「メアリと魔女の花」米林宏昌監督インタビュー ジブリから一歩踏み出して作りつづけるという覚悟 2ページ目 | アニメ!アニメ!

「メアリと魔女の花」米林宏昌監督インタビュー ジブリから一歩踏み出して作りつづけるという覚悟

7月8日(土)アニメーション映画『メアリと魔女の花』より米林宏昌監督にインタビューを敢行。米林監督は一体どのような思いでこの作品を作り上げたのか、その思いをうかがった。

インタビュー
「メアリと魔女の花」米林宏昌監督インタビュー ジブリから一歩踏み出して作りつづけるという覚悟
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――世界観など絵作りの面ではどのような意識がありましたか?

米林
ファンタジー作品なので、架空の世界にリアリティを持たせるための説得力が重要です。たとえば、魔法学校「エンドア大学」のデザインは、世界中のどの様式にも似ていないものを考え出すということをしています。ゴシック様式といったひとつの様式に統一する手法もありますが、今回は違う気がしたんです。学園内をメアリが案内されて回るカットがあるのですが、その都度いろいろな楽しいもの見せたい。見る人は一瞬ですけど、ひとつひとつ時間をかけてデザインしていきました。魔法文字もデザインしたんです。
かといって、ファンタジー世界に行く前の、地上の世界を疎かにしてはいけないので、イギリスへロケハンへ行き、植物や建物内の調度品、イギリスの空などをしっかり観察して映画の中に反映させています。


――アニメーションの驚きで言えば、冒頭のシーンはすさまじいものがあります。そこでまず心を持って行かれる観客も多いかと思います。

米林
橋本晋治さんという凄腕のアニメーターに描いてもらいました。本作は「動かすアニメーションを作りたい」というのが出発点ですので、スーパーアニメーターたちに声がけするところからはじめました。そしてどんなシーンをやってもらうか、考えるのも仕上がりを見るのもおもしろかったですね。絵コンテ以上に膨らませたおもしろい絵を描いてくれるので、いつも発見がありました。その冒頭のシーンは予想以上にすごいものがあがってきたので、我々のなかで「このクオリティーで行く……!」という覚悟のようなものが生まれました。
また撮影監督は『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』なども手がけた福士(享)さんと、これまでジブリ作品に関わってきた奥井(敦)さんの2人で協力してやってもらっているのですが、僕のこれまでの作品と比べると派手な画面に仕上がっていると思います。いろんな方の力を借りるとまた別の画面になるんだなと面白かったです。

――スタッフが変わることで画面の手触りも違うものになった。

米林
ええ。スタジオジブリのみんなはバラバラになっていますから、すぐ再結集というわけにもいかないので、外で活躍している人たちの力もたくさん借りました。それによって作品がボコボコするんですよ。いろんな描き方があるんですよね。たくさんの人たちで作る醍醐味だなと思いました。できあがった作品も、ストーリーも含めて、どこかボコボコしたような手触りがある。これは狙ってできるものではなく、偶然できあがったりするんです。これは『メアリ』という作品に合っていると思いました。


――主演に杉咲花さんをキャスティングしたのは?

米林
『思い出のマーニー』で彩香という女の子の役をやってもらったのですが、こちらの斜め上の演技をしてくれました。「彩香はこういう声だったんだ」というのがうまいことハマって、キャラクターになっていく過程を体験していたんです。メアリはウソもついちゃうし、自分勝手でどこへでも行っちゃう、調子に乗ってはいろいろと失敗しちゃうので、場合によっては嫌われてしまうキャラクターになりそうだなと思っていたんです。でも、杉咲さんなら許せてしまうような何かを持っているのではないかと思って。実際にテストしてみたらうまいことハマったので、イケると確信しました。
……彼女、「イヒヒッ」って笑うんですよ。自然に。そんな人なかなかいないですよね。そういうのも含めて嫌味のない、他の人にはない声で、彼女でしかメアリは演じられなかったのではないかなと思います。
今回、メアリがひたすら登場するお話なので、収録時間は長かったですけど、粘り強く演じてくれました。最初は失敗ばかりするダメーな女の子なんですけど、段々考えを持って行動するようになる。そこをうまく演じてくれました。

――スタジオジブリ制作部解散後の第一作というのは米林監督にとっても大きいなポイントだと思いますが、スタジオポノックでのアニメーション作りはこれまでと変化はありましたか?

米林
いろいろなものが変わりましたが、基本的な考え方や何をつくりたいか、という根本的なものは変わっていませんでした。ただ、最近のジブリ作品は最後に別れがあったり、静かな作品が多い印象があったので、僕たちが新しく作る作品はもっとエネルギーのあるものにしたかった。主人公に待っているのが別れではないという作品。それは若い人たちにとっても意味あるものとして見てもらえるんじゃないかって。この題材で、今こういった作品が作れたというのは多くの人にとって意味があるものになったと思いますし、もちろん、ポノックの第1回作品としてもふさわしい作品になったと思います。
メアリは力尽きた時、それでも目的に向かって一歩を踏み出す勇気を持った女の子です。彼女ががんばって前へ進むさまを見て、お客さんも同じように、一歩踏み出す勇気を持ってもらえたらうれしいです。


――なかなか後継者が出ないと言われてきたスタジオジブリでしたが、新しいスタジオでその血をしっかりと受け継いだということに米林監督の覚悟が感じられます。

米林
スタジオジブリで20年間過ごし、いろんなことを教えてもらったことに対して、感謝の気持ちしかないです。そのもらったものをどういう風に還していったらいいかと考えたときに、つくり続けていくことが恩返しなのかなと思いました。
この作品を作る前に宮崎(駿)監督のところに挨拶へ行ったんです。「今度作ります」と伝えると、「うれしいよ」と。僕自身もうれしかったですし、期待に応えられるものを作っていかなくてはと身の引き締まる思いでした。
その後、作り終わってからも挨拶に行って、「見てください」と言ったんですけど、「いや、見ない!」って(笑)。見てはくれなかったけども、「やあ、お疲れさまでした」と言ってくれて。制作中もものすごく心配してくださったようで「本当にできるのか!?」「大丈夫なのか!?」とスタジオポノックまで来て差し入れをくれたりと応援してくれました。……もう本当に、感謝の気持ちでいっぱいですね。
《細川洋平》
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