■作品の着想は“外国人から見た日本” のギャップの面白さ
――最初のほうのお話で、「変なキャラクターたちで、日常コメディをやりたい」と言っていました。だから別世界のキャラクターが多く出てくるんですね。
上江洲
そうですね。宇宙人でも動物でも何でもいいから変な子たちが来るというのは根底にありました。
あと、僕海外旅行が好きで外国の方と触れ合うことが多いんです。そういうなかで“外国人から見た日本”を描くギャップコメディの面白さも実感していたんです。
なので、“異世界人から見た現代日本”というギャップも面白いかなと思い題材にしました。

――そうして、キャラクターも生まれていったんですね。
橋本
僕が参加した段階で既に、しっかりしたキャラクターのベースが出来上がっていたので、そこに云々言うというよりは、さらに細かい部分を考えていく作業が必要になりました。
上江洲さんの言うギャップも描きたかったので、「性格はこうしたほうがいいのではないか」「この場面では、こうしてはどうか」とか。
それで大きく変わったのが、らんかな?
上江洲
そうでした。らんは当初全然違ったんですよね。
橋本
疲れたOLだったんです。
だけど、そうすると疲れたニート、疲れた美大生もいるし……。
上江洲
みんなネガティブなキャラだったんですよね。
橋本
そのときは文字で描かれた設定しか無かったので、自分たちのなかでキャラクター像を全然想像できていなかったんですよ。
ただ、そんな段階でもキャラクターに“引っかかり”を加えたいなとは思ったんです。ストーリーを知らない状態で絵を見たとき、「このアニメ見てみたいね」となる引っかかりが欲しいなと。
だから、「らんを小学生の女の子にしたらどうですか?」と言ったら、みんなが「すごい!」「天才だ!」って(笑)。

――美少女アニメを知る橋本さんだから浮かんだアイデアだったんでしょうね。
上江洲
疲れたOLで長いこと会議してきたから、よもや小学生にしようなんてならなかったんですよ。
橋本
おかしな話ですけれど、小さい女の子が好きなので。
上江洲
あ、いただきました。それもボールドにしてもらいましょう。「小さい女の子が好きなので」。
橋本
そういう意味じゃないですからね(笑)。
――では、らん以外のメインキャラクターは変わらず。
橋本
そうですね。(三乃)ハラミ、(舞坂)舞、(草薙・)K、(天沼)久美はこのまま。アーネリアは完全に犬。ここは動かなかったです。
アーネリアなんて、キャスト(内山夕実)も僕らのなかで決まっていたので動かさずにいきましょうという話でした。

橋本
変えたというと、らんを変えたあとにロンとレナードを加えました。
『レイドバッカーズ』を作るうえで、自分の中では『じゃりン子チエ』と『めぞん一刻』を思い描いていたんですけど、『めぞん一刻』の四谷さんって、何をしている人か説明できないじゃないですか。

――主人公・五代の隣人にしては全貌がつかめないですよね。
橋本
やっていることというと、壁をぶちぬいて五代の部屋に入ってきたりするくらい破天荒だしインパクトがあるものの、物語において必要かはわからないですよね。
でも、居なければいいかと言うとそうではない。自分にもいますよね? 自分の人生に必要かわからないけど、たまに会うのもいいみたいな人。
そういう意味でロンとレナードを出しました。物語には必要ないけど、キャラクターとして置いておきたいんです。


上江洲
賑やかで楽しいおじさんですね。
もう女の子キャラを増やす気はまったくなかったので、「いいですね!」と言っておじさんを入れてみました。
――それによって、日常シーンが際立って見えました。
橋本
それに、広がりがあるように見えるんですよね。そういう作り方をしたかったんです。
上江洲
それは強くおっしゃっていましたね。
橋本
異世界から来たキャラクターとなると、どうしても「帰る」というエンディングを想像しがちですけど、そういうこと考えず作ろうよと。
上江洲さんが原案を作って、そこに自分や鈴木さんが味付けしてできたアニメですけど、その行き着く先は、見てくれている人たちが見たいように。
上江洲
きっちりしたアニメが続いていたので、展開に責任を持たなくてもいいようなアニメにしたかったんです。
どうとでもできる主人公たちを作って、終わりを決めないように作ろうと。だからずっと作っていきたいですね。
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