戯言遣いの《ぼく》を梶裕貴、青い髪と瞳を持つ情報工学と機械工学のスペシャリスト、玖渚友を悠木碧が演じ、総監督を新房昭之が務める。制作は〈物語〉シリーズを手がけてきたシャフト。
〈物語〉シリーズファンなど様々な方面からの反響があった映像化。一体どのようなアニメーションになっているのか期待が大きい作品だ。
玖渚役の悠木に、本作を演じるにあたって考えたことや西尾作品への想い、キャラクターに対する考えなどを訊いた。
[取材・構成:川俣綾加]
『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』
Blu-ray&DVD第一巻10月26日(水)発売
http://zaregoto-series.com/
■アフレコは「一言一句たりとも間違ってはいけない」
──原作を読んだのは玖渚役が決まってからですか? 率直に、どう感じましたか?
悠木碧さん(以下、悠木)
高校生の時に友達に「面白いから読んでみて」と貸してもらったのが『クビキリサイクル』でした。《ぼく》のモノローグがあまりに衝撃的で「今読むと人生に迷ってしまいそう!」と途中で友達に返しました(笑)。でも、その『クビキリサイクル』とこんな形で再会するなんて!(笑)
──高校生の頃からは予想できない再会ですね(笑)。「人生に迷いそう」と感じたのはなぜ?
悠木
《ぼく》は自分がいかに凡才で、いかに周囲の人間が天才かをモノローグで語るのですが、思春期や学生の時期ってこの部分にとてつもなく共感するんです。自分は何者で、社会の中でどれほどの存在価値なのか。自分が考えている自分の価値とどれほど違うものなのか。そこをジャストで突いてくる感じ。《ぼく》への共感が西尾さんの書くリズミカルな文章によってスルスルと入り込んできて「洗脳される!」と思っちゃって。玖渚を演じるため、あえて原作を読まずにいるので「このアフレコが全部終わったら原作を読むんだ」と楽しみにしています。
──共感のあまり遠ざけてしまうほど、《ぼく》の目線で読んでいた。
悠木
名前も玖渚が呼ぶ“いーちゃん”しかわからないし、どんな容姿かも不明であえて形をぼかすことで、主人公に投影しやすくなっていますよね。私のことをものすごくよくわかっている人が書いたんじゃ? それか、私が《ぼく》に寄りすぎたのではないかと錯覚してしまうことすらあって。
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──原作を読んだ時は《ぼく》ですが今回の役は玖渚ですよね。見方が大きく変わりそうです。
悠木
モノローグが全く違って見えますね。
──玖渚はどんな子だと感じました?
悠木
これは色々なところでお話していることでもありますが、大人になってから『クビキリサイクル』に触れた結果、原作を発表した当時の西尾さんから見た女の子って超未知で意味のわからない生き物だったんじゃないかって思うんです。玖渚にはそれが詰め込まれている。
──言われてみれば。己のルールがハッキリしているところとか。
悠木
かわいい女の子が、自分とは釣り合わないのに「好き」なんて言ってくるし、こちらには理解できない自分のルールで生きていて、それに振り回されて、情動も掻き立てられて。未知の恐ろしい化け物のような存在でもある。それを誇張して表現したら玖渚になったのではないかと。ご本人から正解を聞いたわけではありませんが、私なりの解釈として。
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