本作は2Dテーストも盛り込み、CGの技術を駆使したデジタルアニメーションの映像でも大きな注目を集める。そのアニメーション制作を担当したのは、製作委員会にも参加するポリゴン・ピクチュアズである。
ポリゴン・ピクチュアズは、『スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ』『トロン:ライジング』『超ロボット生命体 トランスフォーマー プライム』など海外向けのCGアニメーション制作で世界的な人気を獲得した。それが2014年の『シドニアの騎士』をスタートに、日本での製作に本格参入した。
なぜいま日本市場なのか、日本から世界はどう目指すのか、デジタルアニメーションの可能性は、そして映像配信はアニメビジネスを変えるのか、代表取締役の塩田周三氏にお話を伺った。
[取材・構成:数土直志]
「亜人」公式サイト http://www.ajin.net/
ポリゴン・ピクチュアズ http://www.ppi.co.jp/
■ 『シドニアの騎士』『亜人』を日本で製作したわけは?
――現在は劇場とテレビシリーズの『亜人』がまさに進行中ですが、ポリゴン・ピクチュアズの国内アニメは『シドニアの騎士』から本格参入しています。国内アニメのビジネスが続く中での驚きは、ポリゴン・ピクチュアズがなぜ日本の市場に参入したかです。既に海外で名前が知られていますし、競争が激しい日本市場は苦労も多いと思います。いま進出する理由は何ですか。
塩田周三(以下、塩田)
美しい戦略があったわけでなく、偶然としか言いようがありません。2011年に守屋(秀樹)がビジネスデベロップメント担当の取締役として入社したのですが、それまで日本市場が分かる人間が社内にあまりいなかったのです。その頃僕らは『トロン:ライジング(Tron: Uprising)』ですごく苦労してトゥーンシェード(*)を開発し、いい表現になったところでした。ここまでトゥーンシェードができるならアニメもできるんじゃないかと考えられていたところです。
ポリゴン・ピクチュアズは1983年に設立から受注仕事を一切しない時代が長くありました。一方で大規模なプロダクションをつくりあげたことから、制作ラインを埋めるための受注仕事もしなければいけなくなり、方向転換をしたのが2000年です。
ただ受注仕事は、どうしてもクライアント主導になります。これはある意味で危険です。そこで自身のライツ開拓をしようと何回か試み2005年頃に海外との共同開発を探りましたが、製作に至りませんでした。少し体力ができて、もう一回仕切り直そうとしたときに、ちょうど守屋が入ってきたのです。
*トゥーンシェード:3DCGで描いたアニメーションを手描きアニメーシ風に見せる技術。
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塩田
エンタテインメントは水ものなので、何が重視されるかが都度変わるのです。例えばポリゴン・ピクチュアズが大きく成長した時は、世界ではボーイズアクション(*)の全盛期。各社がボーイズアクションに命運を懸け、予算をつぎ込もうとしていた時期でした。コメディーが全盛期だった後に、ボーイズアクションの時代だったのですが、それが過ぎるとまたコメディーです。これは僕らがいいCGの番組を作ろうが関係ない。そのぐらいコロッと変わるので、やっぱりこれは危険だよねと。
「日本でわれわれがIP(知的財産)の一部を持つこともあり得るんじゃないの」と守屋と話していた時に、『シドニアの騎士』の許諾をいただきました。これは奇跡的で幸せなことだったのです。
というのも、その時期にルーカスフィルムがディズニーの傘下に入り、『トランスフォーマー』を作っていたハズブロはスタジオの方針見直しで、番組を作るよりは番組供給だけに特化するといった方向転換がありました。
同時にアメリカでテレビは「ながら見」のコンテンツだとして、楽しめるストーリー、コメディーに戻っているわけです。そういう世界ではCGは要りません。
*ボーイズアクション:少年向けのアクション番組の総称
――2Dテーストが好まれる感じでしょうか?
塩田
CGの表現よりはもう少しビビットなものです。僕らはアメリカで「ハイエンドのテレビアニメシリーズだったらポリゴン・ピクチュアズ」という立ち位置を築いたんです。けれどもハイエンドなテレビアニメシリーズが突然なくなってしまいました。
そこで必然的に日本にフォーカスすることになった訳です。『シドニアの騎士』はちょうど決まっていましたが、そこに戦略的な裏付けがあったのではありません。
[/アニメ!アニメ!ビズ/www.animeanime.bizより転載]