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「シドニアの騎士」から「亜人」、さらにその未来 ポリゴン・ピクチュアズ塩田周三社長に聞く

『シドニアの騎士』から日本での製作に本格参入したポリゴン・ピクチュアズ。なぜいま日本市場なのか、世界はどう目指すのか、代表取締役の塩田周三氏にお話を伺った。

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■ 海外とのコミュニケーションは、人と会って話すことから

――正直に言うと『シドニアの騎士』は、製作発表当初、採算をどうとるのか不思議に思いました。2000年代後半から日本ではエッジの効いたストーリーと映像で押していくアニメーションはビジネスとして弱くなっていると思っていたんです。そのなかで『シドニアの騎士』はかなり予算がかかっているように見えました。けれども、そこでNetflixが配信し、マスマーケットに近いターゲットを見据えることで、リクープ(*)が見える企画になりました。
*リクープ 製作投資の初期費用を回収すること

塩田
『シドニアの騎士』が立ち上がったときに、僕らも製作出資をすると決めました。日本の製作委員会は出資をすると同時にライツの一部を取得して、そこでビジネスをする発想です。どうやってリクープするかと考えたときに、僕らが一番強みのある北米のライツを考えました。
僕らはアメリカのマーケットを知っているし、コネクションもある。まず自分たちで動けるところから動いてみよう、誰もやっていないことをやってみよう、と。
日本のコンテンツをやるにしても、「CGが生きる」、「自分たちが面白いと思うものを」とピックアップした結果が『シドニアの騎士』でした。
例えてみれば『バトルスター・ギャラクティカ』の日本版だと考えました。このストーリーだったら海外のマスマーケットにアピールできるという思いがあったんです
とはいえ、マスにアプローチをするにしても、北米でテレビチャンネル放送されないのは分かっていたし、ビデオ(Blu-ray、DVD)が凋落しているのも分かっています。では、どうしたらといったときに、NetflixやAmazon、Huluと言った配信ビジネスがあったわけです。まずそこをターゲットにマーケティングしようと、手当り次第に電話して、知り合いの知り合いをたどって、Netflixに辿りつきました。Netflixさんとはすごく話が合いました。

――最初から配信を念頭に置いていたわけではないのですか?

塩田
そういうわけではないですね。正直そんなに選択肢がない中で、ちょうどストリーミング(配信)の波が来ていた。Netflix側も恐らくその時点でアジアに対する展開が視野にあり、キーコンテンツにアニメを視野に入れていたと思います。そこに、たまたま僕らがいた。『スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ』や『トロン』でポリゴン・ピクチュアズの存在が知られていたというアドバンテージもありました。

――日本ではアニメが深夜アニメとキッズアニメで分けられて、『シドニアの騎士』や『亜人』も普通の人から見ると深夜アニメという枠に入るかもしれないです。でも実際はもっと一般性がある作品で第三の道を進んでいる気もします。

塩田
それはありますね。僕らが作るからには世界に流通できるものをと思っています。日本のアニメの予算からいうと僕らはかなり予算をもらっているわけですが、リクープするには日本の市場だけではどうしても成り立たない。他の収入を見つける必要がある以上、海外で流通することは視野に入れないといけない。

――Netflixが話題にはなっていますが、その中で日本の企業としては真っ先にNetflixと組みました。よかった点や、感じることはありますか。

塩田
Netflixさんは日本に来たばかりだから、彼らがどう日本でプレゼンスを作っていくかは時間がたたないと分からないと思います。けれども、僕らからすれば、大成功で感謝しかない。
アニメを作るうえで純度を保つことに対して迎合してこなかったから、僕らは何とか生き残れたと思うんです。それはどういう人たちと付き合うか、どういう企業と組むか、どういう作品を作るか、といったことだと思っています。それはこれまで一緒に仕事をしていたハズブロもそうですし、ディズニーもそうです。彼らも僕らのことが好きだし。
Netflixも今は定期的に会食をし、今後の話をします。彼らは日本にとってプラスになることを目指していると思うので、やっぱりすごく相性が合うんですよ。

――日本のアニメや映画を作り海外を目指す方は、海外のビジネスパーソンと密にコミュニケーションを取りたいと思いつつなかなか取れない状況がずっと続いています。塩田さんはどこが彼らと波長が合うんですか。なぜこんなに多く海外のビジネスマンとパートナーシップを組めるのか、すごく不思議に思っているんです。

塩田
すごく自然体です。普通に気が合って、飯を食いにいこうかという流れの中ですね。社内で「塩田は仕事をしない」と言われているんですけれども。(笑)
何かをやっているとしたら、夜に誰かと会って話す。外国へ出張に行ってもブレックファースト、ランチ、ディナーで人と会って話している。それだけなんですよ。
その対話の中で、業界がどうあるべきか、日本のアニメのよさは何か、業界で何が難しいか、僕はそれを語ることができる。やっぱり日本は海外から憧れられるところがあります。先人の方々がいろんなものを積み上げてきているから、心底興味を持ってもらえるし、コンテンツの宝庫だと思われている。けれども、日本へのアクセスが難しい状況があるなかで、僕はちょうどその中間にいることもあって普通の会話ができているということです。



[/アニメ!アニメ!ビズ/www.animeanime.bizより転載]
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