「ひるね姫」今度のヒロインは "世界を救わない"!神山健治監督が普通の女子高生を描く理由とは? | アニメ!アニメ!

「ひるね姫」今度のヒロインは "世界を救わない"!神山健治監督が普通の女子高生を描く理由とは?

レビュー

「ひるね姫」今度のヒロインは
  • 「ひるね姫」今度のヒロインは
  • 「ひるね姫」今度のヒロインは
  • 「ひるね姫」今度のヒロインは
  • 「ひるね姫」今度のヒロインは
  • 「ひるね姫」今度のヒロインは
  • 「ひるね姫」今度のヒロインは
  • 「ひるね姫」今度のヒロインは
  • 「ひるね姫」今度のヒロインは
■世界を救わない物語―何も起こらないことこそが得難いファンタジー―

神山健治監督の最新作にして初の劇場オリジナルアニメーション『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』が公開となった。劇場作品としては2012年の『009 RE:CYBORG』以来、5年ぶり。首を長くして待っていたファンだけでなく、神山監督作品を初めて見る人にとっても昨年から起きているアニメ映画の新しい波を引き続き感じられる作品であることは間違いない。実にさまざまな楽しみ方が用意されている本作だが、とりわけここでは、これまでの神山監督作品から大きく変化した「ヒロイン像」に注目したい。

新たに神山作品の魅力的なヒロインたちの一員に加わった森川ココネ。しかし、当コラムのタイトルにもある通り、『ひるね姫』のヒロインであるココネは"世界を救わない"のだ。振り返ってみると、これまでの神山ヒロインは世界と対峙してきた。『攻殻機動隊 S.A.C.』シリーズでの草薙素子、『精霊の守り人』のバルサ、『東のエデン』シリーズでの森美咲。どのヒロインも強い信念を持ち、直接世界に立ち向かう、あるいはそういった人間をサポートする存在だった


『ひるね姫』の主人公ココネは岡山県倉敷市に住む女子高生。明るく朗らかで、ちょっとテキトーだけどまっすぐな女の子だ。例えば朝寝坊しても、起こさなかった親に当たったりせず、むしろ朝食を作るという自分の仕事が遅れて謝ったりする。また友人に「ほんまアホじゃけど、かわいいなあ」と言われた時には、ハグしながらよろこぶ。幼なじみの大学生モリオと野宿することになった際には、モリオが乗っているオートバイのサイドカー部分に潜り込み、「寒いけえ入っとってもええけど、お尻触ったらいけんよ」と言いながら寝てしまう。
ココネの言動には、まず相手への思いやりが最初に見え、続くリアクションの意外性や柔らかさに思わずほほ笑んでしまいそうになる。ココネには世界を救ってしまうような、あるいは切り拓いていくような鋭利さはない。あくまで身の丈感覚の女子高生なのだ。ただ、ちょっとだけ行動力のある彼女の性格が、物語の扉を開いていく。これもココネが特別だからではなく、映画を見ている誰にでも起こりうることとして「こんなふうに行動できたらいいなぁ」を具現化した存在なのだ。
なぜ神山監督は『ひるね姫』の主人公にスーパーヒロインではなく一般的な女子高生を据え、"世界を救わない"物語にしたのだろう。この答えは神山監督本人の口から語られさまざまなメディアを通し伝えられている。前作『009 RE:CYBORG』の制作中に震災を体験したことで、「何も起こらないことこそが得難いファンタジー」と考えるようになったからであり、加えて日本テレビの奥田誠治プロデューサーから「自分(神山監督)の娘に見せたい映画を作ったら?」と言われたことも大きいと言う。神山監督の創作に対する視線が、グッと身近な場所に向けられた作品なのだ。


《木見守史》
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集