そこで、後編では“声優界”にフォーカスを当てインタビュー。80年代にデビューし声優業界を生きるふたりが、当時の思い出話のほか現在の声優業界についても語っていく。若手声優やこれから声優を目指す人たちに向けたメッセージとは――。
[取材・構成=松本まゆげ、撮影=YOU ISHII]
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大塚明夫×堀内賢雄、「キャロル&チューズデイ」現場を振り返る―視聴者にはバレてはいけない楽しさがあった【インタビュー】■真逆だったデビュー当初のふたり
――おふたりが若手だった頃は、どんなふうに声優業と向き合っていましたか?
大塚:当時はとくに「良い芝居をしなきゃダメだ……」と恐怖心がありました。先輩の中にはよくゴルフに行っている人がいましたけど……当時1ラウンドにいくらかかったんだろう? 5万円くらいかな?
堀内:そんぐらいかなぁ、バブルだったからね。
大塚:5万円あったら、芝居を何本観られるんだろうって思っていましたね。「ゴルフなんてやらねぇぞ!」って思いながら、とにかく芝居に打ち込んでいました。

堀内:僕は……真逆だったかなぁ(笑)。
大塚:僕の対極にいる人だったからね(笑)。
堀内:そもそも、明夫とは入り口が全く違う。明夫は根っからの舞台人でしょ? で、僕はDJやらレポーターやらをやってから入りましたから。
――全く毛色の違う職業ですね。
堀内:だから、最初は芝居についていけなかったですね。もう頭打ちだ、どうしたら良いんだと思っていたんですけど、ふと思い立って監督たちの草野球チームに入ってみたりして。
――“営業”ですね。
堀内:「お前、野球はこんなにうまいのに、なんで芝居はあんなに下手なんだ」って言われながらも現場に呼んでもらっていました。
もちろん、毎回居残りですよ。居残り居残り居残り! 居残りだらけ! でもね、そうしているうちにだんだん掴んでくるんですよね。

大塚:そういうのはあるね。
堀内:だんだんとね! だから当時は嫌だったけど、今考えるとあの居残りは財産になっていますね。
――それぞれのやり方で、芝居に向き合っていた結果今があるわけですね。ちなみに、当時はお互いをどう思っていましたか? 入り口こそ違いましたが……。
堀内:明夫は俺のこと嫌いだったと思いますよ(笑)。
大塚:お互いに「あいつは早晩消えるだろう」って思っていたんじゃないかな(笑)。

――(笑)。
大塚:酒場外交じゃないけど、いくらゴルフや野球で仲良くなっても、ちゃんと芝居ができなければそのうち仕事なんて無くなるって思っていました。
彼も彼で、俺のこと「大してうまいわけではないのにとんがって。人と人とで作っていく仕事だとわかってないんだ、あいつは!」とやっかんでたんじゃないかな(笑)。
堀内:あはははは! 『キャロル&チューズデイ』の(仲が悪い)役どころまんまじゃない! だからキャスティングされたと思われちゃうよ(笑)。

大塚:まあでもそんなこと言いつつ、声優として一生懸命上へ登っているうちに、隣を見てみると「あれ?」といつの間にかふたりして同じところに立っていました。
堀内:こんなこと言ってますけど、当時からなんだかんだ仲は良かったんですよ。一緒に遊んだりしていましたからね(笑)。
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