なぜボンズの作品はハイクオリティで魅力的なのか? 創業20年の歩みを振り返る南雅彦氏ロングインタビュー 3ページ目 | アニメ!アニメ!

なぜボンズの作品はハイクオリティで魅力的なのか? 創業20年の歩みを振り返る南雅彦氏ロングインタビュー

アニメサイト連合企画「世界が注目するアニメ制作スタジオが切り開く未来」第2弾。ボンズの創業者で代表取締役の南雅彦氏に、スタジオの設立の経緯から現在まで、そして制作の現場について伺った。

インタビュー
なぜボンズの作品はハイクオリティで魅力的なのか? 創業20年の歩みを振り返る南雅彦氏ロングインタビュー
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■一つの会社だけどスタジオごとの特徴が作品に。それが面白い



――スタジオの構成についてもお伺いさせてください。


スタジオは現在A・B・C・D・E。5ラインですね。それぞれが作品を持っていて、一番新しいEスタジオが『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』(※5)が非常に長い期間かけて作る劇場シリーズになるので、そのためのスタジオとしました。
スタジオは1年ごとに違うタイトルになったり、スタッフも入れ替わるのですが、そこに「エウレカ」の劇場を入れられないなと思って、別のラインを組みました。

※5 『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』。2018年にスタートした劇場3部作。

――スタジオは本社と、その周辺ですか?


基本はここ(本社)。ABCDはここで、Eは別のところ。本社の1階がAとDで、2階がBとC。
ひとつの会社だけど、各スタジオで作品を決めるので、そのスタジオとか、プロデューサーの特徴が作品に出てくる。それが面白いと、今後も続けていこうと思っていますね。

――テイストとか絵とか、スタジオごとに変わるものですか?


プロデューサーや監督の求めている映像はやっぱりいろいろ違います。Dスタはいま鈴木(麻里)という女性プロデューサーで『文豪ストレイドッグス』を制作しています。女性的な部分はやはりあるフィルムだなと思います。例えばAスタで『文豪ストレイドッグス』をやったら、多分違うフィルムになると思いますね。結局そういう部分じゃないですか。同じ原作もので、同じ企画でも、違う作品となるのはやっぱり面白いですよね。

同じボンズの作品でも監督やプロデューサーによって色が変わるという

――世界的にCGアニメーションが広がっていることについてどう思われますか?


うちのタイトルもほぼハイブリッドです。どちらかというと手描きに近づけたCGを使っています。車とかモブシーンとか、手間かかるところはCGでやってもらっている。『ひそねとまそたん』では航空機をCGで制作していました。
『Toy Story』が1995年にでて、その後2007年に『レミーのおいしいレストラン』が上映されましたが、ショックでしたね。フランスの市街地がCGで組み立てられて、そこを走り回るネズミを見た時に「やばいな」と思って。CGが垣根を超えた瞬間だと思うんですよ。手描きのアニメーションの自由さにCGが侵食してきた。もう「手描きのアニメ作れねえんじゃないのか」って思った時代も実はありました。
ただ10年くらい前から海外のコンベンションに行くようになったら、日本の手描きのアニメーションが人気があるですよね。お客さんの熱量とキャラクターに対する思い、そして毎年そのお客さんが増えているのをコンベンションで実感していて。「俺たちが作っている手描きのアニメーションの表現を好きって、まだまだ求められているんじゃないか」って。そこからすごい安心した。逆にもっとチャレンジができるようになったと思います。

――アニメは愛されて、むしろ大きくなっている。


大きくなっていますよね。うちが『A.I.C.O. Incarnation』をやっているネットフリックスとか、海外企業がライセンシーになって配信したり。今まで、日本のアニメを全く観ていなかった人たちに観てもらって、それで好きなアニメがいくつも出来てくれれば、われわれにとって楽しくて幸せなことだと思いますね。


――そういう作品も作り手があって成り立つのですが、今後いいクリエーターを維持して育てていくことについてどう思われますか?


人材育成は日本動画協会が取り組んでいる産学連携とかで育てなければいけないのかと。プロダクションとしては学校から社会に出てきた時にきちんと支援する体制ができるか。あとはギャランティの問題も解決しなきゃいけない部分。

――ギャランティの話が出たのですけど、現場がきついという話がよくあるんですけれど、次第に良くなっているとの印象もあるんです。まだ足らない部分もあるけれど、これから良くなっていくと考えておられますか?


スタッフのギャランティは全体的には上がっています。われわれがあずかる制作費も上がってきています。
ただ問題は業界全体でタイトル数が多すぎますね。テレビでうち以外のスタジオのアニメーションを見た時に、たまに「どうやって簡易化するかを考えすぎているフィルムがある」って思います。

――何か時間を節約しようとか?


日本のアニメーションは3コマ打ち(※6)といったリミテッド。ディズニーがやってきていたフル24コマまでお金かけられないから枚数減らしましょうと、引き(※7)とかパン(※8)とか色んな手法を駆使して、先輩たちがそれをきちんと演出にしてきた歴史がありました。
今はそこをちょっと乗り越えちゃたんじゃないかな。本当に手数を減らすためだけにやって、演出に乗っかってない処理とかが増えているんじゃないかなと。たぶん予算がないことが問題でなくて、単純にスタッフがいない。スケジュール通りにあがらない。それはすごく悲しいフィルムだと思うんです。

※6 映画のフィルムは通常は1秒間に24コマで作られる。3コマを同じ絵で兼用して、一秒間に8枚の絵で制作するアニメーションを3コマ打ちと言う。

※7 アニメーションの撮影技法のひとつ。セルや背景画を引っ張って撮影する。

※8 アニメーションの撮影技法のひとつ。カメラを固定して被写体を一方向にずらしていく。

――もう少し人がいればできるのに、その人がいない?


人がいないから、ひとりに出来るものにしようって感じになっちゃって。それがね、ちょっと悲しくて。うちの会社の作品も非常に苦労しています。制作、スタッフ共に苦労して作っているので、本数がもうちょっと減ってくれないとしんどいなと思います。

アニメ需要に対して優秀なアニメーター人材の供給は慢性的に不足しているという。
《数土直志》
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