『新劇場版「頭文字 D」Legend1 -覚醒-』 クリエイティブの秘密に迫る 松浦裕暁氏に訊く 3ページ目 | アニメ!アニメ!

『新劇場版「頭文字 D」Legend1 -覚醒-』 クリエイティブの秘密に迫る 松浦裕暁氏に訊く

『新劇場版「頭文字D」 Legend1 -覚醒-』が2014年8月23日に全国公開となる『劇場版 頭文字D』でCGクリエイティブプロデューサーを務める松浦裕暁氏(サンジゲン代表取締役)に、作品についてお話を伺った。

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―キャラクターについても教えてください。2Dパートはライデンフィルムさんが制作されているのだと思いますが、これまでよりさっぱりした今風に表現されたなと思いました。

松浦
前作がありますけれど、前作と同じでいいのか?というと、同じじゃよくない。僕たちは新しくしたいんだという思いもあります。でも前作と違う絵を作ることで原作とかけ離れるのはNGです。原作はすごく大切にしたい。キャラクターデザインはその条件で何人かにお願いして、選ばせていただきました。実は最初から明確な方針があったわけでなく、僕たちが目指す方向、目的に向かって歩み寄れるデザインを作っていただいた感じです。

―サンジゲンさんの制作した作品で言えば、前作の『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』では「可愛い女の子を可愛く描く」がポイントだったと思います。その前の『009 RE:CYBORG」の時は「セルルックをCGに落とせるか」ですが、今回の「頭文字 D」での挑戦を一言にすると何になりますか?

松浦
「新しい絵作り」ですね、漫画の延長上にある絵作りは何かという課題です。そのひとつの答えが「漫画アニメ」だろうと。
例えば「少年ジャンプ」を開くと、作家さんによってタッチが違います。絵のタッチ、その線の太さ、それを含めてタッチが違うわけじゃないですか。僕たちアニメ側は原作をもとにアニメを作ることが多いのですが、アニメになった瞬間に全部同じ絵なんです。線画に塗りです。勿論、僕たちもかかわった『放浪息子』の水彩画みたいな挑戦はあります。それでも一般的には線画に塗るから、あんまり変えられてないんですね。
僕たちはCGでやることで、そのコンピュータのテクノロジーを使ってもっと違った表現が、しかも誰でも同じようにできるというメリットがあります。ならばその挑戦をしたい。今回はアニメに見える形で漫画を表現しました。
「アルペジオ」とも違う絵作りができたなと思っています。これからさらにもっと違う表現ができると思います。工夫して、アイデアを出して、挑戦することで、僕たちは普通のアニメと違った絵作りもできるんだと証明する。これが今回、僕がやろうと思ったことです。

fd

―漫画をアニメにするという話ですが、今回の「頭文字 D」は非常に線の太い作品ですが、逆に同じ技術を応用して極端に絵が細い少女漫画とか、あるいはもっとラフに描いた漫画とか、そういったものにも応用は出来ますか。

松浦
もちろんです。3Dアニメーションのこれまでのトレンドは、輪郭線のない海外のCGアニメーションの方向性だったんです。僕たちは日本になじんだアニメにこだわることで、セルルックという一つの方向性を見出しました。
その見た目の違いもありますが、僕はやっぱり一番重要なのは動きだと思っているんです。滑らかな輪郭線のないキャラクターであれば、滑らかな動きがいい。だけど線画で作られる日本のアニメのテイストで絵を作るならば、やっぱりリミテッドアニメーションがいい。これが一番合っていると思っています。重要な点は、どんな絵作りにしても、アニメに見えなきゃいけない。そうでないとお客さんたちが、新しさや面白さを感じてくれません。
もっと線の細い少女漫画でも、僕たちがアニメーションを作るならば動きもセットで考えなければいけないと思います。微妙な違いはあると思っていますので、そこは今後も研究が必要です。今後もいろんな挑戦ができると思っています。

―最後に全体も含めて本作の見どころを一言いただけますか。

松浦
今回は映画60分ということで、原作とは一部、話を組み替えながらも、映画として成立するような形で組み立てています。トータルで見ると、ちょうどいいリズムで、テンポのいい作品に仕上がったなと思います。人間の感情表現もできているし、それがアクションにもつながっています。作画と3DCG、リアルとフィクションも含めて、それらが一体になった新しい作品として楽しんでもらえるとすごくいいなと思っています。

―本日はありがとうございました。  

fd
《animeanime》
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