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「ペンギン・ハイウェイ」スタジオコロリド初となる長編制作で見えてきた、“デジタル作画”の課題と未来

2018年8月17日に全国公開を迎える『ペンギン・ハイウェイ』より、石田祐康監督とキャラクターデザインを担当した新井陽次郎との対談で、作品制作を振り返ってもらった。

インタビュー
「ペンギン・ハイウェイ」スタジオコロリド初となる長編制作で見えてきた、“デジタル作画”の課題と未来
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■“カッチリ”描いたアオヤマ君と、“生っぽく”描いたお姉さん


――ここから映画の内容について聞かせてください。おもしろい原作ですが、アニメにするにはいろいろ難しいところも多かったと思います。

石田
原作はとてもおもしろかったのですが、同時に映画にすることを考えると、要素が多くて「どうまとめればいいのかな」と悩みました。
クライマックスに向かう最初のピークは、ペンギン、お姉さん、<海>、ジャバウォック、その4つがギュッと結びついて、アオヤマ君が悟るところだというのはわかりました。
でも問題は、そこに繋ぐまでに、必要なものと省略できるものをいかに取捨選択するかでした。そのあたりは脚本の上田(誠)さんや助監督の(渡辺)葉君とも一緒に相当頭を捻りました。

(C)2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会
――新井さんはアオヤマ君やお姉さんをデザインするときには何を意識されましたか?

新井
アオヤマ君は生意気なところのある少年なので、デザイン的にカッチリした感じを出しました。
お姉さんがデザインや動きを曲線で描くのに対して、アオヤマ君はカチカチとしたスクエアなイメージで描いています。だから動き方も“ながら”でさせるのではなくて、ひとつひとつの動作を分けてお芝居させるというやり方を最初に決めました。
逆に、お姉さんはどちらかと言えば普通の人間らしく描こうと考えました。

(C)2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会

■「お姉さんの胸の描き方は議論にもなりました」(新井)


――アオヤマ君が、お姉さんのおっぱいに言及することも含めて、お姉さんをどう描くかは難しいポイントだと思いました。

新井 
そうですね。アオヤマ君はおっぱいのことを結構言うので、胸の描き方をどうするかは、女性のスタッフにもいろいろと意見を聞きました。
ちょっと直接的な話になってしまいますが、ちゃんとブラジャーをつけているような動きにするのか、もうちょっとアニメ的な誇張を取り入れた胸にするのか、そこは一度議論になったりもしました。

(C)2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会
(C)2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会
石田
お姉さんは最初に描いてもらったキャラクター設定があったんですよ。でも、テストカットが終わったあとに、うすけさん(※新井)本人が「納得いかない」というんで、自己申告で描き直してもらったんです。最初の絵は端から見ると、やっぱりブラジャーを付けていない感じで描かれていましたね。

新井
そうだったかもね(笑)。でもそもそも最初に監督がイメージを描いた絵の段階で、デフォルメの効いた、一昔前のボンキュッボンなお姉さんだったんです。そういう絵をたたき台にしながら、「お姉さんをどうやったら魅力的にできるんだろうか」という話をしていきました。

石田
お姉さんは、記号に頼れないので絵力で生っぽく描くしかないんです。それはたしかに難しかったですが、同時にすごくやりがいがあった(笑)。

――小物などのデティールが凝っているのも見どころですね。

石田 
作監の石舘(波子)さんがプロップ設定として、さまざまな小物を設定してくれました。石館さんは、マクドナルドのCM(『未来のワタシ篇』)でメイン(キャラクターデザイン・作画監督・原画)スタッフでしたが、プロップデザインについては、また挑戦したいと思っていたようで、それで今回は文房具をはじめとする多くの小物を設定してくれました。

――本編の作業全体を振り返って、新井さんが大変だったのはどこでしょうか?

新井
どこか1カ所というより、全体を見る中で、バラバラなものを底上げしていく作業が大変でしたね。今回自分は作画監督をしていないので、作監の人たちに「こんな感じでお願いします」と伝える役割もありましたが、その伝えるというのが難しかったです。


■“クオリティ”か“身軽さ”か…スタジオコロリドの今後は


――長編を作り上げてみて、どうでしたか。

新井
作り方でいうと、今回はこれまでと違う難しさが多くありました
例えば、今までは絵コンテをムービーにして、そのつど、最新のものをカットごとに差し替えていく方法で作っていましたが、今回はムービーを作らなかった。だからカッティングするまで、どんな映像になるのかが分からない状態だったんです。
カッティングして、アフレコの音声をつけて、ようやく「こういう映画なんだ」とわかってきた部分があった。それはやっぱり尺が長くて、自分たちで見切れる範囲を超えてしまったからで、長編を作るには、もう少し良い方法がありそうだなとは思いました。

石田
カッティングまで分からないという作り方は、ある意味で賭けなんでしょうね。そのときにようやく「良い流れができてるな」とか「テンポ感が生きてるな」と分かるんです。
今回はそこで追い込むことができたのが大きかったんですが、やっぱり次に長編を作る時は、ムービー化して共有化するように挑戦してもいいなと思いましたね。

(C)2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会
新井
でも、その必要性がほかの人たちにはどれぐらい分かってもらえるのか、という心配はありました。自分たちはそれに価値があると思っていますが、価値を見出さない人もいるでしょう。そこを共有して、理解してもらわないと、そういう体制で作ることはできないんじゃないかなと考えています。

石田
『ペンギン』はスケールが大きすぎて、制作さんたちの力を大いに借りる必要がありました。ここでは簡単に言い表せないほど助けてもらったんだなあ…と感じますが、とにかく頼るとなると、制作さんたちが経験したことのある既存の長編の作り方に寄っていきます。だから、コロリドの今までの短編よりもベーシックな作り方になった。それが良いかどうかよりも、そういうことを経験したうえでなら、次はまた新しい枠組みに挑戦できるのかなと思います。常に可能性は探り、変化と刺激はあったほうがいいですからね。
あと考えるのは、コロリドのこれからですね。長編で絵コンテから動画まで全部デジタルでやろうとすると、クオリティのことを考えるなら動画までスタジオで抱えてやったほうがいいということになるはずです。確かにそうすればクオリティはかなり追求できる。でも、スタッフも増えて会社として身動きはとりにくくなる。短編などの挑戦が出来なくなる。逆に、動画のクオリティは高望みせず、ある一定のクオリティでよしと割り切って外注し、その分ほかの部分に力を入れて画のクオリティの印象を保つ。そうして身軽に挑戦できるスタジオにするか。
今回は初めてなので、いきあたりばったりで制作した部分がまだ少なからずありましたが、もし次に長編を作る際は、そういう課題を考えたうえで取り組む必要も出てくると思いました。

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(C)2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会
《藤津亮太》
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