指導育成者の賃金体制を整えたい―高齢者が主人公の「ロックンおヨネ」を制作した老舗会社スタジオエルの育成の課題とは【あにめのたね2022】 | アニメ!アニメ!

指導育成者の賃金体制を整えたい―高齢者が主人公の「ロックンおヨネ」を制作した老舗会社スタジオエルの育成の課題とは【あにめのたね2022】

老人用シェアハウスを舞台にした短編作品『ロックンおヨネ』を制作。本作の制作を制作していく中で、どのような課題意識をもって育成事業に取り組んだのか話を聞いた。

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日本のアニメーション産業を担う人材の育成発展を目的としたプロジェクト「文化庁 令和3年度アニメーション人材育成調査研究事業」、通称「あにめのたね2022」。

本プロジェクトは、2014年度より実施されてきた若手アニメーターの育成事業を、昨年度より拡大し、アニメーション制作の全ての工程に関わる人材の育成をめざして実施されている。そのプロジェクトの1つ、「作品制作を通じた技術継承プログラム」では、制作受託先として選ばれた4社が短編アニメーションの制作を通じた実践的人材育成を実施している。

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今年度の受託先として選ばれた一社、有限会社スタジオエルは今年で設立61年目を迎える老舗スタジオだ。数多くの作品で制作協力してきた同社は2019年から元請け制作を開始したそうだ。今回、同社は老人用シェアハウスを舞台にした短編作品『ロックンおヨネ』を制作。本作の制作を制作していく中で、どのような課題意識をもって育成事業に取り組んだのか話を聞いた。

取材に参加してくれたのは、本事業のプロデューサー、釋迦郡卓氏、監督のしぎのあきら氏、制作デスクの金ダウン氏、設定制作・制作進行の西嶋真吾氏の4名。

技術継承の時間確保のために応募


――スタジオエルさんは、どのようなスタジオなのでしょうか。

釋迦郡:弊社は基本的に、美術と編集以外の制作工程を自社で備えているアニメ制作会社です。制作協力として制作に加わっている作品はたくさんありますが、2019年から元請けとしてテレビシリーズの制作元請けもするようになりました。

――今回、育成事業に応募された動機はなんだったのでしょうか。

釋迦郡:テレビシリーズの制作を行う中では、なかなか人材育成まで手が回らないので、ある程度時間を確保して育成に取り組む必要を感じていました。そんな時に、まさに時間をかけて育成に取りくめるプロジェクトであるあにめのたねの募集があり、応募しようと思ったんです。やはり、テレビシリーズの制作は納期厳守ですから、育成にかける時間をなかなか取りづらいんです。そこをもう一歩踏み込んで人材育成のためのクリエイターと時間を確保して指導してもらおうと思ったんです。

――あにめのたねに参加するにあたり、御社はどんな課題を持って取り組み、またどんな新しいことに挑戦したのでしょうか。

釋迦郡:新しい取り組みとしては、本プロジェクトの根幹である技術継承のためにテレビシリーズとは異なるワークフローを導入してみたり、作画指導アドバイザーを立てて全てのカットをチェックしてもらうなど試しています。

――普段の商業作品の制作で課題と感じていたのは、やはりスケジュールでしょうか。

釋迦郡:時間だけでなく、ほとんどの会社は今、原画を1枚いくら、1カットいくらの単価制度でやられていると思います。この場合、1枚に時間をかければかけるほど収入も減ってしまいますから、時間をかけてやればいいというものではないわけです。業界全体として、この課題に取り組む必要があると思っています。

――育成事業の目的の1つは技術継承ですが、普段の業務において技術継承の課題としては、緊密に教えるのは難しいので、見て覚えさせているのでしょうか。

釋迦郡:ベテランの方の時代は見て覚えていたと思いますが、今はなかなかそれも難しくて、指導者の方から歩み寄ってお互いにコミュニケーションをとりながら育成していく必要があります。

しぎの:かつては演出の人間も、会社に入って1つの長いシリーズをずっとやっていたので、いつもスタジオにいたんです。数人の演出でシリーズを回して、「あいつはこういうことをやってるのか、なら自分はこういうものを試そう」みたいな感じで、みんなでどんどん切磋琢磨して成長していけたんです。しかし、今はフリーのスタッフが多いですから、常にスタジオにいるということはなくて、そういうことが起きにくいんですよね。

30年前の幻の企画を実現


――今回制作された『ロックンおヨネ』についてもお聞きします。本作のコンセプトはどうやって決めたのですか。

しぎの:僕が30年くらい前に立てた企画を基にしています。当時は魔法少女ものでした。おばあさんが魔法で変身して17歳になってバンド活動するという内容だったんですが、当時は、「なんでおばあさんなの?」と反対されて企画が通りませんでした。アニメ化してみたい気持ちはずっとあったんですが、時代が変わって映画などでも似たようなアイデアの作品が出てきましたよね。それを真似していると思われるのも嫌だったので、魔法少女要素は外して、高齢者の生活を描く方向に変えました。

――作中では、バンド演奏をしている登場人物が若返って見えるシーンもありましたね。

しぎの:そこは元の企画の名残りですね。

――高齢者が主人公のアニメ企画は珍しいです。しかし、現代は高齢化社会なのでこういう企画もありになってきているかもしれません。

しぎの:企画を持って行った30年前は、テレビ局や代理店は嫌がりました。僕が絵を描いて漫画にしようと出版社に持って行ったこともあるんですが、やはりどうしておばあさんでなければいけないのかと言われ、結局駄目だったんです。今後はアニメファンも高齢化していくだろうし、見てくれる人もいるかもしれないですね。

――10分程度の作品ですが、制作期間はどの程度あったのですか。

釋迦郡:作画に入ったのが10月くらいで2月に完成していますから、作画期間は大体4か月ほどです。テレビシリーズは基本的に20分程度の作品を作るために3か月から5カ月ほどかかりますから、普段と比べればかなり余裕のあるスケジュールです。

育成指導者の賃金体制を整えていきたい


――作画の育成に関して、新人アニメーターの育成のために中堅アニメーターからの指導と、作画指導アドバイザーと作画監督による各カットのチェックを行う体制だったとのことですが、指導側が複数いることの難しさはありましたか。

釋迦郡:そうですね。教える側が2人いることでダブスタというか、どっちが正しいのかとなる瞬間があって、そういう時は中堅アニメーターさんより、作画指導アドバイザーの言う方を優先するという風に一本化しました。基礎中の基礎は中堅アニメーターとの一対一で指導を行い、より深い技術的な面は作画指導アドバイザーに見てもらいました。

――一対一での作画指導も行っているとのことですが、そういう時間は普段の業務ではやはりなかなか取れないものですか。

釋迦郡:スタジオによってはそうやって教えてるところもあるでしょうし、弊社もテレビシリーズの仕事の中で一対一の指導をやってはいるのですが、やはりかけられる時間は限られてしまいます。どうしてもスケジュールに追われての作業になりますから、今回はより厚みを持って指導できたんじゃないかと思います。

――御社として、今回の育成事業でどんな収穫や課題を発見しましたか。

金:今のアニメ制作は上の工程、監督や作画監督のセクションでかなり時間を使ってしまい、後ろの工程である動画と仕上げでどうしても時間が足りなくなりがちです。それだけに動画と仕上げを国内でできず、海外にお願いすることが多くなっているのですが、それだと人が育ちにくいので本当は良くないですが、やはり納期には逆らえません。でも、今回の育成事業ではそこにも時間を使えて、社内でほとんどの動画と仕上げもできたのは良かったですね。

――今回参加された若手スタッフの方たちは、今回の事業参加について、どんな意見や感想を述べていましたか

西嶋:特に具体的な感想のようなものは聞いていませんが、スケジュールを組んだ段階でどのタイミングで動画作業になるかとか、どのタイミングで作監を置いて指導してもらえるかとか、ちょっとしたズレは生じてしまうので、待っている時はどうしたらいいのかなど、そういう質問はもらっています。そういった細かいことなどは、やはり経験のある先輩アニメーターさんに質問してもらった方がいいと思うので、そういったことも指導していただけたのではと思います。

――しぎの監督の立場から、今後の課題は発見されたりしましたでしょうか。

しぎの:僕が若い頃に演出をはじめた時は、教えてくれる人はおらず、自分で何とかしないといけなかったので、僕自身一人ずつ教えていくことに不慣れでした。今回の演出助手のスタッフも初めて一緒にやる人だったので、どういう人かわからないところからのスタートでした。コロナの前ならお酒でも飲んで仲良くなったりするんでしょうが、今はなかなかそういうこともできないので、人を育てるというのは色々難しいなと思いました。

――今後、御社として改善すべき点や取り組んでいきたいことはありますか。

釋迦郡:弊社としては育成する側にもしっかりとした賃金体制を整えて、育成対象者の育成に時間をかけた分の補填などを本年度から導入する予定でいます。

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《杉本穂高》
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