【取材・構成:日詰明嘉】
――まず神山監督にお聞きしたいのですが、『ひるね姫』の音楽を下村さんにオファーをされた経緯を教えてください。
神山
『ひるね姫』は森川ココネという女子高校生が主人公の物語で、彼女が見る夢の世界が描かれるファンタジー作品でもあるので、音楽については「少女らしさ」というモチーフをずっと考えていたんです。そこで漠然と「キラキラした曲がほしいなぁ」という話をスタッフとしていくなかで、ディズニー映画にあるようなポップなイメージが湧きました。「ディズニー映画って、どうして音が粒立っているんだろう?」という話題から、「ピアノをメインにしたらそういう感じが出るかもしれない」と、方向性が固まりました。そこで演出スタッフの堀元宣さんが「神山さんが言っている、キラキラして音が粒立っているピアノメインの曲ってこれじゃないですか?」と貸してくれたのが『キングダム ハーツ』のサウンドトラックだったんです。
――『キングダム ハーツ』は多数のディズニーキャラクターが登場するゲームですので、まさにといった感じですね。
神山
ええ。それも堀さんの中であったのかもしれません。それで聴いてみたところ、非常に素敵な音楽で。しかも女性が作られているということが、今回の映画にとってはまた良かったんです。やっぱり、音楽ってエモーションの部分でもあるので、今回の主人公が女子高校生だから、そこも女性の気持ちで合わせてくれる方がなお良い。そこで、下村さんにお願いしようと決め、連絡を差し上げたというわけです。ツテも何もないので、普通に下村さんのホームページの問い合わせフォームからメールをして(笑)。

下村
最初にご連絡を頂いた時に「人違いじゃないの?」って思いました(笑)。何せ神山さんといえば有名な監督ですから。オファーについても、映画の中に私が音楽を手がけたゲームが登場して、その許諾か何かだと思いました(笑)。それが劇伴のオファーで、純粋に作品・曲を聴いて選んでくださったというのは、作曲家として一番光栄なことだと思いますし、すごく嬉しかったのを覚えています。
――『ひるね姫』の作品についての印象はいかがでしたか?
下村
絵コンテがムービーになった形の状態で見せていただいたのですが、すごくワクワクしたのを覚えています。ファンタジーで可愛らしいというか、分かりやすい感じでありながらも、きっと神山監督のことだからこれからいろいろ出てくるんだろうなと、いちファンのような気持ちで見せていただきました。私自身、子供の頃からちょっと妄想癖がある子だったので、夢の世界のお話とかは大好きなんです。曲を作る時も、最初に思った印象が最後まで私を引っ張ってくれたような感じで、「楽しそうだな」とか「ワクワクする」という感じで作っていくことができましたね。
――劇伴音楽についてはどのように打ち合わせを進められたのでしょうか?
神山
まずは、絵コンテムービーをお見せしながら、ざっくりと、どういう曲がほしいとかとか、シーンでの心情を説明したりしました。時には「ここは男性っぽい感じ」と、かなり抽象的なニュアンスで説明しました(笑)。僕は音楽の用語が苦手なので、そういう説明をすると下村さんが、「それだったら、何分の何拍子じゃないですか?」とアシストしてくださったのがすごく助かりました。
