萩尾望都の不朽の名作「トーマの心臓」が4年ぶりに舞台に蘇る! 2ページ目 | アニメ!アニメ!

萩尾望都の不朽の名作「トーマの心臓」が4年ぶりに舞台に蘇る!

高浩美のアニメ×ステージ&ミュージカル談義:劇団スタジオライフの十八番とも言える『トーマの心臓』4年ぶり7回目の公演となる。

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上・松本慎也、下・久保優二 原作=萩尾望都 小学館文庫 (C)萩尾望都
  • 上・松本慎也、下・久保優二 原作=萩尾望都 小学館文庫 (C)萩尾望都
  • 松本慎也 原作=萩尾望都 小学館文庫 (C)萩尾望都
  • 右・山本芳樹、左・及川健 原作=萩尾望都 小学館文庫 (C)萩尾望都
  • 左・山本芳樹、右・及川健 原作=萩尾望都 小学館文庫 (C)萩尾望都
  • 萩尾望都先生
■ 原作者が描いた作品がそのまま舞台上に浮かび上がる、トーマの存在感と愛が静かに迫る

物語はモノローグで始まる。それは有名な書き出し「ぼくはほぼ半年の間、ずっと考え続けていた……」ここを脇を固めるレドヴィ役・関戸博一がつとめるところがひねりが効いている。そして衝撃的な事件、トーマの死。散文的な表現、シンプルな舞台セット、過剰な演出をせずに見せる。それから舞台はシュロッターベッツ学院に移動する。

原作をリスペクトした台詞、抑えた照明でギムナジウムの閉ざされた世界の空気感を表現する。その中での少年たちのやり取り。一見、無邪気にも見えるシーンもあるが、微妙な間が少年期という“危うい季節”を観客に提示する。時折スクリーンに映し出される“日にち”、や“独白”そして教会音楽が作品世界に輪郭を与え、よりわかりやすくしている。ストレートプレイ、しかもひとつひとつの台詞に重みがある。
皆、悩みや闇、心の傷を抱えて生きる。それは思春期特有のものであったり、生い立ちによるものであったり様々であるが、それを内に秘めつつ、日常を送る。そして周囲の大人たちもまた、それぞれの事情を抱えて生きている。すでにこの世にいないトーマであるが、彼の存在感と愛は残された人々の中で生き、影響を与え、観客にも静かに迫る。原作者が描いた作品がそのまま舞台上に浮かび上がった感がある。

2幕もの、上演時間は約2時間45分近く、かなりの長丁場であるが、エピソードを大幅にはしょることなく、ひとつひとつじっくりと描いており、原作を知らない観客もコミックを読んでみようと思うはず。

■ 山本・ユーリスモール、及川・エーリク、岩崎・オスカーの3人が奏でる“三重奏”でカンパニーを牽引する

初日はユーリスモール・山本芳樹、エーリク・及川健。二人ともスタジオライフの看板役者で外部出演も多い実力派。山本は内に秘めた悩みや想いを地下のマグマのようにふつふつと抑え、そして時折、それが吹き出す様は自分に素直になれないユーリスモールを表現する。

物語が進行するに従ってユーリスモールの心に変化が訪れるのだが、ここは丁寧なきめ細かい演技で構築、ラストの清々しさに繋げている。及川演じるエーリクはユーリスモールとは対照的なキャラクターで、コミックでもそうだが、いわゆる“いいたいことははっきり言う”性格。ともすれば反感を買うタイプであるが、ぎりぎりのところで“憎めない奴”に。背も小柄で、エーリクそのものの感があり、キャラに合った配役であるが、そこに甘んじることなく、山本と対峙するシーンでは独特の存在感を醸し出す。

オスカー役は同じく看板俳優の岩崎大、舞台映えする長身。煙草をふかし、少し斜に構え、ユーリスモール、エーリクのそばにいるが付かず離れず、同学年であるが1歳上、という設定のキャラクターである。
彼もまた、複雑な生い立ちの持ち主であるが、それを級友たちには決して見せない、というか見せたくないのであろう。そんな強がりで本当は繊細な性格のオスカー、煙草をくゆらせる際や少しの間、ちょっとした仕草で見せていたのが印象的であった。
この3人の“三重奏”、絶妙のバランス感でカンパニーを牽引していた。
《animeanime》
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