読者に人気のアニメ作品から、期待の声優に作品や役柄について語ってもらう雑誌「メガミマガジン」のインタビュー企画「Megami’sVoice」。2026年3月号では、TVアニメ『真夜中ハートチューン』より、井ノ華六花役・瀬戸桃子のインタビューをお届け。本稿では、本誌で紹介できなかった部分も含めたロングインタビューとなっている。
六花の本心をつかめない部分をていねいに演じたい
――『真夜中ハートチューン』(以下『マヨチュー』)の最初の印象は?
ラブコメでありながらミステリー要素もあり、さらに夢を追う楽しさやその過程で生まれる苦悩までていねいに描かれている作品で、原作を初めて読んだときの高揚感は、いまでも鮮明に覚えています。にぎやかでテンポのいい掛け合いの裏側で、登場人物それぞれが抱える迷いや踏み出せない気持ちが、表情やセリフの端々から伝わってくるところに「あのころの青春」を感じました。そして、五十嵐正邦先生の描くキャラクターは本当にキラキラしていて……!気づいたら物語の世界に引き込まれていました。
――ここまで「声」にスポットを当てている作品は、これまであまりなかったですよね。しかも、声優を目指す日芽川寧々というキャラクターも登場します。
私自身、オーディションで寧々も受けていたのですが、作品のなかで「声優を目指しているキャラクター」を表現することに苦戦しましたね。「声」にスポットを当てた作品だからこそ、六花役として合格の通知をいただけたときは非常にうれしかったです。
――六花は歌手志望ですが、なかなか本心がつかめない感じがしますよね。
そうなんです。急に照れたかと思えば、ひょうひょうとしていたり、さっきまで普通に話していたのに、ふいにに「帰るね」と言って本当に帰ってしまったり。そんな自由奔放でミステリアスな彼女を、放送部のみんなが当たり前みたいに受け止めているのが、見ていてすごく微笑ましいんです。メンバー同士の信頼関係や絆が伝わってきて、ほのぼのします。そんな彼女のつかみきれないところも含めて、不思議と引かれてしまうキャラクターだなと感じています。
――六花のどんなところに引かれていますか?
落ち着いていて芯のあるところに引かれますね。ほかのメンバーに比べると、感情をあまり表に出さないぶん、ふとした瞬間に見せる表情や距離感が印象的で、つい目で追ってしまうんです。制服の着こなしも、黒タイツにブレザーをきちんと着ているところが六花らしくて好きですし、彼女の目の奥までのぞかれているような表情には毎回ドキッとさせられます。あれを間近で見ていて平気な有栖はすごいな、と思ってしまいますね(笑)。

――六花は放送部のメンバーとも、ほどよい距離があるようにも見えます。
みんなが六花の空気を自然と尊重していて、無理に踏み込まない関係性なのかなと感じました。六花自身も、自分のペースや居場所を大切にしているキャラクターなので、その距離感をどう表現するかは演じていて難しいのですが、同時にとても魅力的な部分だと思っています。
――オーディションでは、どんなふうに役作りをしていったのですか?
六花のビジュアルを最初に見た瞬間に、「この声だ」というイメージがすっと浮かんできたんです。その直感を大切にしながらオーディションに臨んでいたので、細かく作り込むというよりは、感じたままの六花を表現することを意識していました。
――手応えはありましたか?
はっきりとした根拠があったわけではないのですが、「自分なりに向き合えた」という感覚はありました。もしご縁がなかったとしても、それはそれで受け止めようと思えていたのですが、これまでよりも少し肩の力を抜いて臨めていた気がします。――演じる際に意識したことは?
声がテーマになっている作品でもあるので、「いい声」や「アーティストらしい声色」といった部分はとくに意識しました。セリフの抑揚などで表現するのはもちろんなのですが、声のトーンや間で空気感を作ることをより大切にしています。また、私自身が六花に引き込まれすぎてしまうと演技がぶれてしまうこともあるので、軸を保つことを意識しながら演じました。
――演じてみて感じた難しさは?
六花は話す前に、一度心のなかに感情を取り込んで、考えて言葉にしているような気がしていて。だからこそセリフひとつひとつに込められた意味深なニュアンスを、つい自分なりに汲み取ってしまい、演じていて悩むことも多かったです。「六花はこのとき何を思っているのか」をつねに考えながら、役と向き合っていました。なかでも、難しかったのは小さなリアクションや、感情が表に出るとき、声を荒げるセリフです。1話1話、六花が成長していくのに寄り添うように、私自身も少しずつ成長できていたように感じています。
――一度、自分のなかに感情を取り込むとなると、確かにリアクションは大変そうです。
そうなんです。映像で表情が動いていると、つい声を足したくなる場面もあるのですが、六花の場合は「ここでは声を出さないだろうな」と思うことが多くて。アドリブに関しても、何かを足すというより、あえて引く選択をすることが多かったです。
――ほかにもディレクションはありましたか?
「セクシーすぎる」「今のは六花にしてはかわいすぎたかも」「心を許しすぎている」といったディレクションがありました。六花のセリフひとつひとつが、“どこまで計算しているのか”という加減を表現するのが難しかったです。たびたび、「今日も悩んでいるね~」と言われながらのアフレコでしたが、その試行錯誤の時間も含めて、とても楽しかったです。
――歌手志望の六花として歌うときに大切にしたことは?
「オリジナル曲とカバー曲で、歌い方を変えてほしい」というディレクションがあり、その意図を意識しながら取り組みました。作中で流行っている楽曲カバーでは、六花自身の言葉ではないぶん、少し余裕がある雰囲気を大切にしています。一方で、六花が作曲したオリジナル曲は、自分の思いが詰まった楽曲だからこそ、言葉ひとつひとつを大切にしながら、真摯に向き合って歌いました。また、六花はプロの歌手を目指しているキャラクターなので、曲ごとに空気感を変えることも意識しつつ、最後まで責任をもって表現できたと思っています。
――そんな六花に共感できる部分はありますか?
相手をからかいたくなってしまうところは、どこか自分と重なる部分があるなと感じています(笑)。また、学生時代に部長を務めていたこともあり、自然と周りをまとめようとする役回りにも共感できるところがありますね。
あと私自身、音楽が大好きです!六花のように歌うことも大好きでして。そういった点でも近しい感覚を持っているのかなと思いました。
――六花の行動で見習いたいところはありますか?
言葉に責任感があるところです。この先、六花が音楽で思いを伝えることについて思い悩むシーンがあるのですが、高校生にしてその考えができるところがすごいなと感じていて。彼女にリスペクトを送りたくなりました。

――主人公の有栖への印象は?
一読者としても、大好きなキャラクターです。ここまで読者の皆さんにも好かれるヒーローはいないのではないかと、キャストの方々とも話しているんです。私は高校3年生から声優を本格的に目指し始めたのですが、「叶えられなかったらどうしよう」と、ネガティブな気持ちになってしまうこともたびたびありまして。でも、有栖は放送部の面々の夢を受け止めて肯定し、応援し、彼自身の人生をかけて「俺に任せろ」と言える。その行動にはドキドキさせられますし、安田さんの情熱のあるお芝居にも、毎話毎話刺激をもらっています。
――第3話で六花たちの着替えを見た側なのにキレるところも、珍しいタイプだなと感じました。
「カギをかけずに着替えていたお前たちが悪い、気をつけろ」と、真っ当なことを言ってくれるんですよね。その後で見たことについては謝ってくれる。有栖は本当にまっすぐな人ですよね……。彼がまっすぐ過ぎて、ヒロインたちが動揺してしまう構図が『マヨチュー』らしくて本当に大好きです(笑)。
――放送部のほかのメンバーへの印象を教えてください。
私もこの5人のような高校生活を送って、放送部に所属してみたかったな、と思ってしまうほど、彼女たちの何気ないやりとりがとても魅力的です。そして何より、キャストの皆さんのお芝居が本当におもしろくて。六花は大笑いするタイプではないので、毎回笑いを堪えながら彼女を保つことで精一杯です(笑)。私もいつか楓林高校に入学したいです。
――第4話までで好きなエピソードは?
第3話ですね。有栖がアルバイトをしている姿を見たときに、4人の夢を財閥の力ではなく、自分の力で叶えようとしてくれていることが伝わってきて、六花役としてはもちろん、一読者としてもものすごく引かれたシーンでした。また、サブタイトルの付け方やその見せ方もとてもおしゃれで、毎回どんな形で出てくるのかワクワクしながら楽しんでいます。
――この先の見どころを教えてください。
六花としての見どころもあるのですが、まずは、ヒロイン4人の成長を見てほしいです。それから、第4話から始まった体育祭で、ますます放送部が大活躍するんですね。そのがんばりを見守ってほしいです。
――アポロが本当に見つかるのか、4人のなかにいるのかも気になりますね。
アポロが誰か、みんなの夢は叶うのか、誰が誰を好きなのか……本当にこの先も盛りだくさんです。どこを取ってもおいしいのが『マヨチュー』なので、ぜひ楽しんでもらいたいです。
MegamiにQuestion

Q.自分のチャームポイント
A.ドヤ顔(笑)
周りの友達からよく言われますし、以前、友達に似顔絵を描いてもらったときもドヤ顔になっているので、自然とドヤ顔になるのだと思います(笑)。
Q.自分のニックネーム
A.瀬戸ちゃん、桃子、桃ちゃん
この業界に入ってからニックネームが10個くらい増えましたね(笑)。『マヨチュー』のメンバーの皆さんからは、瀬戸ちゃん、桃子と呼ばれています! ファンの方も呼び捨てにしてくれることが多いですね。
Q.自分の声の特徴
A.特徴がないところ
地声はミドルなのですが、わりと幅広い役をやらせていただいていて、特徴らしい特徴がないなとも感じています。「どの声が得意なの?」と聞かれて即答できないのが、最近の悩みです。でも、だからこそ、自分でキャラクターに色をつけられるのが楽しいんでしょうね。
Q.自分の性格
A.人生2周目っぽい(笑)
よく「人生2周目だよね?」と言われることがあって、肝が据わっているように見えるみたいです。落ち着いているとも言っていただくのですが……! わりとおかしなことを言っている自覚はありますが、すべては誰かが少しでも笑ってくれたらいいな、という気持ちからなんです。つねに「何か仕掛けたい」と思う一方で、引っ込み思案になってしまうこともありますし、リアリストでもあり、ロマンチストでもあって。そんな相反する気持ちを抱えながら、日々自分と向き合っている感じです。
Q.いま、ハマっているものは?
A.恋愛モノ全般!
恋愛リアリティーショーを見たり、恋バナを聞くのも好きなんです。ドラマもマンガも恋愛ものをよく見たり読んだりします。『ちゃお』や『なかよし』を買ってもらって、「今日はキスシーン、あるかな」と楽しみにしていたくらいでした(笑)。
Q.好きだった番組は?
A.アニメ『楽しいムーミン一家』
子供のころ、母親の影響で見始めたのですが、大人になった今でも見返すほど好きですね。自分の誕生日には、埼玉県にあるムーミンバレーパークに行きました! ちなみにイチオシはスナフキンです。
Q.瀬戸さんはなんの“プロ(達人)”になりたい?
A.ギター
いつか「今日はギターを持ってきているから」といって、カッコよく即興で弾いてみたいですね。父がギター好きで、アコースティックギターが家にあったので、音楽にはなじみがあったのですが、高校時代に軽音部に入ったらコロナ禍になり、その後バンドを始めたらボーカルになってしまって、ギターを触る機会がなくて。いま、ギターの練習をしているのがとても楽しいです。
Q.本作のキャッチフレーズ
A.夢を叶えたい、君と一緒に
視聴者の皆さんにも一緒に夢が叶うまでの物語をたどってほしいですし、六花たちにも夢を叶えるという思いを持ち続けてほしい。視聴者の方にもキャラクターにも、どちらにも取れるようなダブルミーニングを考えてみました。
Profile
せと・ももこ/8月17日生まれ。埼玉県出身。トイズファクトリー所属。
主な出演作は、『ようこそ実力至上主義の教室へ 4th Season』天沢一夏役、『ウマ娘 シンデレラグレイ』ベルノライト役など。
作品Information
毎週火曜日夜11時よりカンテレほかにて放送中
https://mayochu-anime.com/
中学時代、毎晩のように聞いていたラジオ『真夜中ハートチューン』の配信者・アポロを探す山吹有栖。六花ら楓林高校の放送部4人の声にアポロの面影を感じた有栖は、かつてアポロと交わしたある約束を果たすため、彼女たちの夢をすべて叶えるべく奔走する。
(C)五十嵐正邦・講談社/「真夜中ハートチューン」製作委員会
●取材・文/野下奈生(アイプランニング)




