“ハードボイルドなルパンを描きたい”「ルパン三世」友永和秀総監督インタビュー | アニメ!アニメ!

“ハードボイルドなルパンを描きたい”「ルパン三世」友永和秀総監督インタビュー

2015年10月より放送開始となるアニメ『ルパン三世』。30年ぶりのテレビシリーズである本作の総監督を務める友永和秀さんに、本作やルパン三世の魅力についてうかがった。

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2015年10月より『ルパン三世』が30年ぶりにテレビシリーズとして放送される。新シリーズでは舞台をイタリアに据え、1話完結でありながらも新ヒロイン・レベッカをめぐるストーリーが縦軸として用意される。なおかつ”全24話”ということで見応えのあるシリーズとなりそうだ。
アニメーション制作は『ルパン三世 カリオストロの城』など、シリーズで要所となる作品を手がけてきたテレコム・アニメーション・フィルムが担当する。
総監督は『カリオストロの城』のカーチェイスシーンの原画など、「ルパン」シリーズに数多く参加してきた友永和秀さんが務める。新作ではどのようなルパン像が描かれるのか、シリーズに長らく関わってきた友永さんが感じる『ルパン』の魅力とはなんなのか、話を聞いた。
[取材・構成=沖本茂義]

■ ハードボイルドで大人っぽいテイストにしたい

――『ルパン三世』のTVシリーズが30年ぶりに登場となります。国内のみならずイタリアでも放送されるということですが、企画時から海外を意識されていたのでしょうか?

友永和秀総監督(以下、友永)
プロデューサーの浄園(祐) さんから聞いたことですけれど、イタリアでは昔から国内に負けないぐらい『ルパン三世』の人気が高いそうなんです。「だったらイタリアを舞台にしたTVシリーズもいいかもしれない」と。そこから本格的にリサーチをはじめて、ビジネス展開はもちろん、イタリアをベースとした物語をつくっていきました。

――『ルパン』シリーズに数多く関わってきた友永さんですが、今回総監督をお受けになった経緯は?

友永
『LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標』の制作が終わったころでしょうか、浄園さんから「ぜひ総監督をやってほしい」とオファーがあったんです。監督や演出業は経験が少なかったものですから、最初は「どうしようか……」という気持ちもありました。でも、『ルパン』はアニメーターとして多くの作品に関わってきて馴染み深かったし、演出としてベテランの野雄一郎君が監督として参加してくれるということで「ぜひやってみよう」と。


――長期人気シリーズの『ルパン』ですが、作品ごとに微妙にテイストが異なります。今回はどのような方向性を目指されようと?

友永
『ルパン』と言うとセカンドシーズンのような陽気でコミカルなイメージを持つ方も多いと思います。でも、今回はファーストシーズンのように「ハードボイルドで大人っぽいテイストにしよう」と。企画時から方向付けがなされていました。
ですから物語面でも、ルパン一味が世界各地をめぐりまわるのではなく、舞台をイタリアに固定してそこでじっくりと物語を描こうと。1話完結でありながら、シリーズを通しての大きなストーリーを用意していて、その伏線も随所に散りばめられています。そのあたり楽しんでいただきたいです。

――ルパンのキャラクター像についてお聞きしたいのですが、年齢設定などいかがですか?

友永
少し前にキャスト陣が一新されたことも踏まえまして、今回のルパンはやや若めの設定としました。ほかのシリーズでは30代前後と“おじさん”になりかけぐらいのケースが多いですけど、今回は20代後半ということで、もう少しやんちゃで野性味のある感じですね。

――ルパンといえば“赤ジャケット”のイメージが強いですが、今回は“青ジャケット”が採用されていますね。

友永
イタリアのファンに「ルパンに似合う色は?」とリサーチしたところ多くの方が“青”だと答えたんです。『LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標』のルパンも“青ジャケット”でしたけれど、あちらはトーン暗めでブルーグリーンに近かったですよね。キャラクターデザインの横堀(久雄)さんといろんな青を考えた結果、今回は地中海のようなもっと鮮やかなブルーとなりました。


――イタリアで放送されるということで、設定や物語面などで現地ファンが好むような要素を意識されましたか?

友永
日本でつくられた『ルパン』をそのまま放送して人気を得たわけですから、そこまで特別に意識はしませんでした。「『ルパン』本来の魅力をしっかり伝えよう」という気持ちのほうが強いです。ただ、宗教的な問題など、そのあたりは配慮しながら制作しています。


■アナログ時代を意識した画作り

――映像面では、セル画時代を彷彿とさせるような、どこか懐かしい味わいがあります。

友永
やはり『ルパン』を描くとき、デジタルの綺麗な線で整えてしまうとつまらなくなってしまうだろうと。なので作画では鉛筆描きの線をトレスマシンでそのまま転写したような荒っぽいタッチを表現しています。そのぶん手間はかかりますが、手描き独特の味わいが生まれるんです。背景にしても、デジタルのツルっとした質感ではなく、絵の具の厚みが感じられるように描いてもらっています。

――話は遡りますが、友永さんの『ルパン』との出会いはどのような感じでしたか?

友永
ファーストシリーズ以前につくられたパイロットフィルムを初めて観たときはもうビックリしました。アニメーションでスパイ・アクションを描くことは画期的だったし、飛行機やクルマが従来のマンガチックな表現ではなくて、リアルなメカ描写だったことも衝撃的でした。今みても凄い表現力ですよ。その後につくられたTVシリーズもそのあたりちゃんと受け継がれていて良かったです。

――そこから作り手としてシリーズに長く関わられてきたわけですが、どのあたりに『ルパン』の魅力を感じますか?

友永
アニメーターとしてずっと関わられせてもらいましたが、「自由に動かせること」が魅力だと思います。ルパンは飛んだり跳ねたり、高低差を活かしたアクションなど、何でもできるんです。そうしたキャラクターは描いていて楽しいですよね。またメカ描写にしても、ハイテクなものからアナログなものまで幅広くて、そうした「懐の深さ」も魅力でしょうね。

―では、最後に新シリーズの注目ポイントをお願いします。

友永
『ルパン』の醍醐味となる要素はきっちり踏襲していますので、まずは「アクション」を楽しんでほしいです。それから各話のエピソードもバラエティ豊かで、シリアスなものから泣ける話、破天荒なものまで幅広いです。そのうえ全24話にはちゃんとバックストーリーがあるので、非常に見応えがあるかと思います。ぜひご期待ください。

―ありがとうございました。

『ルパン三世』
http://lupin-new-season.jp/
■日本テレビ  10月1日(木)より 毎週木曜日 25:29~(初回10月1日は26:40~)
■読売テレビ  10月5日(月)より 毎週月曜日 26:37~(初回10月5日は26:42~)
ほか

《沖本茂義》
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