佐倉綾音:オリジン「“職人”としてつくる商品やそれを届けたいという想いは自分の中で胸を張っていたい」TVアニメ「僕のヒーローアカデミア」第6期インタビュー | アニメ!アニメ!

佐倉綾音:オリジン「“職人”としてつくる商品やそれを届けたいという想いは自分の中で胸を張っていたい」TVアニメ「僕のヒーローアカデミア」第6期インタビュー

TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第6期「全面戦争編」より、麗日お茶子役を演じる佐倉綾音さんのインタビューをお届け。『ヒロアカ』のキーワードのひとつでもある「原点<オリジン>」をテーマにお話を伺った。

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  • (C)堀越耕平/集英社・僕のヒーローアカデミア製作委員会
堀越耕平原作によるTVアニメ『僕のヒーローアカデミア』(以下、『ヒロアカ』)第6期「全面戦争編」が、読売テレビ・日本テレビ系全国29局ネットにて10月1日(土)より放送開始!

巨大勢力“異能解放軍”を掌握し、総勢11万におよぶ“超常解放戦線”のトップに立った敵<ヴィラン>・死柄木弔。No.2ヒーロー・ホークスの内偵により、死柄木の「全てを壊す」ための決起の動きを知ったNo.1ヒーロー・エンデヴァーをはじめとするヒーロー軍は、超常解放戦線の殲滅に向けて動き出す。デクやお茶子ら雄英高校の生徒たちも、これまでにない戦いに身を投じていく。

アニメ!アニメ!では本作の放送開始を記念し、麗日お茶子役を演じる佐倉綾音さんにインタビューを実施。初期と現在を比較して感じる作品に対する印象の変化や、『ヒロアカ』のキーワードのひとつでもある「原点<オリジン>」をテーマにお話を伺った。

[取材・文・撮影:吉野庫之介]



「全面戦争編」は、現実を生きる“いまの私たち”


――アニメ『ヒロアカ』が始まってから約6年となりますが、初期と現在を比較して作品に対する印象の変化はありますか?

当初は“ヒーローもののエンターテインメント”としてシンプルに捉えていたのですが、時間の経過とともに、“人生に侵食してきたヒューマンドラマ”のような感覚が大きくなってきました。登場人物の関係性を見ても、ヒーローと敵<ヴィラン>だけではなく、友人関係、親と子、先生と生徒、上司と部下といったすべての人間関係の営みが詰め込まれていて。

なにより私の中でこの作品に対する印象が大きく変わったのは“生と死”が描かれ始めた瞬間でした。それまでは学校での物語が中心で、あくまでも訓練であり、“命を賭けた戦い”からは遠い存在だった生徒たちが、いつしか当たり前のようにそちら側へ足を踏み込んでいって。そのグラデーションのように変化していった緊張感や重さに人生を揺さぶられるような感覚を覚えました。





――登場人物の関係性がより深掘りされていく中で、“正義”と“悪”の定義も一概に言えないものになってきましたよね。

私の中でも“正義”と“悪”の境界線が非常に曖昧なものになってきているのを感じます。初期の方では勧善懲悪もので、“悪い敵<ヴィラン>を倒すヒーロー”という認識だったのですが、物語が進む中で敵<ヴィラン>の人生を知ってしまったがゆえに、それを完全に“悪”だと言えなくなってしまって。トゥワイスのことがどんどん可愛く見えてきたり、死柄木弔が自らの業に苦しんでいる様を見るたびに応援したくなったり。もちろんヒーローに生き残ってほしいという思いもあるのですが、その反面で敵<ヴィラン>にも生き残ってほしいという思いもあって。

また、ヒーロー側の良い面だけではなく悪い面も描かれている作品なので、そこに敵<ヴィラン>の良いところをたくさん見せられると、どうしても気持ちがそちらに傾きたくなってしまうというか。もしかすると私は“敵<ヴィラン>の始まり”を体感しているのかもしれない……。そんな感覚になってきています。

――立場による“正義”の違いであって、どちらにも感情移入できる部分がありますからね。

たとえヒーロー側であっても正解か不正解かわからないことを言っている人がいて、そんな“正義”から迫害されてきた敵<ヴィラン>側の想いを聞いたとき、自分の人生にとって響くものがあるのは果たしてどちらなのだろうかと……。

もちろん、これまで時間を共にしてきたヒーロー側の気持ちや考えも理解できるものであり、こちら側でいたいという自分もいて。そのせめぎ合いは私だけではなく、作品を見てくださっている方の中でも行われているものなのかなと思います。





――キャラクター目線から見ると、麗日お茶子とトガヒミコはそうしたヒーローと敵<ヴィラン>の線引きに加え、デクに対する想いに関しても対照的に描かれていますが、二人の関係についてはどのように捉えていますか?

私はこの作品を恋愛的な観点からはあまり見てこなかったので、これまで描かれてきたお茶子のデクに対する想いからも少し目をそらしていた部分があったんです。でも、原作でこうした展開をむかえた時、いよいよ覚悟しなければと思って……。ジャンプフェスタの際にも堀越耕平先生からのお手紙の中で「トガちゃんとお茶子にも進展があります」と先んじてお伺いしていたのですが、正直重い気持ちの方が強かったです。

“愛”という枠組みにおいて、表現の仕方や心の持ち方など人それぞれにさまざまな形があって、それまで生きてきた家庭環境や素養による影響がとても大きく、対極の関係になってしまった二人なのですが、だからこそ磁石のように引かれ合う運命にあって。トガちゃんはそれを愉しんでいますが、お茶子にとってはそれがとても辛いことで……。

トガちゃんが“個性”を使ってお茶子に変身している時は私自身も彼女の気持ちや人生を理解したうえで演じなければならないので、その苦しみが大きかったのですが、トガちゃんを演じていらっしゃる福圓美里さんのお芝居がとても素敵で、それを“自分の中に取り込みたい”という役者としての好奇心を支えに頑張りました(笑)。

――佐倉さんらしいですね(笑)。また、これから始まる第6期のストーリーを一言で表すとどのようなテーマになると思いますか?

“生と死”や“正義と悪”について考えざるを得ないこの「全面戦争編」は、現実を生きる“いまの私たち”なのではないかと思います。これまではヒーローの目線から物語を楽しんでいたという方も、この章では敵<ヴィラン>の目線を持つことになるかもしれない。それは苦しみの始まりでもあるのですが、いろんな視点を持つことは決して悪いことではなく、みなさんの人生にとっての転換点を生み出すきっかけにもなると思うので、ぜひこのテーマについて考え、葛藤しながら作品をご覧ください。





傷つくことも落ち込むことも、未来の自分を支える糧になる


――ここからは『ヒロアカ』のキーワードのひとつでもある「原点<オリジン>」をテーマにお話を伺いたいと思います。以前のインタビューで佐倉さんにとってのヒーロー像をお聞きした際に「ご両親」とお答えになっていましたが、その根底はいまも変わらず?

そこは変わらずにありますね。いまだに親に褒められるために生きているような感覚もあって(笑)。大人になりそこから抜け出さないといけないと思う自分もいるのですが、私にとって両親はどうあがいても追いつけないと思うと同時に、安心感を与えてくれる存在で。『ヒロアカ』の世界でもオールマイトがいてくれるだけで“平和の象徴”であるように、生まれてからの28年間、両親は私にとってのヒーローそのものなんです。

――最も身近な存在をヒーローだと感じられるのは本当に素敵だと思います。また、役者としての「原点<オリジン>」を考えたときに、どのような想いが根底にありますか?

私は自分のことを一番に考えられない性分で、悪く言ってしまえば主体性がないということなのですが、だからこそ、“作品の幸せ”を一番に考えて動くことができる。それが私の原点となっている部分かもしれません。

また、現在の声優に求められる素養を分解して考えた時に、“エンターテイナー”と“職人”という二つの要素が必要になってきていると感じるのですが、0から1を生み出す力が私には備わっていなかったこともあり、人を楽しませたいという想いは間違いなくありつつも、“エンターテイナー”としての私はとても不完全だと思っていて。

ですが、“職人”としてつくる商品やそれを“届けたい”という想いは自分の中で胸を張っていたい部分でもあり、それが根底にあるということは自慢したいと思えるところかなと思います。





――良い商品をつくるだけではなく、それを“届ける”ことまで考えるからこそ、目的である”作品の幸せ”につながるというか。ちなみに、辛い時はどうしていますか?

辛いと思った時は、もっと辛かった時のことを思い出します。あの時期を乗り越えてきたのだから大丈夫だと。あまり前向きな思考ではないのかもしれませんが、本当に落ち込んでいる時にはポジティブで明るい言葉が入ってこない状態になるので。

最近は時間という薬が解決してくれることもわかってきたので、心を動かさずにそのままやり過ごすこともあるのですが、「これは自分の養分になる」と役者心が働いて、その“落ち込んでいる時にしか出せない音”を覚えておきたいという冷静な自分もいたり。

――感情の経験がそのままお芝居に結びつくと考えると、人生に無駄なことは何ひとつないと思えますし、いまマイナスだと思えることも最終的にはプラスに転換される。そこが役者というお仕事の面白い部分ですよね。

「声優として成長するには?」という質問をたまにされることがあるのですが、それは「人生の場数」としか言えないんですよ。傷つくことも落ち込むことも、未来の自分を支える糧になるから、いま元気にならなくても大丈夫だと思える。

そういう意味では『ヒロアカ』もキャラクターたちが苦しむたびに自分も苦しい気持ちになるけれど、どこか身近に感じられる存在だからこそ、彼らが人生を並走してくれているような感覚になれて。

これは偏った考え方かもしれませんが、ほかの人が挫折している姿を見るということは、自分にとってもすごく大事なことだと思うんです。生きているとどうしても自分に焦点を当ててしまうけれど、そうすると「自分が一番辛い」という考えに陥ってしまいがちになるので、そんな時にほかの人にふと目を向けてみる。

逆に自分が落ち込んでいる姿を見てもらうことで誰かの糧になるならば、それは私にとって嬉しいことで、その人の糧になったことを糧にまた頑張ることができる。そうして自らの血肉としていくことも人生の歩き方のひとつなのかなと思いますね。



TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第6期

読売テレビ・日本テレビ系全国29局ネットにて2022年10月1日(土) より毎週土曜日17:30~(一部地域を除く)

■スタッフ
原作:堀越耕平(集英社「週刊少年ジャンプ」連載)
総監督:長崎健司
監督:向井雅浩
シリーズ構成・脚本:黒田洋介
キャラクターデザイン:馬越嘉彦・小田嶋瞳
音楽:林ゆうき
アニメーション制作:ボンズ

■キャスト
緑谷出久:山下大輝
死柄木弔:内山昂輝
爆豪勝己:岡本信彦
轟焦凍:梶裕貴
麗日お茶子:佐倉綾音
飯田天哉:石川界人
相澤消太:諏訪部順一
エンデヴァー:稲田徹
ホークス:中村悠一
荼毘:下野紘
トガヒミコ:福圓美里
トゥワイス:遠藤大智
Mr.コンプレス:最上嗣生
スピナー:岩崎了
リ・デストロ:平田弘明

(C)堀越耕平/集英社・僕のヒーローアカデミア製作委員会
《吉野庫之介》
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