■ 自分が監督をすると、自分の思った作品にならないと思った『ファンタジスタドール』
―― そうした作品と『ファンタジスタドール』での違いはありますか?
―― 谷口悟朗さん(以下谷口)
『ファンタジスタドール』は、他作品とはスタートが違います。まず、自分がやりたいと思う作品企画がありました。ただ、これは進めていくうちに、自分が監督をすると自分の観たい作品ではなくなるような気がしました。むしろ監督は別に立てて、監督をフォローする立場にまわることがいいんじゃないかなと。
ただ、もともとの話は自分が考えてしまったので客観的な立ち位置というわけにもいかない。ここがそれまでの関わり方と違うところです。
『ファンタジスタドール』については、作品の背骨にあたる部分は、私が中心になってAnmiさん達いろいろな人の力を借りながら作りました。それをもとにアプリとかマンガとかいろいろ展開してもらっているんです。「原作」とあるのは、そういう事だからです。
そして、中核であるアニメは、斉藤(久)監督を中心としたスタッフのみなさんに作品に肉付けしていってもらっている。そうイメージしていただけるとありがたいです。
だから、現場が動き出したら離れてしまっても良かったんだけど、プロジェクトとしてやることが多いですからね、監督が関わると物量的にパンクしてしまいます。ですから、各社の中間に立って動くのを私がやることにしたんです。
―― 同じクリエイティブプロデューサーであっても、原作のある作品と無から創り出す作品でやることもだいぶ違う気がします。
例えば、今回のような場合、コンセプトはどこから生まれて誰が誰に伝えていくのでしょうか?
―― 谷口
もともと「女の子が一杯登場して明るくワーワーしたい」というのが、最初の企画として私の中にありました。日本のテレビアニメーションがもともと持っているそうしたジャンルがありますよね。そういったかたちの作品を一度やってみたかったんです。
―― それは乗っかって行くという方向なのですか?多くの人が、谷口さんがやるのなら、何かひっくり返すと考えると思うのですが。
―― 谷口
そのためにも私が監督ではないほうがいいというのがあったんです。私が監督ですと、まずひとつはお客さんがそれを期待する可能性がある。さらにスタッフもそう動いちゃう可能性があるんです。
そして、とにもかくにも第一に、私がひっくり返してしまう可能性があります(笑)ですから「谷口が監督をやっちゃいかんのよ」です。
その時に、谷口自身に枷をかけなければいけない。これを立ち上げた一人は谷口だけれど、谷口に任せるとその根底をひっくり返す可能性がある。であれば監督を別にすればいい。そういう発想なんです。
―― 自分の想いを実現するには、むしろ監督は別の人がいいということですか。
―― 谷口
そうです。そうです。
自分が最初に「見たい」と思った作品を実現するには、一番邪魔なのは谷口自身です。そういう発想で、今回の作品が出来上がっています。
だから監督には「企画の根底にあるところはやってくれよ、それが原作なんだから。あとは好きにしてよ」と伝えてあります。
TVビアニメ『ファンタジスタドール』
公式サイト /http://www.fantasistadoll.com/