一丸に取り組んだ


――レスプリさんは、普段はどういったタイプの作品を手掛けることが多いですか。

清水:弊社は、ギャザリングホールディングスの子会社として設立しました。ギャザリンググループは元々、サンリオさまの『ぐでたま』などかわいいキャラクターものの作品を手掛けることが多く、弊社もそういうタイプの作品に携わることが多いです。

ただ、弊社役員で今回監督を務めた月見里はセルアニメの出身なので、等身の高いキャラクターが登場するようなセルアニメの作品も並行して社内で手掛けており、会社としてはその2つの制作ラインを持っています。

――御社は、セルアニメのスタッフとフラッシュアニメーションのスタッフがいて、今まではそれぞれが異なる作品に携わっていたそうですね。例えば、『上野さんは不器用』などはセルで、可愛いキャラ系のショート作品はフラッシュで制作されているのでしょうか。

清水:基本的にはその通りです。ショートアニメでも『アイドルマスター』のスピンオフ『アイドルマスター シンデレラガールズ劇場』などはセルですが、『タヌキとキツネ』、『カピバラさん』などはフラッシュで制作しています。作品の方向性に合わせて、手法を選び、それぞれの強みを活かせるスタッフを配置して取り組んできていました。

――今回、あにめのたねに応募した動機はなんだったのでしょうか。

清水:そのような会社立ち上げの経緯から弊社はショートアニメに強いのですが、事業規模拡大を考えていたタイミングだったので、今後の組織作りと人材育成のために応募させていただきました。

――今回は、両方のスタッフを組織して1つの作品に取り組んだとのことですが、これは初めての試みですか。

清水:はい。セルとフラッシュどちらの手法も対応できるスタッフもいますが、会社全体で一丸となって作品作りに取り組むのは初めてでした。今までは同じ会社にいるのに、違う作品に携わっているスタッフ同士は、それぞれがどんな作業をしているのか実は良く分かっていなかったのではないかと思います。そして近年のコロナ禍以降さらに、スタッフにとっては会社全体を見通し辛くなってしまっていると感じていました。

――今回の事業で、育成という点で上手くいった点はどのような点になりますか。

清水:通常のシリーズ制作を通じたOJTではできないような、思い切った育成方法にチャレンジできました。例えば、新卒で入社した商業アニメに携わるのが初めてのスタッフ2名に、今作を通じていきなり原画行程までできるようになることを目標に挑戦してもらいました。この挑戦ができたのも、今回の事業のおかげで1.5ヶ月間もの期間をじっくり研修だけに充てられたこと、そして通常のシリーズ制作では確保が難しい十分な修正期間をしっかり設けられる余裕があったことが大きいです。

この事業を通じて会社の体制を考え直すことができ、新しいスタッフも迎えることができて、現在は30分のテレビシリーズの制作に初挑戦しています。狙いだった事業規模の拡大につながっています。

フラッシュアニメーションのメリット・デメリット


――『キラキラきらり☆』のコンセプトはどうやって決めたのでしょうか。

清水:監督の月見里とプロデューサーの私、それから今作でキャラクター原案とエンディングの絵コンテ・演出を担当した矢立、そして日頃から作品制作でご一緒している小説家の吉月生さんの4人で話し合いました。

アニメ業界の育成事業ということで、絵を描く主人公の成長劇にして、主人公の気持ちにスタッフが自然と寄り添えるものにしたいという思いがありました。そしてもちろん、スタッフみんなで取り組める手法で作れる内容という点です。10分という短さながらもしっかりと「1つの作品」にしたいと思っていました。

月見里:実は企画時にはもう一つアイデアがありました。そちらはシンプルに技術的育成だけに専念するものになりそうだったのですが、『キラキラきらり☆』はお話の内容としても、そしていろんなベクトルのセンスをミックスできそうというワクワク感がありました。自分としては、普段交わらないクリエイティブの人たちを上手くまとめることができるかという課題をもって取り組みました。

清水:セル作画とフラッシュ両方を使う作品にすることで、それぞれのスタッフが別の作業行程を見ることもできますし、セル作画のキャラのカットに魔法をかけるエフェクト等の特殊素材はフラッシュで作成するなど、1つのカットに手法を混在させることもできる企画でした。

――基本的な質問になりますが、フラッシュアニメーションは一般のセルアニメーションと比較して、どんなメリットがありますか。

清水:セルアニメはプロフェッショナルによる分業作業であることが優れている点だと思います。例えば原画担当は線画までを責任持って担当し、色を塗るのは仕上げ様になりますが、フラッシュは線画を描いて動画も描き色も塗れるので、1人で完結させられます。その分、スタッフ個人の能力に委ねることになります。それぞれに、メリットとデメリットがあると思います。

また、セルアニメの場合は撮影様が仕上げてくださるまで明確な完成形は見えませんが、フラッシュは作画スタッフが自分の手元で即時プレビューできるので、随時アウトプットをチェックしながら作業できます。

月見里:そのためフラッシュは、作画スタッフ自身がイメージしている通りのアウトプットになるまで自分で調整ができるので、クリエイターの感性や想いを最後まで持っていきやすい特徴があります。タイムライン上に絵を描けるソフトなので、直観的にその場で動きが作れるのがセルと違う魅力的な点だと思います。

――それは随分と違う世界ですね。今回、主にフラッシュで制作しているのはエンディングパートですか。

清水:そうですね。魔法のエフェクトといった劇中の特殊素材もフラッシュで作っています。

月見里:他には、更に撮影エフェクトとのミックス作業で、爆発で星が散らばるエフェクトもフラッシュでモーション作成しました。

――御社は元々、デジタル作画に強い会社だと思いますが、デジタル作画の課題はありますか。

清水:業界的に、ベテランで御上手な方はどうしてもアナログで作業される方に多い傾向があり、業界的にデジタルに移行が難しいという事情があると思います。

月見里:経験が豊富な方ほどスキルがありますから、業界の比重的にはそうなりますよね。

――ベテランはアナログ、若いスタッフはデジタルに慣れているという状態は、業界全体として技術の継承を難しくしている一因なのかなと思うんですが、その辺りは御社はどう対応されているのでしょうか。

清水:月見里や本作で作画監督を担当した大和田、そして演出の設楽も、元々はアナログ作画の出身です。今は主にデジタル作業できるようになっています。ただ、カットの内容によっては、アナログの方が作業しやすいものもあるようで、折々で判断して紙も使っています。

――本作は全てデジタル作画ですか。

清水:はい、今作はデジタル作画で全カット制作しました。

フィルムスコアリングに挑戦


――その他、ユニークな試みとして、音楽をフィルムスコアリング(※)で制作されています。これは今の日本のアニメではなかなかできないことです。月見里監督としては、フィルムスコアリングの手ごたえはいかがですか。

(※フィルムスコアリング:あらかじめ制作した音楽を選曲するのではなく、映像に合わせて音楽を作っていく手法)

月見里:絵で表現しきれなかった部分をフォローしていただいた部分も沢山ありましたし、キャラの心情変化の機微や展開の盛り上がりも想像以上に音楽の力にサポートしていただきました。

――もし、フィルムスコアリングを普段の商業作品でやるとすれば何をクリアすれば実現できるか、今回のトライでヒントは得られましたか。

清水:まさに今取り組んでいる作品でも音楽家さまとその話をしています。やはりお金と時間のハードルが高く悩ましいところです。

――音関連の試みではテーマ曲も作っています。育成事業作品でテーマ曲まで作るのは珍しいですね。

清水:やれることは全部やろうと思って臨みました。デジタルシングルもリリースできる時代なので、検討したいと思います。思い入れのある曲になったので、是非多くの方に聴いてほしいです。

――最後に、今後御社はどんな方向性をめざしていくのか展望をお聞かせください。

清水:事業規模拡大、とは言っても監督や私が全体を見渡せる範囲での組織作りをしていきたいと、今は考えています。監督の想いや熱量が行き渡る、信頼できるチームでクリエイティブに向き合っていきたいと思っています。

実は、6月に会社を移転することに決めました。設立から過ごしてきた横浜を離れ、スタジオを完全に中野に移します。

「キラキラきらり☆」は、横浜をイメージした海街で過ごす少女が広い世界に一歩踏み出すお話です。
このタイミングで、このメンバーで、この作品を作れたことの意味を感じています。
今回一丸になって取り組んだメンバーにとって、そして弊社レスプリにとって、原点のような作品にできたと思います。



「あにめのたね2022」特集ページはこちら
《杉本穂高》
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース